仲間「鳥籠」
「ねぇ、ローリエ起きてる?」
「・・・うん。」
「バローダも寝れないの?」
「寝れる訳無いよ。」
「・・・だよね。マヘリアも起きてるんでしょ?」
「・・・まぁね。」
バローダは私が寝ている事を確認して二人に提案した。
「ちょっと話がしたいから付き合って。」
「「・・・・・。」」
そう言うとマヘリアとローリエは返事はしないもののベットから起き上がった。3人は部屋を出るとバローダが歩きながら言う。
「食堂で話さない?誰も居ないはずだから。」
3人で食堂に向かうとペリドットが歩いてきた。
「あら?3人でどうしたの?」
「ちょっと話し合いをしようかっとね。ペリドットは?」
マヘリアが答えペリドットに尋ねる。
「私はお風呂に入り直しましたわ。一応、外に出た訳ですし。」
「・・・ペリドット、少し付き合ってくれない?」
「いいですわ。」
ペリドットはバローダの誘いを受け、4人は誰も居ない食堂に向かった。
真っ暗な食堂に入りペリドットは無数にある備え付けのランタン1つ手に取り、細い指先から小さな火を出しランタンの芯に火を灯す。その様子を他の3人がじっと見ていた。
「出来る事は秘密ですわ。」
ペリドットはランタンに灯された火をじっと見つめ3人に釘を刺した。
テーブルに対面で座りその真ん中にランタンを置く。4人はランタンの火を見つつ誰かが話すのを待っていた。皆、話したい事があるのだろうが切っ掛けが無く、少しだけ沈黙が流れた。
「ふぅ・・・・水を持ってきますわ。」
そう言うとペリドットは立ち上がり、食堂のトレーに重ねて置いてあるコップを持って来た。魔法で水を作りコップを満たし3人に配る。サイレンが何気無しにする事をペリドットも当たり前の様にする。3人が驚き目を見開いていると・・・
「私はウルズ様から魔法と魔力の基礎を学んでますからこの程度は出来ますわ。皆様はこれからウルズ様から学ぶのですし私から魔法については言いません。」
「「「・・・・・・。」」」
「ウルズ様から教わった魔法を他の人に教えるのを控えた方が良いとサイレンさんが仰ってました。教えられた人が正しく使うとは限らないと。魔法の力を国を動かせる権力を持った悪い人が知ってしまったら・・・本当に地獄になってしまいますわね。私はその事を踏まえ魔法と魔力の知識は実の家族、それも約束の守れる信頼出来る者にしか伝えないつもりよ。でも、私の家族はお母さましか居ないけど。ところで私に何か話しあったんじゃない?」
「ペリドットから見てサイレンはどんな風に見える?なんで私達に引き合わせたと思う?」
バローダの問い掛けにペリドットは瞳を閉じて暫く考え・・・
「そうですね・・・サイレンさんは見た目以上に大人ですわ。普段はうっかりしててアホっぽいですが・・・ただ、他人に対して損得無しで一生懸命になれる人、引き合わせる前に真剣に悩んでましたわよ。私にも相談に来ましたから。私しか相談出来なかったんでしょうね。結果として引き合わせたのはあなた達が『信用出来る友達』だからですわ。しかも私とは違い類稀な能力を持っていたから、何もしないで腐らせるのを惜しんだと。そして、それはサイレンさんがあなた達を利用する為では無いかと。」
「毎日12時間の特訓なんでしょ?私、出来るか不安で・・・。」
ローリエは絶望的な顔になって言う。
「12時間でも実質1時間、一生の内の4年頑張れば良いんだからこんなに割の良い話しどこにも無いわ。特訓の終わった後の全回復付きなんだし。私はスクルド様やウルズ様、ヴェルダンディ様が大丈夫って言うまで、最後までやりきるわ。それで人生が変わるならね。」
「神様から教わった魔法を誤った事に使ったら殺すって言われたんだけど・・・」
「マヘリアさん、私も同じ事を言われましたがそれは当たり前の事かと思います。間違いを犯さない自信が無いなら今の時点でお辞めになった方が良いと思いますわ。そして、あなた達のいずれかが間違いを犯したらサイレンさんが動くまでもなく私が殺して差し上げますわ。」
ペリドットの言葉に驚きバローダが問い掛ける。
「ペリドット、なんでそんなにサイレンに肩入れするのよ?」
「・・・・・。先にお話したようにサイレンさんにお父さまとお兄さまの魂を救って頂きました。私はもともとこの国の生まれではないのですわ。私の国はマリアナ神国、でも今は滅んで無くなってしまいましたが。私の家はそのマリアナ神国のマイヤーズ伯爵家でしたから国を守る為お父さまとお兄さまが戦いましたがその時に亡くなりました。そして私とお母さまは敗色濃厚だったので逃がしてもらいこの国に来ました。お父さまの預けていた資金がこの国にありましたから。私はお父さまとお兄さまの為に必死に頑張って誰よりも強くなろうとしましたが・・・サイレンさんには敵わず・・・当然の結果でしたけど。その後ウルド様、ヴェルダンディ様、スクルド様とサイレンさんを守護しているアズラエル様とお会いし私は言われました。私が強く想う事がかえって私を縛りお父さまとお兄さまの魂を悪霊にしてしまうっと。その後、女神様のお力添えでお父さまとお兄さまと対面を果たす事ができ、私にお父さまは『自分に幸せになれるように生きろ』っと言って下さいました。お兄さまは『自分を追い詰めすぎるな』っと言って下さいました。そして最後はお父さまとお兄さまは笑ってました。私は悔いなくお別れ出来ました。お父さまが最後に女神様に私を託したので訓練を受ける事が出来ますけど。」
「「「・・・・・・・。」」」
「私はお父さまのお言い付け通り幸せになれるよう頑張りますが・・・サイレンさんはこの先、幸せになれると思います?サイレンさんの家はトラピスト王国の名家中の名家。この国に来たのも女神様から教わった力があったから国に囲われ自由を奪われる、だから無理を言って留学と言う形で来た。ただそれまでいろいろあったみたいですが。サイレンさんの性格だからおそらく将来、トラピスト王国に戻るでしょう。ただ、それは自分から鳥籠の中に入るようなもので求める本当の自由の無い生活でしょう。私は自分が幸せになり、救ってくれたサイレンさんが辛い思いをするのを傍観出来る程出来た人間では無いわ。だからサイレンさんが鳥籠に入るなら私も一緒に入る覚悟はある。一人より二人の方が良いに決まってますから。それが私の出来る恩返しだと思ってますわ。」
「「「・・・・・・・。」」」
「私はあなた達のいずれかを殺す事は無いと思いますわ。サイレンさんが信用して神様たちに引き合わせた私の大事な仲間であり友達ですから。」




