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授業「オフィスラブ」

『トン、トン、トン!』

「失礼しまーす。」


室内闘技場の中にあるモルガン先生の部屋をノックした。先生はいわゆる体育系の先生で可愛い顔とおっとりした口調なので他の先生や生徒の間で抜群の人気を誇っている。しかし、一部の間でその性格は演技だとバレているらしく好ましく思われていない。まぁ・・・私にとってはどうでも良い話しで・・・


「どうぞ~。」


部屋の中に入ると奥に別室があるようで扉がある。部屋の中には授業で使う防具や武具が並んでいる。そして机の上には数えきれない程の練習用の武具が積みあがっていた。


「今日は残念だったね~、もう少し体力付けないとね~。それで罰ゲームなんだけど、この武具を磨いて欲しいのよ~。時間はいくら掛かっても良いからサイレンさんのペースでお願いね~。先生は奥の部屋にいるから何かあったら呼んでね~。」


「・・・・はい。」


私が返事をしてモルガン先生から布切れとワックスを受け取ると奥の部屋に消えて行った。

(まぁ・・・罰ゲームと言ってもそんなもんだろうな・・・ざっと見、終わるまで・・・3時間位か?先生は依頼しておいて奥の部屋から居なくなる事は無いわな。)

そして私は奥の部屋を自分の居る部屋に私の魔力で満たす。扉の隙間から魔力を送り込むなんて容易い訳なんだが・・・。そして探知探索の結界魔法を展開して様子を伺うと少し間を置いて奥の部屋に誰かが入って来た。奥の部屋は私の居る部屋とは別に扉があるようでどこかに繋がっているみたい。

結界魔法で感じる気配は2つ。1つはモルガン先生。もう一つは誰か分からない。そして動きを伺っていたら2つの気配が1つに重なった。


「まじか!?」

(オフィスラブっすか!隣に誰かいないと燃えないって奴っすか・・・しかも私をダシに使おうとはいい度胸・・・っと言うか・・・ないわーー!!)


思わず閉口してしまう。そして、壁に耳を当てて奥の部屋に様子を聞くと『キャッキャウフフ』の声。イラっとしてしまい当初の目的を忘れてしまいそうになる。適度に懲らしめるっと言う目的を。そしてその昔、こういった題材のいかがわしいコミック本は私の大好物だったが、その時私は『うら若き乙女』だったので一度も見てもいないし読んだ事もない。ないったらない!

とりあえず、言われた通り武具を磨く。そして魔法を掛ける、10分置きに気温が1度下がる様に。1時間で6度下がり、2時間で12度。4時間なら氷点下近くになるだろう。まぁ・・・私はゆっくり武具を磨こう。温度変化もゆっくりだから気が付かないだろうし、体温低下で徐々に体力を奪えるだろう。そんな事を思うとニヤッとしてしまう。


「くふふふふっ!」

(先生が異変に気が付いて私の居る部屋に来たら気を失っている振りをしよう。)


武具を磨きながらそんな悪だくみを考えるとニヤニヤが止まらない。今後の展開を予想するだけでワクワクが止まらない。


・・・・


・・・・・・


・・・・・・・・


静かにしているようだが時折『ガタン!』などと聞こえてくると私も心の準備が出来ていない?不意を突かれるので『ビクッ!』っとなってしまう。まぁそんなアクシデントはご愛敬。


『カチャ!』


1時間後に奥の扉が開いて顔だけ出して私の様子を見る。顔色の赤いモルガン先生は私の居る部屋には入って来なかった。用意してあった手入れする武具の1割程度しか磨いてないのでモルガン先生は言う。


「あっ・・・サイレンさんの・・・あん・・・ペースで良い・・・です・・・から・・・お願い。んふっ・・・。」


そのまま急激に冷やしてクールダウンさせようと思ったが私はとりあえず無難な返事を返す。


(こいつら・・・)

「はい、わかりました。」


『バタンッ!!』


そう言うと顔を引っ込めて勢い良く扉が閉まった。まだ、気温低下に気が付いていないようだ。急激な気温変化は分かるけど、緩慢に変化する温度は分からないもので・・・

そして2時間もすると肌寒くなってきたようで奥の部屋から『クシュン!』と言う可愛いクシャミも聞こえてきた。このクシャミも恐らくは演技なのだろう。私は私で言われた通り武具のお手入れを進める。放棄しないでちゃんとやってしまうのは私の性格なのだろう。ただし、ゆっくりなのだが。

しばらくして大きなくクシャミが聞こえてきた。『ハックション!!』間違いなく男の声だった。まぁ・・どっちでも良いのだが。3時間もすると気温は一桁台。1つだった気配が2つに分かれる。さすがに気が付いたはずだ、気温が下がっている事を。そして間違いなくモリガン先生は私を覗くはず。なので手入れするはずだった武具を床に転がし、私自身も床に横になって気絶した振りをする。


『カチャ!』


奥の部屋からモリガン先生が私を伺う。


「サイレンさん大丈夫!?どうしたの!?しっかりして!!」


何か言われても気を失っている振りをして華麗にスルー!そして魔法は解除しない。


「ウェイン先生ちょっと来て下さい!!」


奥の部屋から男の先生が近寄って来る。

そして私を見て・・・


「さむっ・・・何なんでしょう・・・この温度の低下は?・・・この生徒は・・・モルガン先生、校長先生の言っていた取り扱い注意の監視対象の生徒ですね・・・不味いですね。とりあえずベットに運びましょう。」


(何、その『取り扱い注意』って・・・私は割れ物でも危険物でも無いんだけどなぁ・・・)

ウェイン先生の言葉に不快感を覚えたがじっと我慢。そして、ウェイン先生が私の膝の下と背中に腕を差し入れ、所謂『お姫様抱っこ』をし、私を運んだ。





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