ギルド活動「報告」
私の声にこちらを向いて頷きシーラさんとソフィーさんが左右から大猪に向かって突進していった。そして、油っ気のある硬い毛を持つ大猪に最適解である攻撃をした。二人とも疲弊していてそう長くは剣を振るうこともできない。なので動きが止まったこの時が最後にして最高のタイミング。
「「ヤーーーーー!!」」
『ドスッ!』『ブスッ!』
二人の剣は大猪の前足の上の辺り肺の辺りと心臓の辺りを深く刺した。致命傷が入り決着がついたであろう。
「ブギーーーー!!!」
大猪は叫び声を上げて地面に横たわった。私は先程突進を受け動けなくなっていたジャンヌさんを治癒してしてから大猪を見た。ジャンヌさんも起き上がり横たわった大猪の歩み寄る。私はバトルハンマーの天国を肩担ぎをしジャンヌさんの後ろに付いて歩く。大猪を見ると小さく呼吸をしている。
「ジャンヌさん、このままにしておくのは可哀想です、止めを。」
「・・・・わかったわ。」
私はジャンヌさんに促した。そして大猪の首元にしゃがみ左手で大猪の目を隠し右手に持つ彼女専用の剣フランベルク『アリエル』を首に当てグッと力を込めて下に引いた。その後3人は極度の緊張感から解放されたのか疲労からか分からないが呆然としている。
そして大猪が息絶えた事を確認し、私は満面の笑みで声をかけた。
「終わりましたね!お疲れさまでした!」
私の言葉にハッとしたのかシーラさんとソフィーさんがジャンヌさんの元に走ってきた。
「「ジャンヌ!!」」
3人で抱き合い喜びを爆発させた。その姿を暫く見つつ息絶えた大猪の元にしゃがみ込み目を閉じ手を合わせた。私のその手を合わせる行動を目の端で見ていたジャンヌさんが不思議に思ったのか聞いてくる。
「サイレンちゃんどうしたの?」
「あ、いえ・・・この大猪が迷わないでちゃんと天国に行けるように祈ってました。」
「・・・・・。」
私の言葉を聞いた3人は何かを思った様で私の横に並び息絶えた大猪に祈った。
「んじゃあ帰りますか・・・っと言うか・・・この場合、これはどうすればいいです?」
「この場合は通常は依頼を受けた人の物になるわよ。依頼者は駆除の依頼だけで所有権は無いから。あったら駆除出来ないわ。」
ソフィーさんが答えたが・・・ちょっと期待した答えでは無かった。なのでもう一度聞いて見た。
「あ・・・いや・・・この場で解体とかするのかな~っと。大き過ぎますしね。」
「正直言えばこのまま持って帰れれば良いのだけれど・・・依頼達成のこれ以上ない証拠になるからね。ただ、この場合は普通は証拠になる部分を切り取って持って行ったりするわ。普通はね。」
ジャンヌさんが答えたが・・・『普通は』っと言う所を強調して言った気がする。
敢えてそこは気が付かなかった事にしよう。
そしてシーラさんは目線を合わせようとはしない。ジャンヌさんは剣を布で巻いている。そしてソフィーさんが言う。
「これの収納お願いしていいかな!?」
「いいですけど・・・」
そう言いながらジャンヌさんとシーラさんを見る。そして顔がニヤッとしていた瞬間の見逃さなかった私って偉い!
朝からの活動だったのでお昼にはまだ早いようで・・・
「とりあえず・・・ここを出て農家さんの所に報告に行きましょうよ。安心させたいですし。」
私の提案に3人は快諾し撤収の準備をする。天国を剣の状態に戻し鞘に納め大猪と一緒に空間収納に納め、私は来た時と同様にレーヴァティンを出し帰り道を作るべく振るった。
茨の藪から帰る前にソフィーさんとシーラさんの治癒の魔法をかけ傷と体力の回復をする。
「サイレンちゃんの物を出し入れする魔法ってどれだけ入るの?」
シーラさんが聞いて来たので素直に答える。
「いくらでも入りますよ。その気になれば商業の物価も滅茶苦茶に出来ますよ!輸送コストも掛からないですから!」
シーラさんは苦笑いを浮かべて言う。
「はは・・・程ほどにね。」
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藪を出てソフィーさんの馬に一緒に乗ってゴロン地区の村長さんの所に向かった。私は明日学校だからそんなにゆっくりは出来ないんだけど・・・まぁ・・・3人の依頼達成で味わう晴れ晴れとした気分に水を差すのも悪いので言わないでおく。まぁ・・・そのうち誰かが気付くだろうから。
「ここの家がこの地区の村長の家よ。ちょっと話してくるわ。」
そう言ってジャンヌさんが家の敷地内へ入って行った。そしてすぐに中が慌ただしくなった。門から数人の若い男の人が走って出て行く。ジャンヌさんが戻ってきて・・・
「連れの人も一緒に中に入ってくれって言ってるから来て。」
私達は馬を降りて馬の手綱を引き中に入った。中庭は思った以上に広くその先の住居からガタイの良い男性が私達を見ていた。ジャンヌさんを先頭にその男性に近づいていく。
最初にシーラさんとソフィーさんが挨拶をする。
「お久しぶりです。スワローテイルのシーラです。」
「同じくソフィーです。お久しぶりです。」
ガタイの良い男性は笑顔で答えた。
「よぉ、久しぶりだなぁ。よくやってくれた、これから皆安心して農業に精が出せるぜ。ところでそのお嬢ちゃんは新しいメンバーかい?」
「いえ、この子は今回合同で一緒に依頼に当たった子です。」
ジャンヌさんが私の説明をしそれに続いて・・・
「はじめまして、ラフィングフォックスのサイレンと申します。」
軽く挨拶をした。そうこうしている内に中庭には人が集まって来ているようで、家の中からは美味しい匂いがしてきた。がたいの良い男性が口を開く。
「そうかそうか、小さいなりでご苦労だったな。ご飯作らせているから食ってけ。ところでジャンヌさん、その駆除した猪ってどこにあるんだ?」
その言葉に3人が私を見る。ジャンヌさんがガタイの良い男の人に敷物が欲しいとお願いをして用意させてもらった。中庭の一角に敷物を敷き、そこに大猪を置くのだが・・・そこに何もない所から出てくると後々ややこしくなりそう。なので、こっそり大きなシーツを取り出し敷物の上に投網の如く広げて投げた。
『バサッ!』
シーツが広がって中庭に居る人の目線が完全に敷物から切れた瞬間に大猪を出した。そして大猪の上にシーツが被さった。
皆、敷物に盛り上がった物が乗っている事に絶句している。そして、私はシーツを引っ張って取り払った。




