ギルド活動「農業ギルド」
『トントン、トントン』
「もう少しで着くわ、起きて。」
私の体を軽く叩いて起こす人がいる。その声の主はシーラさんだった。
そして、目を開け上半身を起こし軽く伸びをした。
「ん、ん~・・・。」
毛布を敷いたから体の痛みはそれほどでもないが若干痛い。ちゃんとベットで寝たいもので・・・そして思う。
(空間収納にベット一式入れようかな・・・)
いくらでも入るけど入った物を全て把握出来ない事になりそうだ。
「シーラさん、ありがとうございます。」
一緒に馬車に乗っていたシーラさんにお礼を言って外を見た。外は城下に入っていたようで街の光で帰って来た事を実感させる。
「農業ギルドに向かって依頼書に終了のサインを貰ってから冒険者ギルドに向かうわ。」
シーラさんがこれからの段取りをザックリ話す。馬車の中から外をボケーっと眺めているとだんだん見た事のある街並みになってきた。恐らくは見慣れていない所も来た事はあるだろうが、それは屋根から屋根を駆け足で飛び走る中で上から下を見た景色であって下から上を見た景色ではない。なのである意味新鮮ではある。
(今度、ゆっくり散策してみようかな・・・)
そんな事を考えていた。暫くして、馬車が止まる。農業ギルドに止まったようだ。
馬車を農業ギルドの裏口に止め、4人で農業ギルドに入った。
『ギ~・・・』
初めて入る農業ギルド。
「いらっしゃいませ。」
中のカウンターの受付の女性職員に歩み寄りジャンヌさんが話しかけた。
「農業ギルドの依頼で依頼達成のサインを頂きたい。」
ジャンヌさんが手続きをいている時に私は農業ギルドの中を見て回った。
農業機材の展示販売や野菜の種、本や資料などが置いてある。
本を一冊手に取りパラパラと眺めていると果樹の育て方など、面白そうな記述がある。
「サイレンちゃんこっち来て。」
「はーい。」
シーラさんに呼ばれ返事を返し裏口に向かう。手続きが済んだようだ。そして、馬車が置いてある所に行くと男の人3人とスワローテイルの3人がいる。ジャンヌさんが私に・・・
「サイレンちゃん、大猪出してくれる?」
「あ、いいですよ。どうしたんですか?」
ジャンヌさんに聞きながら大猪を空間収納から出す。
「達成の証拠を見せないといけないから。」
「あ、なるほど、そうですよね。」
『ドサッ!』
何も無い空間から出て来た大猪に農業ギルドの男の人3人が大変驚いている。
「「「!?」」」
スワローテイルの3人は顔を見てニヤニヤしている。ジャンヌさんが農業ギルドの男の人3人に・・・
「これが証拠の害獣駆除で駆除された大猪です。それではサインをお願いします。一応ゴロン地区の村長、ベルンさんのサインもあるので大丈夫かと思いますが。」
そういって農業ギルドの初老の男の人、おそらくはギルド長?にサインを促す。
「あ・・・あぁ、わかった。」
サインをしてもらい、ジャンヌさんが達成依頼終了のサインの入った依頼書をもらう。
「ありがとうございました。また、よろしくお願いします。」
ジャンヌさんが挨拶を交わしたので農業ギルドでのする事は終了となった。
ソフィーさんが私に・・・
「これから冒険者ギルドに向かうから大猪お願い。」
「了解ですー。」
大猪を空間収納に仕舞うと農業ギルドの男の人達からどよめきが起こる。そのどよめきの聞き流しつつ私は馬車に入った。
シーラさんが馬車を走らせ、私とジャンヌさんは馬車の中。ソフィーさんは馬に乗る。
「サイレンちゃんありがとね。」
「うん。」
ジャンヌさんが一言だけ。私も一言だけ返す。微笑んでそのまま馬車の後ろから街並みをボーッと見る。楽しかった事が終わってしまうという事実を実感してしまう。
そして昨日の早朝、待ち合わせをした場所に着いた。冒険者ギルドの前。私とジャンヌさんが馬車から降り、冒険者ギルドの中に入る。シーラさんとソフィーさんは冒険者ギルドの裏手に回り馬と馬車を置きに行った。
