解決へ向けて2
ジェーンの言葉に、エマ達は虚をつかれたように呆然とする。
「昨晩の23時頃、屋敷の前に誰かと一緒にいたのは、あなたなの?」
エマが慎重に確認すると、ジェーンが観念したかのようにこくりと頷いた。
「……この場から少し移動しましょうか」
エマがマリーの存在を気にして場所を移すことを提案した。マリーは洗濯物をせっせと干している。ここから声が聞こえるとは思えないが、念の為だ。
マリーから見えないよう、建物の陰へと場所を移すと、再びジェーンとの会話を再開した。
「それで、ジェーンさんはどうしてあの時間、屋敷の外へ出ていたの?」
エマがそう問いかけると、ジェーンは顔を青ざめさせながら、目線を足元へと落とす。
「それは……旦那様の命令で……」
「村長の?」
恐る恐るといった様子でジェーンが答える。
「旦那様から、晩餐の後に、『今日の23時に訪問する者が居るので、書斎へ通すように』とご指示がありました。私が、それはどんなお方ですかと問うと、旦那様は『君が知る必要のないことだ。とにかく君は門の前で待って、その者が現れたら書斎まで案内するように。案内したら、君は速やかに自分の部屋に帰りたまえ。その後は朝まで決してドアの外を見ないように。また、この事は他言無用だ。よいな?』とおっしゃられました。それで私はその時間、門の前で訪問客をお待ちしていたのです」
「訪問客ですか? その方はどなたでした?」
「い、いえ、その方が現れる前に旦那様の叫び声が聞こえて、慌てて屋敷内に戻ってしまったのです。なので、どのような方かは結局わからずじまいで……」
その言葉を聞いて、ボリスが口をはさむ。
「でも、俺が見たのは二人組だ。だったら、もう一人いた奴は一体誰なんだ?」
「そ、それは……」
ジェーンが答えにくそうに言い淀み、エプロンの裾をきゅっと握る。
エマが問いを重ねようとした時に、突然意外な声が掛かった。
「それは俺だよ」
「……アンドレくん?」
夢男がアンドレの予期せぬ登場に、思わず声を上げる。アンドレは苦々しそうな顔をしながら歩み寄ると、ジェーンのそばに立った。
「アンドレ様……」
ジェーンが気遣わしげにアンドレに呼びかける。夢男が問いかける。
「アンドレくん、何故ここへ?」
「廊下からお前らの姿が見えたからよ、何話してるか気になったもんでな」
そう言って、アンドレは館の廊下を親指で差した。
「そんなことより、昨晩にジェーンと門の前に一緒に居たのは俺だ。嘘でもなんでもねぇ、本当の話だ」
「それは……どういうことだね?」
夢男が問うと、アンドレがその三白眼を鋭く細めて、睨みつけてくる。
「昨日の夜、ジェーンがこっそり屋敷を抜け出るところを見かけたんで、後を追ったのさ。そうして門の前でジェーンが立ち尽くしているところを見て、俺は声をかけたんだ――」
「おい、ジェーン」
夜の暗闇の中、門扉の外で立ち尽くすジェーンを見て、アンドレが声をかけた。
夜闇の中、突然後ろから掛かった声にジェーンは心臓が飛び出んばかりに驚き、「きゃあっ!!」っと鋭い悲鳴を上げて身体をビクンと跳ねさせた。
「俺だ。アンドレだ」
「ア、アンドレ様…………びっくりしました……」
「お前、こんな時間に何やっているんだ?」
心臓を落ち着かせるかのように、胸を押さえるジェーンに、アンドレが怪訝そうに言葉をかける。ジェーンはその言葉に答えづらそうに口ごもるのを見て、アンドレは推測を働かせる。
「親父に何か言われたのか?」
「…………あの、アンドレ様……ではないですよね?」
「はぁ? 何言ってるんだ? 俺はアンドレだぞ」
「い、いえ、そうではなくて……今夜の訪問者というのは、アンドレ様のことではないですよね……?」
「あぁ? 訪問者? なんだそれは?」
「え、ええと……その……」
