ギルド活動「お嫁さん」
シーツを取り払うとそこには大猪が横たわっている。
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
「「「「「「「「「おおお・・・・。」」」」」」」」」
突然、敷物の上に現れたので中庭にはどよめきが響く。
ガタイの良い男が絶句し驚いた顔で私に・・・
「こいつはぁ・・・お嬢ちゃんどこに隠していたんだ・・・」
「えへっ、秘密です!」
ガタイの良い男に満面の笑みで返事した。
中庭に居た人達は大猪を見て思い思いに言う。
「この大きい猪をあの嬢ちゃん達が・・・!?はあ~・・・。」
「これで安心出来るな!」
「これ誰がここに持って来たんだ!?」etc.
家の中からは美味しそうな匂いがする。そしてテーブルの上に食事が並べられていく。
「さあ食べていってくれ!それ位しか出来ないからな!はははっ!」
それを4人で見つつ・・・ジャンヌさんが言う。
「じゃあご馳走になりましょう。」
私達に言ってガタイの良い男に声を掛けた。
「ベルンさん、それではご馳走になります。」
私はガタイの良い男、ベルンさんに一礼し食事を始める。その横では食事を作って頂いた奥さんらしい女性が次々と料理を持ってくる。一通り出し終えたようで食事をしている私の姿を見て奥さんらしい人に話しかけられた。
「可愛いお嬢ちゃんねぇ。お嬢ちゃんも一緒にあの大きな猪を駆除したのかい?すごいねぇ。家の養女にならないかい?おばちゃん、元気な子供は大好きなのよ!」
いきなりのスカウトで食べている物を吹き出しそうになる。
「げふっ!ごふっ!・・・いやぁ・・・私も家族が居ますので・・・養女はちょっと・・・」
「あら・・・残念ねぇ。ずっとここに居ても良いのよ?」
そうは言うものの顔はニコニコしている。そして、スワローテイルの3人はいわゆる若い女性。お子様の私とは違う。そしてベルンさんが食べている彼女達に話しかけた。
「どうだい、ここに腰を下ろしてみないか?地主ん所の長男坊が一人でよぅ、相手が居ねぇんだ。」
何気なしに結婚の斡旋をしている。恐ろしや。
「あは・・・あはははは・・・。」
彼女達3人は苦笑いを浮かべている。
「いやぁ、冒険者ギルドに報告もしないといけないしその話しはまた今度で・・・。」
「ん~そうか?良い話だと思うんだがな。気が向いたら何時でも言ってくれ!お前さん達みたいに健康で器量良しなら引く手数多だからな!はははっ!」
「はい・・・はぁ・・・」
シーラさんが力なく返事をした。その後すぐにジャンヌさんが話しの流れを変えるべく口を開いた。
「ところでベルンさん、お昼を頂いたら出立したいのですが。合同で一緒になったサイレンちゃんが明日、学校なもので早めに戻りたいのですが。」
「そうか・・・まぁ・・・事情はあるわな。昼過ぎなら遅くても城下には夕飯時位に着くか。しょうがねぇなぁ。宴会しようと思っていたが次の機会だな。」
そのベルンさんの言葉を聞いて4人は戦慄してしまった。もしかしたらお嫁さんの説得工作など考えているのでは?っとか既成事実大作戦を考えているのでは?っとか疑心暗鬼になってしまう。
私をダシに使ったジャンヌさんもジャンヌさんだがここは『グッジョブ!!』っと言いたい。
一通り食べてお腹がいっぱいになってから暫く歓談をした。事の経緯と茨の藪の事を織り交ぜて、私の魔法の事はオブラートに包みつつ話す。私が話した訳では無いがその点は彼女達が空気を読んでくれた。
会話に『結婚』『嫁』のキーワードがところどころ出る中、私はそれ程精神的なダメージを受けなかったが、彼女達3人は愛想笑いを浮かべているがその精神的ダメージは筆舌し難いものだろう。私達が仕留めた大猪を見に来た若い男達は彼女達を仕留めようとしているようで目線が熱い。
嫁不足に悩む農家はどの世界でも一緒のようで・・・
ようやく帰る旨を伝え、帰る準備をする。
大猪を出した時の様に大きいシーツを投網の様に投げ広げた。皆の視線が大猪から切れたタイミングで空間収納に入れる。そしてシーツは敷物の上に被さる。
「「「「「「「!?」」」」」」」
「「「「「「「ええーーーーー!!!」」」」」」」
今まで居た大猪が消えた事に集まった人達が驚いている。私は取り囲まれ質問攻めに。満面の笑みで・・・
「秘密です〜!」
で返す。シーツを手繰り寄せ回収し敷物を畳んでベルンさんの奥さんにお礼を言って手渡した。
「ありがとうございました!」
「どういたしまして!礼儀正しいわね。どうだい?考え直してうちの養女にならない?」
「あはは・・・天涯孤独になった時よろしくお願いします。」
「そうかい?本当に残念だねぇ。」
「あはは・・・はぁ・・・」
(この奥さん、どこまで本気なの?恐ろしや・・・)
とりあえず帰る準備を終え、馬を引き外に出た。
ジャンヌさんが別れの挨拶をする。
「ベルンさん、お世話になりました。」
「いやぁ、こちらこそ世話になったな。気が変わったらいつでも来てくれて構わないから。まぁ・・・なんだ・・・何かあったら指名で依頼出すからそん時はよろしく頼むわ。じゃあな。」
最後までその話を引っ張るようで・・・彼女達は苦笑いしている。そしてお礼を言って後にする。
「「「「ありがとうございました!」」」」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
最初に降りた広場に戻り私は馬車を出し、馬2頭を繋げ帰る準備が整った。スワローテイルの彼女達は順番で移動の馬車の中で休憩をとるそうだ。そして私は昨日の夜から寝なかったので睡眠をとる事にした。今度はちゃんと毛布を下に敷いて寝る、起きた時体が痛くならないように。




