ギルド活動「極寒地獄」
「お嬢ちゃん、不正してないかい?配達が異常に早いと言ってるんだよ。不正でお金を得るのは泥棒と言うんだけど知ってるか?」
「な!!私、不正やってない!!!」
そう叫んでクローブさんを見たら無表情で私を見ている。
私は初めて人から疑われて冷静さを欠いてしまった。
「最初はみんなそういうんだよ。でも調べるとちゃんとわかるから。どうせやったんだろ?」
役人に言われて役人に問うてみた。
「もし不正だった場合どうなるんですか?」
「年齢に問わず罪人は奴隷になるよ。この国は商人の国だからお金に関する罪は重いんだよね。残念だったね。」
そう言われて心が冷たくなった。冷静じゃなく冷めてしまった。
「違ったら疑った人全員死んでもらって落とし前付けてもらいます!」
「出来たらね。」
そう叫ぶと役人は笑って答えた。恐らくはギルド内の奥の職員はニヤけていたから全員聞えたはずだ。
私は椅子に座って大人しくしていた。
商人ギルド内は私と職員と役人のみとなっている。どれほど待っただろうか・・・夕方になり一人の男が中に入って来た。そしてカウンター内に入っていき中で何かを話している。役人の男は舌打ちしている。そしてクローブさんが渡した革袋にお金を入れて私に渡してきた。
「お疲れさまでした。」
その時点で私の白が証明された訳だ。その瞬間、私はギルド内のドアや窓、全てに魔法で水を掛け水浸しにし、そして一気に凍らせ開かなくさせ完全に密室にした。
そして内側から破壊されないように空間収納から大量のくず鉄を出し建物自体に金属性を寄与。
「私、言いました。『違ったら疑った人全員死んでもらって落とし前付けてもらいます』と。」
職員は突然起こった事の事態を把握出来てないようだが、一つだけ分かっている事は命の危機という事だけ。
そんな事は私の知った事では無いが。
クローブさんの無表情は崩れ、恐怖で顔を歪めている。
役人の男にも言う。
「『出来たらね。』っと言ったので出来るのでやります。」
「そ・・・それは言葉のあやであってだな・・・」
「自分の都合が悪いとみんなそう言います。傷つける人間は傷つけられる人間の事を考えないものです。自分さえ良ければいいのですから。ちなみにお役人さんも死んでもらう対象者の一人ですよ。残念でしたね。」
私は薄く笑い役人の男を見ながら言い訳を否定する。そういって壁を駆け上がり天井の梁に乗ってから氷の世界を見回し、室内の気温を一気に下げた。私の魔力を行使しての気温低下なので本人には影響が無い。
吐く息が白くなり・・・私以外の室内にいる人の体が寒さなのか恐怖なのか分からないが震え始めている。
私は梁に座り足をブラブラさせて震えている人を眺めていた。
「サイレンちゃん、ごめんなさい!!死にたくない!!」
クローブさんが私に叫んで許しをこう。
「もし、私が黒だとしてごめんなさいと言ってクローブさんは許してくれた?許さないから役人いるんだよね?私、子供だから命とか死ぬとかあんまり分からないんだよね。鶏肉とか豚肉とかかなぁ?動かなくなったら魔獣の餌にするから大丈夫だよ!」
目の笑っていない満面の笑みで答えた。
命とか死ぬ事とか分からなくはないがこの際しっかり心を折ってしまった方が良いのでそうする事にする。
とりあえずしばらくは極寒地獄にお付き合い願おう。
外に出ようと椅子で窓を叩き割ろうとしている人もいる。大人しく待っている時、何度もシュミレーション出来たからこそ速攻で金属性を掛けられた。いくら叩いても破壊不可だから壊れないし逃げられない。
「いやーーーーーー!!!!死にたくない!!!!助けて!!!」
「済まない!!私が悪かった!!職員は悪くない、私の指示だ!!だから・・・」
相変わらずクローブさんは叫んでいる。その横で許しを求める男がいる。恐らくは商人ギルドのギルド長だろう。確認の為に尋ねる。
「ん~・・・どなた?だから何?」
「私は商人ギルドのギルド長のギレンと言う者だ。疑って済まない、ただそれだけで全員死なすのはやりすぎじゃないか!?」
「商人ギルドは私を疑い、黒なら許さなかった。しかし結果は白だった。結果が出るまでの間の私に対しての無礼を無かった事にしろと?それに勘違いをしているようですが、私が許すか許さないかは商人ギルドの判断じゃないんです。」
「それは・・・それに商人ギルドが停止するとこの国の商業に多大な影響があるからやめてくれ!!」
「私には関係ありませんから。んで・・・だからの後、何言おうとしたんですか?」
「・・・・・。」
言葉を詰まらせて何も言う事が出来ないようだ。まぁ・・・私もやりすぎな気もするが・・・最後に仕上げをする。薄ら笑いを浮かべて・・・
「商人って信用じゃないですか?やっぱり、有言実行しないとダメですよね?商人的に言うと商人ギルドは私が不正している方に賭けた。そしてその代償はギルド職員の命。負けたんだから支払わないとダメだと思うんですよね。お役人さんもそう思いますよね?『出来たらね。』っと私に出来たらやって良いとお役人さんから許可も頂けましたし。」
お役人含め職員全員、寒さなのか恐怖なのか分からないがガクガクに震えている。おそらくさらに気温を下げて本当に殺すと思っているのだろう。絶望的な顔をしていた。
「サイレンちゃん、やめて・・・お願いします・・・殺さないで・・・」
クローブさんは泣いていた。涙の粒が床に落ちすぐに白く凍る。
私は溜息を1つ吐く。
「ふぅぅ・・・」
吐かれた溜息が白く舞う。
(もうそろそろ手仕舞いか・・・)
そう思い私は梁から飛び降りて建物に掛けた金属性の力を抜く。赤く錆びた砂鉄に力を戻し形が復元したらそのまま空間収納に仕舞った。薄ら笑いを浮かべギルド長のギレンさんに・・・
「口外無用、他言無用で願います。この事が外に漏れたら真相の有無に拘わらずこの建物が中の人と一緒に消えますから。そして、今後の商人ギルドの生殺与奪は私にありますから。」
そう言ってお金の入った革袋を手に取り・・・満面の笑顔で言う。
「お疲れさまでした~」
商人ギルドの正面玄関の扉が凍っていたので誘電加熱により解凍し外に出た。
外はすでに真っ暗。少々やり過ぎだと思うが・・・余計な時間を費やされたのが惜しまれる。