そこまで言ってしまった以上、隠すことはできないとジェーンは観念して、村長から聞いた深夜の訪問者の話をした。
それを聞いたアンドレは「あの親父め……」と苛立たしげに足を貧乏ゆすりしながら呟いた。
「すみません、このことは旦那様から他言無用と仰せつかっていて……アンドレ様も何卒他言なさらないようお願いします」
「ああ、別に言うつもりはねぇよ。……それより、その訪問者とやらにジェーンは何か心当たりは無いのか?」
「いえ、全く……」
「…………もしや」
アンドレが思案げに顎に手を沿える。
「あの三人のことに関係あるかもな」
「あの三人とは、本日お招きしたお客様のことですか?」
「それ以外誰がいる?」
アンドレがジェーンに目を向ける。
「親父はきっと、あの三人を捕まえるつもりだ」
「ええ!?」
ジェーンは口を両手で覆いながら、驚愕の声を上げる。
「な、なぜ?」
「親父は」
アンドレが苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。
「おそらく『旗持ち』たちにあの三人を引き渡すつもりだ」
「ちょっと待って下さい! 今、『旗持ち』とおっしゃいましたか!?」
アンドレの話の途中だったが、聞き捨てならない言葉に、エマが待ったをかける。
「ああ、言ったさ。親父は『旗持ち』たちにあの三人を引き渡すつもりだろうと、俺は踏んだ」
「それはなぜ!?」
エマが焦るように質問を重ねる。
「やかましいな……」
アンドレが迷惑そうに耳に人差し指を突っ込む。
「私達はカロル様たちの無実を証明したいがためにここにいます! 大事なことなんです!」
エマがアンドレの服を掴まんばかりに詰め寄ると、アンドレが顔をしかめながらも質問に答えた。
「そりゃあ、親父が旗持ちの一員だからだ。シャロンの娘を見かけたら知らせろって上からお達しがあったようだからな。手柄が欲しくて、命令された以上のことをやろうとしたんだろう。奴らを確保して身柄を引き渡すつもりだったんじゃねぇか?」
「なんですって!?」
三人がアンドレの言葉に仰天する。
「この村は筋金入りの保守派だからな。村の連中の中にも、組織の下っ端の奴らが何人もいる。親父は村長であるとともに、そういう奴らをこの村の中でまとめてやがった。そいつらを使って、首都まで運ぶ算段だったんだろうよ」
アンドレが気に食わないとばかりに鼻をならす。
「せっかく忠告してやったのによ、あの間抜けな連中は村を出ずにここまでノコノコやってきた。ざまぁねえぜ」
その言いざまにボリスが激昂した。
「おいてめえ、忠告とか言うんなら、なぜそれを直接言わなかったんだよ!! こちとらチンピラに因縁付けられたぐらいにしか捉えられなかったぞ!」
「あぁ? てめぇらクソのためにわざわざ忠告してやっただけありがたく思えよ、このクソカスが。この村にゃ、何人もの旗持ちの連中が居るって言っただろうが。そこへ間抜けにも『旗持ち連中にゃ気をつけろ』なんてしたり顔で言ってみろ。旗持ち達は俺を敵とみなすだろうよ。身が危うくなるのは俺とジェーンだ。てめえらのようなボケのために危ねぇ橋を渡れるかこのタコが」
「ぐっ、て、てめぇ……!」
ボリスが握った拳のやりどころもなく、悔しそうに言葉を詰まらせた。
エマがボリスを手振りで抑え、アンドレに問いかけた。
「今のお話の中で気になったことがあるのですが……あなたの身が危うくなる事情はわかりました。しかし、なぜジェーンさんまで?」
「あ……それは」
ジェーンが挙手しながら答える。
「私、テルミナの出身で……ジェーン・ハリソンと言います。外国人の、しかもテルミナ人なので、つまり……」
「旗持ち達に目を付けられてるってわけですね……。しかし、それでもその場合、直接的にはアンドレさんだけが危ないんじゃないですか?」
「それは……」
ジェーンが何かを言いかけてやめると、アンドレがため息を吐きつつ、代わりに答えた。
