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世界樹の夢でまた会いましょう  作者: うたまる ひろ
第4章・前編 首都攻防戦 ~それぞれのリュテ~
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小屋の中の戦い

 ――時間は少し遡って。


「こりゃ、一体どうなってやがんだ!?」

 ボリスが頭を抱えて困惑の言葉を口にした。それはこの場にいる全員の気持ちの代弁でもある。

 手洗いに向かったはずのカロルが忽然と姿を消してしまった。

 さらに悪いことには、そのことに戸惑っている内に今度は馬車が自分たちを置いて走り去ってしまった。

 不可解な事態が同時に二つも。

 アレン達は頭の理解が追いつかず思考停止してしまう。

「えっこれ、どうしますの!?」

 エマも動揺を隠せずおろおろと足を彷徨わせる。

 アレンが一足早く気を持ち直し、老人へと大声をかける。

「じいさん! 手洗いには他に出入り口はあるのか!?」

 管理人の老人は慌てて首を振った。

「ない! ない! あそこは手洗いしかない!」

「身を隠せるような場所は!?」

「手洗いの他には何もないよ!」

「じゃあカロルは何処へ……!!」

 老人の言葉通りならカロルは出入り口の無い場所で煙のように姿を消してしまったことになる。

 カロルの『ギフト』ではそのような芸当は不可能だ。

 そうこうしている内に、ククがある可能性を思いついた。

「もしや誘拐では……?」

 その場の全員がククへと振り返る。

「誘拐?」

「わからないですけど……でも他に出入り口の無い場所から姿を消すなんて、何者かの『ギフト』のしわざとしか考えられなくないですか?」

「お嬢さんの『ギフト』って可能性は無いのか?」

 ボリスの質問にククが首を振る。

「カロルのは、そういうことができる『ギフト』ではありません。他の何者かの『ギフト』としか考えられないです」

「じゃあ一体そいつは誰なんだ!?」

「そんなの私だって知りたいですよ!」

 その時、アレンの胸中ににわかに思い出される記憶があった。

「知ってる……知ってるぞ、出入り口を作り出す『ギフト』を持ってる奴! カロルの親父さんを殺した犯人、その内の一人がそういう『ギフト』持ちだ! 確か名前はパーシーとか言ったか。好きな所に扉を作って別の場所と繋げられるんだ! あの能力ならカロルを誘拐できる!」

