授業「苦悩」
『ザック!ザック!ザック!ザック!』
花壇を耕しながら考えていた。
(アズラエル様から教えてもらったけど・・・やっぱり私の見立ては間違ってなかった・・・。よりにもよってルームメイトの3人が異能者なんて・・・。マヘリアが巨人の娘、バローダが魔眼を持っていてローリエはビーストテイマー・・・。バローダとローリエは能力に気が付いていないのだろうが、マヘリアは自分の事を知っているのだろうか?)
「・・・・・。」
私は答えの出ない悩みを抱え耕すのを止め天を仰いだ。
「あーーー!!もうっ!!」
そして空の雲が流れるのを眺めていたら背後から声がする。
「アズラエル様、ご無沙汰しております。」
「!?」
私しか見えない守護霊になっているアズラエル様の名前が出たので驚き、声のする方向を見る。そしてそこにはペリドットが立っていた。アズラエル様は手を上げている。
「ペリドット、アズラエル様が見えるの!?」
「えぇ、朧気ですが見えますわよ。意識すればはっきり解りますわ。」
(ペリドットであれば見えるのも仕方ないか・・・実際会っているしスクルド様の特訓を受けてるし・・・。)
「ところで花壇耕して何しているんですの?」
「あぁ、農業ギルドの活動の一環なのよ。好きでやっているんだけどね。」
「ふーん、ちゃんと活動してるんですのね。サイレンさんは意外といい加減だから学校のギルドの仕事はしないと思っておりましたわ。」
「あはっ!決まり事はちゃんとしますよ。」
「・・・・・。サイレンさんどうしたんですか?深刻な顔をしてますが・・・。」
「いやぁ・・・悩み事がありまして・・・」
「私に話してみませんこと?一人で悩むよりは良くなくて?」
「ありがとう、ペリドット。ところでペリドットはどうしてここへ?」
「ここでスクルド様を待っているんですわ。この時間帯は人の目が無いんでここで合流しているんです。」
「ん〜今の時間帯はバイトの時間だしね。校内は誰もいないし丁度いいかもね。」
「悩み事ってなんですの?」
ペリドットは私の悩み事が何なのか気になるようで・・・聞き直してきた。私は話そうかどうか悩んだが私の秘密を知っているペリドットなので話してみる事にする。
「私のルームメイトの件なんだ・・・。」
「マヘリアさんとローリエさんとバローダさんですわね。どうかしましたか?」
「あの3人、それぞれ常人に無い能力保持者なんだ・・・」
「どういう事ですの?」
私はアズラエル様から聞いた事をそのままペリドットに話した。そして、ペリドットは神妙な顔をして聞いてくれた。能力を開花させた場合、彼女達のその後の人生を狂わせてしまうかもしれない事などを。
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
「私はサイレンさんに救って頂いた身ですからなんとも言えないのですが・・・もし、私が3人の中の1人なら言って欲しいですわね。自分の可能性が分かるのは良い事ですし将来の選択肢の一つになりますから・・・。」
「・・・・・・。」
「しかし、何なんでしょうね・・・一つの部屋に稀な能力を持った人が知らずに集まるものなんでしょうか?まるで仕組まれたようですわね・・・。」
「運命の女神様の影響らしいです。」
「困ったものですわね〜♪」
ペリドットはクスクス笑いながら私の頭の上の方を見ながら話した。明らかに私を見ていない。そして後ろを振り向くとスクルド様が立っている。
「セレン、すまんな。悪気は無いんだ。」
「あっ!いえっ!スクルド様のせいでは無いです!!もちろんウルズ様とヴェルダンディ様のせいでも無いですよ!!」
(いつの間にそこに居たのよ!!来たなら言ってよ!!)
あたふた焦って訂正するのをペリドットに見られるのは些か腹立たしい。
「悩み事を一人で抱えるなら打ち明けた方が良いと思いますわ。その悩みの元が当の本人なら尚更。それが友達でなくて?それではスクルド様、今日もよろしくお願い致します。サイレンさん御機嫌よう。」
ペリドットは特訓に行く為にスクルド様に近づいて行く。
「・・・ペリドット、ありがとう。」
私がそう言うと普段見せない満面の笑みを見せてくれた。
そしてスクルド様と共に白い空間に向かって消えていった。
・・・・・・
「スクルド様、意外でしたわ。サイレンさんがあんなに悩んでいるなんて。適当な性格で悩みなんて無いと思っておりましたわ。」
「セレンは逆なんだ。周りを気遣い周りの人間の最善を考え、常に苦悩の中に身を置いている。適当に見えるのも悟らせない為だろう。ペリドットに悩みを打ち明けたのも私達の特訓を受けているからだろう。なぁ、ペリドット・・・セレンの力になってやってくれ。」
「サイレンさんには結果として私だけでなくお父さまとお兄さまの魂も救ってくれた方ですから、恩はあっても仇はありません。スクルド様からお願いされなくてもそのつもりですわ・・・」