「俺とジェーンは、デキてるんだよ」
「え?」
「お嬢さんの耳はただの虫食い穴か? 俺とジェーンがデキてるって言ったんだよ」
三人はその言葉に黙り込む。ジェーンが少し顔を赤らめ、気まずそうに顔をそむけた。
「俺とジェーンの事は、この村連中にゃ周知の事実だ。そこで俺がヤバい動きしてみろ。ただでさえ旗持ち連中はジェーンの存在を気に入らねぇと思ってるんだ。俺と一緒に組織に反抗してるとみなされて、ジェーンにも制裁を加えかねねえ。それはごめんだからな。ルメール、てめぇだってこのあたりの事情はわかるだろう?」
アンドレが腕組みしながら夢男を睨む。夢男にとっても初耳の事だったが、アンドレの話に合わせて「まぁね」と、とぼける。
「それでシャロンのお嬢さんたちを見殺しにしたってか。本気で伝えようと思えば、いくらでもやりようはあったろうによ」
ボリスが怒りを滲ませた視線で、アンドレを睨む。
「なんで俺がそこまでしなきゃならねぇんだよ、おぉ?」
「ボリスさん、アンドレくん。話が進まないからそこまでにしてもらおうか」
夢男が仲裁に入る。
「アンドレくん。さきほどの話の先を聞かせて欲しい」
夢男がそう言うと、やりづらそうに顔をしかめながら、アンドレが再び語りだした――。
「――つうわけでジェーン。お前は今、ヤバいことに足を突っ込んでる」
「そ、そんな……」
月明かりの下、ジェーンの顔は蒼色を通り越して、真っ白にならんばかりに血の気が引いている。恐怖の涙に濡れて、瞳が痙攣するように揺れている。
「わ、わたし、どうしたら……」
「どうしたもこうしたもねぇ。クソ親父の言うとおりにするしかないな」
「でも……!」
「あの三人は親父の罠とも知らず、自分からノコノコとやってきたんだ。俺らが救う義理立てはねぇ。それより、ここで旗持ち達の邪魔をしちまったらまずいことになる。下手な動きをするな。案内だけしたら何も知らんという態度でいろ」
「……そんな…………」
ジェーンは絶望したかのように両手で顔を覆い、その場にうずくまった。
「お前の気立てからして、辛いのはわかるがな。もうどうしようもねぇよ。……とりあえず、俺は物陰に隠れながら、お前を見張ることにする」
アンドレは周りをきょろきょろと見渡しながら言った。
「お前に何が起こるかわからないからな。何かあったときは俺が飛び出して、お前を連れて逃げる」
「そんな! 私のせいでアンドレ様が泥をかぶる必要はないです!」
「構うもんか。どうせこの村には嫌気が差してたんだ。いい機会だぜ。このまま何処かへ逃げちまや良い。どうせならお前の国にでも逃げるのが良いか?」
「…………アンドレ…………」
そう呟くと、ジェーンはアンドレの胸の中に飛び込んだ。アンドレも羽毛を抱えるかのように、優しく抱きしめ返す。
空から振ってくる銀色の光が、二人の姿を照らし出していた。二人は静かに身を寄せ合った。
その時だった。
突如、屋敷から野太い絶叫が上がった――。
「その後の事はわかるだろう? 俺らは誰にも見られないよう、様子を見ながら家に戻った。すると二階からフェルディナンとマリーの声がしたんで、急いで書斎に向かった、こういうわけだ。寝室に居たっていうのは嘘だ。俺らは玄関から真っ直ぐ書斎に向かった」
「しかし……やはり我々にそのことを話しておくべきだったんじゃないかな? そうしていれば、このように我々に疑われずに済んだ」
「あぁ? 疑ってたのかよ、ルメール」
「ジェーンさんが不用意な言葉を使ったものでね」
夢男の言葉に、ジェーンが気落ちするように俯いた。アンドレが舌打ちする。
「親父の使いで外へ出ていた、旗持ち連中と接触するつもりだった、なんてバカ正直に言ったら、なんにも無くても、もしかしたらジェーンが事件へ関わってるかもしれねぇって疑われるだろうが」