「そいつはお嬢さんを誘拐しようとする奴なのか?」

「ああ、時間があれば話すが、そいつはカロルの事を拉致しようとしてたんだ。今回のこともそいつの仕業かもしれない」

 その言葉を聞いて、ボリスが「なるほどな」と相づちをうつ。

「じゃあそいつの仕業としてだ。後はそいつがお嬢さんを連れて何処へ行ったかだが……」

「あの……だったら私達を置いて行ってしまった馬車。あれではなくて?」

 エマがおずおずと意見を口にした。

「私達を突然置いていく理由が分かりませんし、タイミング的にもカロル様が消えた直後のことですし……」

 その言葉にアレンが訝しむように片眉を上げる。

「じゃあルメール警部が手を引いてると? 警部はなんでそんなことを? まさかパーシーが警察と手を組んでいる?」

「そこまでは流石に……。でも状況的にはそうとしか……」

 そのやり取りにじれったくなったのか、ククが口を挟んだ。

「なんにせよ、ここは急いで追いかけた方が良いのでは?」

「そうだな、あまりぐずぐずしてられねぇ」

 そう言うと、ボリスは老人の方へと振り向いた。

「じいさん馬はないか!? いたら貸して欲しい!」

 ボリスの問いに老人は残念そうに首を振った。

「おらん。去年死んじまってから、ずっと金が無くて代わりを買えなんだ……」

 老人の言葉にアレンが「クソッ、まずいぞ!」と焦る。

 ククがアレンの袖をグイっと引いた。

「私が先に飛んで追いかけます!」

「……そうだな。わかった、頼む!」

 アレンが答えを言い切るよりも先にククが駆け出した。ドアを吹き飛ばすような勢いで外へ飛び出そうとしたところで。


 乾いた破裂音が突然響き、ククの近くの壁が突然弾けた。


「きゃっ!」

 ククが思わずたたらを踏んで後ろへと倒れそうになるのを、アレンが慌てて支える。

「なんだ!?」

 アレンが驚愕していると、立て続けにさらなる破裂音が鳴り響く。

 キュウン、という特徴的な風切り音が通り過ぎた。

「銃撃されてるぞ!」

 ボリスの叫びに、その場の全員が反射的に床へと身を伏せた。

 身を屈めつつ、ボリスが素早く窓の傍へと近づき、慎重に外の様子を窺った。

「……厩舎の後ろに何人かいる」

 小屋の前は馬車が2、3台停められるスペースになっている。

 その広場を挟んで反対側には木造の厩舎がある。馬を8~10頭ほど留められるくらいの大きさだ。

 その厩舎の後ろに複数の人影が見えた。建物の陰に身を隠しながら、こちらを窺うように覗き込んでいる。人相はあまりよろしくなく、据えた目つきに凶悪な光を宿らせて小屋を観察している。

 アレンがボリスに問いかけた。

「敵か? どのくらい居そうだ?」

「さあなぁ。少なくとも3人は見えた。多分もっと居るだろう。明らかに待ち伏せだこりゃ。どうみても警部はクロだな、お嬢さんも馬車の中だろう」

 ボリスが近くにあった自分の荷物を引き寄せた。急いで荷物を漁り中から拳銃を取り出すと手早く弾を込める。

 それが終わると、銃床で窓ガラスを叩き割りすぐさま壁へと身を隠した。

 外から銃撃音が聞こえ、窓枠の辺りに何発か打ち込まれた。その場の皆がその音に身を竦ませる。

 銃撃の合間を縫って、ボリスが牽制射撃を始める。

「じいさん、他に出口は無いか?」

 アレンが声を掛けると、頭を抱えて床に伏せていた老人が答えた。

「炊事場の勝手口が……」

「そいつはどこだ?」

「あそこだ」

 そう言って老人は、さきほど茶道具を取りに入った部屋を指差した。

「おい、ボリス! 裏に勝手口があるらしい!」

「そっちの扉は塞いじまってくれ!」

「いいのか!? 俺たちの逃げ場がなくなるが」

「人数差がありそうだ、挟撃されると対処できねぇ! 敵の進入路は減らした方が良い!」

 その言葉に納得したようにアレンが頷く。

「わかった! クク、じいさん、手伝ってくれ!」

 アレンがガバリと身を起こして炊事場へと急ぐ。ククと老人も急いでそれに続く。

 裏側の窓へとたどり着くと、アレンは窓の外を窺った。

「……こっちにもいるな……」

 周りの雑木林の中に人がいる気配がする。何かお互いに合図を送るかのような手振りが、木立の合間から見える。

「勝手口と窓を塞ごう。ここの机が重たくて丈夫だからそれを使わせてもらう。クク、この机のそっち側持ってくれ。じいさん、窓の外見張っててくれるか? 誰か来たら教えてくれ」

 アレンの指示に老人が隠しきれぬ不安を瞳に滲ませながら、重たい足を必死に動かし窓の傍へと駆けていった。

 アレンとククは掛け声を上げると引きずるようにして重たい机を運び、炊事場の扉のすぐ横にあった勝手口へと、机を縦にして突っ込んだ。内開きの扉なのでこれで支えになるだろう。扉を破壊されても机が邪魔して、背後から急襲される前には気付けるはずだ。

