ギルド活動「尾行」
『キ~』
商人ギルドの扉を開けいつも通り挨拶をした。
「こんにちはー!また依頼書見せて下さいー!」
私が中に入った瞬間、商人ギルド内は沈黙が支配した。
昨日の今日なので・・・これからもそうだろうけど・・・
まぁ・・・私にとってはどうでも良い事なのだが。
そして受付のクローブさんは引きつった笑顔で私に言う。
「こ・・・こんにちは、依頼書どうぞ。」
そして、依頼書を見ているとカウンターの後ろの方で動きがあったみたいだ。私は目の端でその動きを捉え、探知探索の結界魔法を張った。余計な事、いらない事をしなければ私から事を起こす事は無いのだけど・・・。そんな事を思うと溜息が出る。
「はぁ・・・」
結界魔法で確認した人の一人が裏口から出て正面玄関入口が見える少し離れた所で待機しているようだ。
特に気にする事も無いのだが結界魔法を張り続けた。とりあえずいつもと同じように配達の依頼書を2枚手に取りクローブさんに渡した。
「この依頼書、よろしくお願いしますー!」
「畏まりました。」
私とのやりとりでクローブさんの顔色が悪くなっていた。
気を使う気は無いが社交辞令的に言う。
「顔色悪いですよ、大丈夫ですか?」
「大丈夫です。」
おそらく顔色が悪いのは私のせいなんだろうけど・・・元を辿ると商人ギルドが悪いから私は悪くない!
ないったらない!
「んじゃあ行ってきまーす。」
「お気をつけて。」
顔色の悪いクローブさんに見送られ商人ギルドを後にする。
外で待機している人が気になるけど気にしてもしょうがないのでとりあえず依頼者の元に向かう。
「・・・・・。」
暫く歩くと待機している人が付いて来ている。いわゆる尾行っと言うやつで・・・一定距離を保ちつつ付いて来ている。結界魔法を掛けながらだったので・・・
(一体何したいんだろう・・・バレてるんだけどなぁ・・・っというかこれが世に言うストーカーか!?ストーカー被害に遭っちゃう可哀想な私!!)
などと思いつつ人気がなさそうな所に歩いてみたりしていたが一向に襲ってくる様子も無い。
商人ギルドから離れたので建物の角を曲がって尾行している人の視線が切れた瞬間、建物の壁を駆け上がった。
尾行している人が走って曲がった角の先を覗いたが私は既に建物の真上に上がっていたので完全に私の事を見失ってしまっている。かなり焦っているんだろう。顔を左右に振ってキョロキョロしている。完全に見失い気落ちしているようなんで元気付けてあげよう。
私は尾行している人の後ろに静かに降りて後ろから・・・
「何かお探しですか~?」
「ひっ!!!」
かなり焦っているようだ。
「私に付いて来ても何も出ませんよ~。」
そう言って薄ら笑いをした。
「た、助けてーーーー!!!」
尾行した人は商人ギルドの方へ叫び声を上げて走り去った。
(失礼な!!化け物と勘違いしてる絶対!!)
そんな事を思い私は壁を駆け上がり建物の屋根から屋根と商人ギルドへ直線ルートで走った。当然私の方が早く到着するのだが・・・。
『キ~』
私が商人ギルドに戻ると再び沈黙が支配する。ギルド内の気温を体感できる程度で少し下げた。尾行の事は知っているようでクローブさんは既に泣きそう。ここで『元気出せよ』などとは言わない。
泣きそうなクローブさんにグラスを2つ借りたいとお願いしたら快く応じてくれる。そして、ギルド長のギレンさんの所に向かった。カウンターの内側に入ろうとしたら注意されそうになったが無表情でじっと見たら何も言われない。そのまま歩を進めギルド長の部屋をノックをして入ったらギレンさんは私の顔を見て絶句している。そして、私から話した。
「どういうつもりですか?」
ギレンさんは色々かんがえているのだろう。少し間をあけて話す。探知探索の結界魔法で尾行していた人が商人ギルドに近づいているのがわかる。そして私の会話を盗み聞きしているギルド職員がいる。
「どういうつもりとは?」
「商人ギルドを出てからずっと尾行されてるんですが。」
「商人ギルドとは関係ないと思いますが。」
ギレンさんは白を切っていたのでしばらく黙っていた。尾行していた人が商人ギルドに入って来たので隠れた。そして・・・ギルド長の部屋のドアを勢い良く開けて・・・
「ギレンさんすいません!!尾行に気付かれてしまいした!!」
私は出て来てグラスに氷と水を入れる。そして・・・
「はい、お疲れさまでした。走って来て暑かったでしょう。氷水をどうぞ!」
そう言って満面の笑みで尾行した男に差し出した。
「え・・・あ・・・・」
もう言葉にならないようで・・・とりあえずグラスは受け取ってもらえた。良かった良かった。
そして、ギレンさんの方に振り向くと絶望的な顔をしている。顔色も優れないようだ。私は最初の質問を改めて聞いた
「どういうつもりですか?」
そう問いつつギレンさんにも氷水を差し出す。
「・・・・・・。」
何も答えられないようなので溜息を入れて私から切り出した。
「はぁ・・・。私の何が知りたいのです?」
「・・・。異常に速い配達方法が知りたい。」
「そんな事ですか・・・。知ったら納得してくれます?」
「約束する。」
聞けば良いのに勝手に自爆して怒りを買うもんだから目も当てられない。その前にやっておかなければいけない事があるんだけど・・・