「それで、二人で口裏をあわせて、それぞれ寝室に居たってことにしたんですね」
「ああ、まぁな」
エマの言葉をアンドレが肯定する。
「ということは」
エマが結論を出す。
「ボリスが見たっていう人影の正体は、お二人だったということね」
エマのその言葉に、ボリスがやれやれと言わんばかりに頭を振る。
「……では、ジェーンさんが見たという馬車の正体は……」
エマが言うと、アンドレがそれに答えた。
「多分、旗持ち連中の馬車だろうよ。親父が呼んだんだろ」
「もしかして、ボリスが見た灯りの正体も……」
「あぁ? なんの話だ?」
アンドレの疑問に、ばりばりと頭を掻きながらボリスが答えた。
「夜中に二階の、ちょうど書斎部分あたりで、灯りが揺れてるのを見たんだよ」
「はん? ならそれは親父だ。たまにそうやって村の旗持ち連中とこっそり連絡を取り合ってるのを見たことがあるぜ。今回のことも多分、馬車を呼ぶために合図を送ってたんだろうよ。これで奴らの関与がはっきりしたな。まぁそんなのが無くても、俺は確信してたけどよ」
アンドレがつまらなそうに言い放った。
アンドレの言葉によって、エマの推測が正しかったことが裏付けられた。
厳密に言えば、夜中に見た人影の顔まではボリスには判別できなかったので、人影がこの二人だとは言い切ることはできない。
それはそれで別の証拠が必要だったが、二人の話を総合すると、つじつまは合っているように思われる。傍証としては十分に思えた。
「これで俺たちの疑いは晴れたってことでいいな。俺はもう行くぜ」
アンドレはそう言い残すと、さっさと建物の角を曲がっていってしまった。そして、それと入れ替わるようにマリーが姿を見せた。
「話はもう終わったのですか?」
マリーが歩き去っていくアンドレの方を気にしながら4人に声をかける。
「そうだね、大体は」
夢男が返事をすると、マリーはジェーンの方に向きなおった。
「ジェーン、洗濯物は全部干し終わったわ」
「え! もうですか!? す、すみません、私の仕事でしたのに……」
「いいのよ、それほど大変な仕事でも無かったから」
マリーは涼しげな顔で微笑んだ。
三人が屋敷の裏庭に戻ると、そこには洗濯紐に吊るされた衣類や寝具が陽光に晒され、気持ちよさそうに風にはためいていた。
中へ戻ろうとしたところで、ボリスがとあるものに目をつけた。
「この袋はなんだ? これも洗い物じゃないのか?」
「あ、それは焼却処分するためにまとめておいた物です」
「焼却処分? 中味は何かね?」
夢男が怪訝そうな顔で問う。
「ええと……昨日の……事件が起きた時に汚れた服をまとめたものです」
「昨日の事件だって?」
ジェーンの言葉に夢男が意外といった顔で問い返す。ジェーンが頷く。
「その……血で、汚れてしまったもので」
「たとえ、血で汚れてもう使えないからと言って、事件の証拠物品になりそうな物を焼いて処分するというのは感心しないね。何か隠したいものでもあるのか?」
夢男が険のある顔つきでジェーンを睨むと、ジェーンはビクリと震えて、「あ、あの、すみません」と狼狽えた。
そこへマリーが口を挟んだ。
「すみません、それは私が指示したものです。警部のおっしゃる通り、もう使い物にならないため、事件が落ち着いたら処分しようとまとめていたものです。誤解を招いてしまい、まことに申し訳ありません」
マリーがジェーンへ指示したことを告げ、謝罪の言葉を口にする。夢男は「やれやれ」と呟き、ふぅと一息ついた。
「その中味を見せてもらえるかな」
「わ、わかりました……それでは」
ジェーンが袋の口を解くと、中には幾つかの服が入っているようだった。
「確認させてもらうよ」
夢男がそう言って、袋の中味を取り出していく。
「うっ……」
エマが取り出された衣類を見て、思わずといった様子で口を手で押さえる。ジェーンとマリーも、重苦しい顔つきで夢男の行動を見守る。