 窓は全面を塞ぐようにして机を立てておいた。アレンが念押しに、『黒玉』の力で窓と机をピッタリと貼り付ける。

「アレンの『ギフト』の効果はいつまで続くんですか?」

 ククが問いかけると、念を押すようにグッグッと机を押し込みながらアレンが答えた。

「俺が意識し続けてる間は……闘い始めたら気が散ってそんな余裕なくなるから、気休めだと思ってくれ」

「そうですか……この机の奮戦に期待しましょうか」

「やれば出来るやつと期待しよう。ボリス、こっちは塞ぎ終わった!」

 窓から銃口を出して襲撃者達を銃撃していたボリスはその言葉に「ああ!」と応え、窓の外を覗く。再び外からの銃撃が小屋を襲い、首を竦めるようにして再び壁へと張り付く。

 エマはいつの間にかボリスの傍に移動して、壁に張り付くようにしゃがみこんでいた。ハラハラとした様子でボリスの銃撃戦を傍で見つめている。

「奴らも警戒して近寄っちゃ来ねぇ、が、こっちの弾も残りはそんなに多くねぇ。青年、もしくはエルフっ娘、お前達銃弾なんて持ってないよな?」

「残念ながら持ってません」

「俺もナイフだけだ」

 二人の答えを聞いて、ボリスがチッと舌打ちする。手を伸ばして細長い筒状の布袋を引き寄せるとそれを紐解く。中から長銃が姿を現した。

 ボルトを引いて装填すると、それを壁に立てかける。弾がなくなったら長銃に切り替えるよう準備したのだろう。

 アレンとクク、そして老人がボリス達の傍へと寄った。

 老人が不用意に窓に近づいたためボリスが「しゃがめ! しゃがめ!」と手振りで老人を床に伏せさせる。

「そうとうマズイ状況だ。どうするか……」

 アレンが呟くように言うと、ククが口を開いた。

「一瞬で良いので、なんとか隙を作ってくれませんか? そうしたら私が外へ飛び出してカロルを追いかけます」

 エマが不安げな顔でククに問いかける。

「で、でもあちらは馬車ですわ。追いつけるのですか?」

「私はエルフなので、風の力で空を飛んで行きます。一人なら馬車に追いつけると思います」

 ククの言葉にボリスが「ううむ……」と唸る。

「一瞬くらいなら……しかし一瞬の時間作ったところであいつらに蜂の巣にされるんじゃないか?」

「私は物体と自分の位置を入れ替える『ギフト』を持っています。少しでも気を逸らしてくれれば、その『ギフト』で敵の銃撃を受ける前にこの場を脱出してしまえるかと」

 そのやりとりを聞いて、エマが何か思いついた顔で口を挟んだ。

「あの……でしたら、私がマクマジェルさんに同行しましょうか?」

「え?」

 エマの申し出がどういう意図のものか分からず、ククが困惑の表情を浮かべる。

「ええと? それはどういう……?」

「ああ、それはお嬢の『ギフト』が……いや、待て!」

 何かを説明しかけたところでボリスが片手を上げて会話を制する。


 いきなり、ドン! という大きな音が小屋に響いた。


「っ!? なんだ!?」

 アレンが驚き慌てて周りを見渡すと、またドン! という何かを叩く音が聞こえる。

 振り返ると、勝手口の扉に何かが外側から激しくぶつかってきている様子が見て取れた。机で塞いだ窓も同様だ。

 何者かが体当たりしてきているような気配だ。

「後ろの連中が動き出した」

 アレン達に緊張が走る。

 ボリスが急いで長銃を手に取り、それを構えた。

 少しタイミングを見計らう。


 再び勝手口が叩かれたところで、ボリスの長銃が火を吹いた。


 大音響が小屋を震わせ、勝手口の扉に穴が空く。その向こうで誰かがうめき声を上げた。

 ボリスが銃のボルトを素早く引くと、排出された空薬莢が床の上にチンと跳ねる。

 再び銃を構えると、今度は窓に向かって銃撃した。

 壁に小さな穴が空き、小屋の外で男たちが何事かを大声で喚き始めた。

 その声はやがて小さくなり、襲撃者たちの気配が遠ざかる。どうやら一旦引いたようだ。


 ボリスが冷や汗を一筋垂らしながら詰めていた息を大きく吐くと、再び玄関側の窓が銃撃され、慌てて壁へと身体を押し付ける。

「っ! まずい、野郎ども来やがった!」

 ボリスが外をチラと見て声を上げる。ボリスの視界には、柄の悪そうな輩が5人ほど、銃を構えながら駆け寄ってくるのが見えた。さらに厩舎の陰から2人ほど顔をのぞかせている。