「折角だからシーラさんとソフィーさんを待ちましょう。」
「そうね。」
ジャンヌさんに提案して待つ事に。程なくして2人はギルド内に入ってきた。そして4人揃った所で冒険者ギルドのカウンターに歩み寄りジャンヌさんが受付職員のクミンさんに話す。
「依頼、終了したのでよろしくお願いしたい。」
そう言って終了のサインの入った依頼書を差し出した。
「承りました。少々お待ちを。」
クミンさんは依頼書を受け取り奥に入る。依頼が農業ギルドなので慎重になっているのだろう。そして、クミンさんと一緒に眼鏡を掛けた細身の男と共に現れた。
細身の男の人が口を開いた。
「ジャンヌさん、お疲れさまでした。大変だったのでは?」
「そうですね。時間が掛かりましたが今回は最高のサポートがあったので終わらせる事が出来ました。」
そう言ってジャンヌさんが私の背中に手を回した。
「君がラフィングフォックスのサイレンちゃんだね。噂はクミンさんから聞いているよ。はじめまして私はこの冒険者ギルドのギルド長のファーブル、よろしくね。」
「はじめまして、よろしくお願いします。」
挨拶を済ませるがファーブルさんは私を目を細くして見つめ、そしてボソッと言う。
「君は賢いな。」
私は聞き取りにくかったので・・・
「はい?」
っと。ファーブルさんは私から目を逸らし・・・ジャンヌさんを見て言う。
「いや、何でもない。ところで依頼達成の証拠の物を見せて欲しいんだが。」
「そうですね、それでは外で出しますんで馬車の所で。買取もお願いしたいのですが。」
ジャンヌさんがそう言ってファーブルさんを外に促す。そして、私達4人とファーブルさん、クミンさんで冒険者ギルドの裏手に回る。そしてジャンヌさん、シーラさん、ソフィーさんが私を見た。
「証拠の品は馬車の中かい?」
ファーブルさんが言うと・・・シーラさんが答える。
「こちらに。」
そして私が空間収納から大猪を出した。
「!?」
驚いた顔をしたのはクミンさん。ファーブルさんは知っているようで・・・
「フェルミエ王国で同じ事が出来る人がいるそうですよ。しかし・・・これは・・・よく駆除出来ましたね。買取は出来ますがこの大きさですといくらになるか分かりません。すぐに業者を呼んで査定させます。支払いは後日でよろしいですか?」
「構いません。」
ジャンヌさんが了承し引き渡した。私が気になった事をクミンさんに聞いた。
「クミンさん、あの猪はどうするんですか?」
「ほとんどが食用になります。猪、豚なんかは生ハムなどに加工されたりするわ。完全な形で買取が出来る事が稀有な例ですからいくらになるか想像がつきません。業者さんを複数呼んでオークション形式にしたいと思います。なので買い叩かれる事もないでしょう。」
「そうですか、よろしくお願いします。」
・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
私達は冒険者ギルドの建物の中に入り、ジャンヌさんはクミンさんから報酬を受け取った。そして冒険者ギルドの端のテーブルで報酬を数え、その半分を私に渡そうとしている。
「サイレンちゃんにお陰で達成出来たから受け取って欲しい。」
ジャンヌさんの両隣のシーラさんとソフィーさんも納得している顔をしていた。だけど話が違うので私が言う。
「最初の話しと違います。私が受け取るのは報酬を4人で山分けの半分のはずです。なので受け取れません。その点だけは譲れません。」
「・・・・・。サイレンちゃんっておかしな子ね。普通は素直に受け取るものよ。」
ソフィさんが言う。
「その点は清廉潔白にいきたいんです。そのお金は3人で活用して下さい。」
「・・・わかったわ。」
そう言ってジャンヌさんが私に渡すはずだった上乗せしたお金を下げた。
そして私が最後の事をする為に冒険者ギルドを出た。




