ギルド活動「校則」
「校長先生、例のトラピスト王国から入学した女の子の確認が取れましたのでご報告します。本人で間違いないです。ただ、慣例として名前は偽っていますが特に問題は無いようです。」
「ジェンコさんご苦労様でした。その女の子は才能豊かだと聞いていますが何か聞いていますか?」
「魔法で水を出したり氷を出したり出来ると聞いています。しかも無詠唱だとか。それと王様の銀行に入って行く所も目撃されてます。最近城に住み着いたガルーダとオーガはその子の持ち物だとも・・・噂と真実が入り乱れてどれもが真実でどれもが嘘の様にも思えます。あと、その子はまだ学校でギルド登録していないようです。迷っているのかわかりませんが。」
「・・・・・。とりあえずその子は学校内のすべての教師、事務員に監視対象だと伝えておいてくれ。」
「わかりました。それと今年の授業料などの諸経費を一括で支払いしました。そして他国とはいえヘリオドール国王陛下と侯爵家が保証人になってますので、あまり詮索すると信用に致命的な傷がつくかと思いますが・・・」
「・・・・・。わかった、監視対象ではあるがくれぐれも対応に注意しておくよう伝えておいてくれ。」
「わかりました。」
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「魔法を行使する上で魔法詠唱が必要です。本来、無詠唱が出来るのは・・・」
『ふぁ・・・』
(眠いぜ・・・間違った事を教わる事程、時間の無駄なんだよね・・・みんな真剣に聞いているけど・・・気の毒だぜ・・・でもがんばれ、みんな!きっと良い事あるさ!とりあえず真面目に聞いている振りしないと・・・)
「・・・・・・。それでは実際にやってみましょう。」
(あ、やるの?はいはい・・・よっこらせっと・・・)
私は席を立ちクラスの仲間と一列に並び魔法詠唱らしきものを口ずさんだ。
なぜか私は注目されている。どうでも良いけど・・・
「出てちょーだい、火のたまー」
『コツン!』
目の前に1個氷の塊を出し、床に落ちた。
(今日は何個だそう・・・)
「うー、やー、たー、いーち、にー、さん、だー・・・」
『コツン、カツン、コン、コツ、カッ、カン・・・』
何個も小さい氷を出していたのでクラスの仲間は飽きてしまったようで次第に私への興味を失っていた。
その様子を見て私の意図を見破っている人が居る。マヘリア、バローダ、ローリエとペリドットの4人な訳だが・・・
「サイレン、わざとやってたでしょ?」
授業が終わってからマヘリアがそう言ってきたので惚けてみた。
「何を言ってるか分からない。」
「まぁ、良いんじゃない?自分への興味を削ぐのは自衛手段なんだろうから。」
「でも、氷がいっぱい出せると生鮮品の保存が出来るから・・・」
バローダは相変わらず的確だしローリエはナイスフォローなのか?ペリドットも言う。
「悪ふざけが過ぎると他人の怒りを買いましてよ。」
「ハイ、キヲツケマス。」
「今日は授業終わったら予定あるの?」
マヘリアが聞いてきた。
「私は終わったらアルバイトがあるけど。」
「んでもサイレンは学校でギルド登録してないから出来ないんじゃないの?」
「へっ?なんで?学校内で登録しなくても良いじゃないの?」
ローリエが横から話す。
「あっ、サイレン知らないの?校則で必ず1つはギルドに入らないといけないんだよ。」
「えっ?マジで?」
「「「マジ。」」」
バローダが溜息まじりで話す。
「サイレン、あんた・・・最初からつまずいてるじゃん。最初のギルド選びで人生が決まったりするから真剣に考えた方が良いよ。」
「・・・・。し~んけん!!よしオッケー!!んじゃあ登録してくるわ。」
ペリドットがあきれている。
「サイレンさん、あなた、絶対痛い目見た方が良いわよ!そうなる事をお勧めするわ!」
私はおでこを手の平で叩き・・・
「あいたーー!!んじゃあ、行ってくるっす!!」
そして、どのギルドにしようかと廊下を考えながら歩いていた。
(学校には今年1年分の諸経費は払ったからギルド登録も学校側にお金が回らないようなギルドにしよう・・・ってか学校ではギルド活動しないようにしないと・・・何が良いか・・・)
ギルド登録で事務所を見ていたらやっぱり冒険者と商人の魔法のギルドは盛況のようで・・・事務所内に張り出しているアルバイトの依頼書を沢山の人が眺めていた。ただ・・・依頼書を見てみるとどれも同じ依頼内容で・・・冒険者の依頼は薬草集め。酷い依頼だとは草むしりなんてのもあったり・・・商人の依頼だと新聞配達とかおつかいとか・・・魔法だと本の整理とか資料作成とか・・・
(依頼内容酷くね?しかも賃金も酷いし・・・魔法ギルドのアルバイト、魔法関係ないし・・・)
そんな事を考えつつどのギルドに入ろうか悩んでいた。私がどこに入ろうとしているか、在校生の方が見ている。以前、入るギルドで賭けをしているっと言っていたがまだ継続していたようだ。後ろでヒソヒソ話している声が聞こえる。
「あの子、絶対冒険者だって・・・」「いや、魔法じゃね?」「俺もそう思う。氷出せたし。」「いや~以外に商人かも・・・」
(はい、ごめんなさい。そのどれにも入りません。)
そう思いつつ私が入ったのは・・・
「すいませ~ん、ギルド登録お願いします~。」
「「「「「「「「ええええ!!!」」」」」」」」
事務所内がザワザワした。在校生数名がダッシュで走り去った。おそらく賭けのオッズを確認しに行っているんだろう。
「あ、あなた本気なの!?冒険者ギルドや商人ギルドはここじゃないわよ!?」
眼鏡を掛けた事務所のお姉さんが私に問いかけて来た。
「・・・・・。文字は読めます。読めないと思ってバカにして・・・」
そう言って嘘泣きしてみる。
「ごめんごめん!!ただの確認だったから!!」
そういうやり取りをして登録を完了させた。
「よーし!ギルド活動頑張るぞっと!」
両腕でガッツポーズをして意気込んだ振りをしてみたら事務所のお姉さんはなぜか苦笑いをしていた。
余談ではあるが在校生の中で極少数の人が大金を手に入れた模様だった。
自分がその場に居て見ている事を文字にしているような感覚になってます。それを妄想っと言うんだけど・・・妄想族になってますわ~