「お嬢!」

「わかってる!」

 エマが立ち上がり、窓の前でおもむろに片手をかざした。その突然の奇行にアレンが「え!?」と心の中で慌てる。


 襲撃者達はすぐ近くにまで迫っていた。

 エマの姿を見て取ると、悪意に顔を歪めながら拳銃を持ち上げる。

 そして、襲撃者達の拳銃が一斉に火を吹いた。


 しかし、小屋の直前で全ての銃弾が弾き返された。

 アレンは思わず呆気にとられる。


 よく見ると、小屋の前には半透明のガラスのような『壁』が出来ていた。

 六角形状のタイルのようなものが隙間なく敷き詰められ、ぼんやりとした青白い光を放っている。

 どうやらこれが障壁となって、兇弾を防いだらしかった。

「な、なんだこりゃ!?」

 襲撃者達は突然の出来事に動揺し、足を止めてしまう。

「ボリス!」

 ボリスに目配せをしながら、エマがしゃがみこんで身を隠す。


 光の障壁が唐突に消える。


 ボリスが引き金を引いた。

 銃撃を受けた襲撃者が、一人悲鳴を上げながら吹っ飛び地面へと倒れる。


「ひ、引け! 引けぇ!」

 襲撃者たちは恐慌状態に陥りながら、踵を返して厩舎へと駆け出す。

 厩舎に控えていた男たちが仲間の撤退に合わせて、一斉に射撃を開始する。

 続けざまに銃撃しようとしていたボリスが舌打ちしながら壁へと身を隠す。複数の銃弾が窓際へと襲いかかり、いくつかの弾は小屋の中に着弾した。

 しばらくすると外からの銃撃が止んだ。

 ボリスが慎重に外の様子を窺う。

 どうやらさきほどの襲撃者達は無事に厩舎まで引き返してしまったらしい。建物の陰からこちらを覗いてくる男どもの顔がチラチラと見える。

「クソが。だが、跳弾で二人倒せた。俺も今一人追加で仕留めた。裏の奴も含めりゃ、ようやく四人倒せたか」

 ボリスが呟くのを尻目に、アレンがエマに話しかける。

「ノイラートさん、さっきのは?」

「手っ取り早くエマで良いですわ。さっきのは私の『ギフト』です。光の障壁で敵の攻撃を防ぐ能力です」

 その言葉にアレンが「おお!」と唸る。

「こういう状況にお誂え向きの『ギフト』だな」

「ありがとう存じます。ですが過信しないでくださいまし。さきほど出した壁に六角形状の切れ目があったのは見えましたか? あれが一つのタイルになっていて、敵の攻撃を受けるとその部分が割れてしまうのです。すぐに張り直せますが、一瞬だけ隙ができてしまいます」

「なるほど……」

「さきほど私がマクマジェルさんに同行を申し出たのも、この『ギフト』なら身を守りながら外へと出られるかと考えてのことです」

「確かにそれなら安全に馬車を追いかけられますか。後、私のこともククで良いですよ」

 ククが頷きながら答えた。そこでアレンが思いつきを口にする。

「待て。その壁があれば全員でこの小屋を脱出するのも可能じゃないか?」

 エマが首を振る。

「私の周りにしか壁を展開できないので、私の足の速さに合わせる形になってしまいますよ?」

「ならばククに運んでもらいながらとか……」

 アレンの言葉にククも首を振る。

「流石にこの人数を運びながら空を飛ぶのは無理ですよ……」

 そう言うとククが再びエマへと顔を向ける。

「エマの申し出は大変ありがたいのですが、やはりここは私一人で追いかけます。奴らの気をなんとか一瞬逸らしてくれればいけると思いますので。それより、エマの『ギフト』を利用して、なんとかこの場を凌いでくれませんか? アレンとボリスさんの力は疑っていませんが、流石に多勢に無勢が過ぎます。エマが残ってくれた方が確実でしょう」