ボリスがそれらの物を見ながら呟いた。
「血だらけだな……」
取り出された衣類はどれも血の跡が残り、乾ききったそれがドス黒く変色していた。
三人とも、昨夜の事件についてはアレン達や使用人達の話を聞いていただけに過ぎない。それでも、証言を集めていく中で昨晩の出来事の輪郭が少しづつはっきりしていくのは感じていた。
しかし、一つ一つ地面に広げられていく生々しい惨劇の跡は、殺人という身の毛のよだつ行為が現実に行われたのだという事を情け容赦なく語りかけてきた。
三人は、その事実をまざまざと見せつけられた衝撃とともに、背筋に走る怖気を止めることが出来なかった。
「……これで全部か。それで、これらはどれが誰のものだね?」
夢男が地面に広がる服を見下ろしながら問いかけた。
「これらは、フェルディナンさんのものです」
「ああ……このエプロンとドレスは私のものですね」
ジェーンがフェルディナンの服を指差し、マリーも自分の着ていた服を見つけて、同様に指で指し示した。
ジェーンが指差したのは、燕尾服に、白シャツ、グレーのベストに、同じくグレーのズボン、白手袋と蝶ネクタイだった。
またマリーの言う通り、白いエプロンと、濃い藍色の給仕服もそこにあった。
どれも仕立てが良く、生地も質の良いもので作られているのが分かる。
しかし、それらは見る影も無く血で汚れていた。燕尾服とマリーの給仕服は暗い色のため目立たないが、よく見ると一部がより濃い黒色に変色し、パリパリに乾いているのが分かる。
生地の薄いシャツとエプロンは別にして、それ以外の物が裏地にまで血が染み出していない所を見ると、おそらく村長を抱き起こすか何かした際に、その血が表面に付着してしまったものであろう。
「これは?」
と言って、夢男が一枚のハンカチを手にとると、マリーが答えた。
「それも私のものです。昨晩フェルディナンさんの手が汚れた時に、それを拭うためにお貸ししました」
そのハンカチも白い生地で出来ていたが、なるほど、手を拭ったためか一面血に塗れて、ぐしゃぐしゃに皺が寄っていた。
三人がそれらの服をためつすがめつ確認していると、マリーがそわそわと落ち着かない様子で、しきりに屋敷の方へと目を向け始めた。
「マリーさん、どうかしたかね?」
夢男が問いかけると、マリーが「え、ええ……」と歯切れの悪い返事を返す。
「思ったよりここで時間を使ってしまったもので、そろそろ自分の仕事に戻らないとと思いまして……」
「ふむ、そうかね。ならば戻ってくれて構わないよ。何か聞きたいことが出来たらまた話を聞かせてくれるかね」
「はい、それは問題ありませんのでご遠慮無く。……ではお言葉に甘えて、これで失礼を」
そう言って、マリーは屋敷の中へと戻っていった。
「……あ、これ……」
急にエマが声を上げたため、夢男とボリスは何事かとエマの手元を覗き込む。
「? お嬢、『それ』がどうかしたのか?」
エマが手にとった『とある物』を見て、ボリスが疑問を口にする。
「これ。よく見て」
「ム……」
「おいおい、こりゃあ……」
エマが手にとったものを間近で見て、夢男とボリスが顔色を変えた。
ボリスがまいったとでも言いたげに片手を頭にやりながら、「これは一体どういうことになるんだ?」と困惑の言葉を口にした。
「何の参考になるのか今は分からないけど、これは見逃せない情報ね」
思わぬ収穫を目の前にして、エマが独り言ちながら手元の物をじっと見つめた。
【作者Twitter】https://twitter.com/hiro_utamaru2
【質問箱】https://peing.net/ja/hiro_utamaru2?event=0
評価・感想は小説家になろうにアカウント登録するとできるようになります。
作者の励みになりますので、よろしければ!