「その方が俺としても助かるな。お嬢がいりゃこの場はどうにか持ちこたえられると思う。それより」

 ボリスが長銃に銃弾を込めながらククに話しかける。

「銃で撃った弾と入れ替わるのはできないのか? そっちの方が手っ取り早くないか?」

「銃弾と入れ替わる、ですか。確かに……いや、やっぱりだめです。位置を入れ替えても銃弾の推進力は変わらないので、この小屋の中の何処に銃弾が飛ぶか分かりませんよ。誰かに当たるかも」

「ああ、そりゃ危ねぇな……」

 ボリスがしかめっ面をする。

「こうするのはどうだ?」

 アレンが提案する。

「俺が『白玉』の力を使って、なるべく遠くにククの『アンカー』を飛ばす。エマはその間、障壁を張って俺を奴らの銃撃から守る。ククは俺が飛ばした『アンカー』と入れ替わってこの場を脱出、カロルを追いかける。これなら比較的安全にいけるはずだ」

「すまんが『白玉』とか『アンカー』てのは?」

「俺とククの『ギフト』名だ」

 ボリスがなるほどと言いたげに肩をすくめる。ククが頷く。

「良いと思います。それでいきましょうか」

「よし。そうと決まれば早速動こう」


 ククが老人に許可を貰ってマグカップを二つほど拝借する。その内の一つをアレンに預けた。

「これに『アンカー』を打ちましたのでこれでお願いします」

 アレンが頷きながらそれを受け取る。そうして小屋の扉に手を掛けた。

「ボリス。牽制射撃頼む」

「了解」

 ボリスは短く答えると、銃撃を開始する。

 それを見て、アレンがドアノブに手をかけた。


「よし、行くぞ! 3……2……1……」

 ドアノブを握った手に力がこもった。


「今!」


 エマがすかさず障壁を張った。

 アレンが素早く扉を開いて、小屋の外へと躍り出た。ククも一緒に外へ出る。

 襲撃者達が厩舎の裏に隠れているのを尻目に、アレンがマグカップを空高く投擲した。


「うぉおおおらああああああ!!」


 アレンの膂力と『白玉』の反発力が相乗して、遠くの空へと弾丸のような速度で飛んでいく。

「行きます!」

 ククが大声を上げて『ギフト』を発動させた。

 一瞬でククの姿がかき消え、代わりに寸前に投げたマグカップが現れる。

 マグカップがまるでピンボールのように小屋の壁とエマの障壁の間を勢いよく飛び跳ね、やがて地面に落ちた。

 遠くの空に小さくククの姿が現れる。

 一呼吸置いたあと、ククが身を翻してツバメのように空の向こうへと飛んでいくのが見えた。

 銃撃を受けた様子もなく、無事にこの場から脱出できたようだ。

「よし! 成功だ!」

 アレンが小屋へと滑り込み、急いで小屋の扉を閉めた。すぐさま扉の向こうで複数の着弾音が鳴り響く。

 しばらく銃撃の音が響いていたが、やがて静かになった。

「後はカロル様を救出するまで、私達が持ちこたえられるかどうか、ですわね」

「いいや、お嬢」

 その声に、アレンとエマの二人はボリスへと目線を向ける。

「さっきから安定して戦えている。このまま全員返り討ちにしちまおう」

 ボリスが銃のボルトを引いた。

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