クク・マクマジェル
「フフッ。それで? 私達がシャロン某の屋敷に忍び込んで、盗みを働いたって?」
濃い栗毛色をした髪を持つ妖艶な美女が、さも可笑しそうに笑った。
「そんな証拠が、どこにあるのかしら?」
「とぼけるな。この辺りでそんなことが出来るのはお前たち以外いないだろう」
ボードリヤールが苛立つような声音で女に返事した。
「あら、どうかしら? 案外ボードリヤール様ほどの権力をお持ちなら、もみ消すことくらい造作も無さそうだけど?」
「私がやったというのか!? ばかなことを!」
「ンフフ……冗談よ」
女は冷たい目で薄く笑うと、ボードリヤールの座る椅子に手をかけた。
「それで、私達がシャロン某の屋敷に忍び込んだとして、ボードリヤール様は一体何を仰りたいのかしら?」
女が言うと、怒りによる興奮で乱れた呼吸を整えながら、ボードリヤールが口を開いた。
「シャロン邸から盗みだした品はどうした?」
「何度も言うけど、私達が盗んだという証拠はないわ」
「何度も言うが、とぼけるな。警察を動かしてお前らの拠点に強引に踏み込んでやってもいいんだぞ」
「あなた……調子に乗ってない?」
女がそう言うと、ボードリヤールの首筋に蛇のような形をした黒あざが這いずり回った。ボードリヤールはその感触の気色悪さに顔をしかめる。
「ここで縊り殺してやってもいいのよ」
「こんな公の場所でか? 如何に警察の踏み込めぬ聖域とて、私が殺されたとあれば警察も躊躇すまい。それで困るのはお前たちだ」
「事故のように見せかけることだってできるわ」
「おやおや! 身動きなどするはずもないオーケストラの演奏中に、一体どんな事故が起こるというのだろう! 見事なホルンの響きに感動する余り、私は手すりを乗り出し観客席へ飛び込むのだろうか? それとも私の心臓があのティンパニのように早打ちしてしまい、心臓麻痺でポックリという筋書きかね!?」
ボードリヤールが女の軽率な言動を盛大に皮肉る。女の口から歯ぎしりが聞こえた。
「いずれにせよ、なんとも不自然極まりないではないか。そんな状況を警察が放っておくわけがない。ただでさえ怪しまれる私とお前らの関係だ。この場限りのたわいない口論で、一家揃って仲良く牢獄にでも入るかね?」
ボードリヤールが冷や汗を、ツッ、と流しながら答えると、女は不愉快そうに舌打ちをする。ボードリヤールの首筋から蛇型のアザが煙のように消えていく。
「今一度問うが、盗品はどこへやった?」
「……倉庫よ。まだ売却してないわ」
女が苦虫を噛み潰したような表情で答える。ボードリヤールが鼻を鳴らす。
「シャロン氏ほどの人物が集めた高価な品々だ。そうそう簡単に買い手がつきはすまい」
「いつもどおり外国へ運んで売りさばく予定だったのよ! アシがつかないようにねっ!!」
女は苛立ち紛れにボードリヤールに怒鳴った。
「では私がその手間を省いてやろう」
「何ですって?」
「私がそれらの品々を買い取ってやろうというのだ」
ボードリヤールの申し出に、女は困惑した。
「買い取るですって? 何のためによ?」
「無論、私が所持するためだ」
「そんな言葉で納得するとでも?」
女の目がギラリと光を放つ。
「貴方のお目当ての品々、全部ドブ川に捨てたって良いのよ? 惜しい品々とは言え、所詮は盗品。ドブに捨てたところで、私達には何の損も無いわ」
今度はボードリヤールが舌打ちをする番だった。女は意趣返しに成功し、自尊心を取り戻したが如く胸を張る。
「……仕方あるまい」
ボードリヤールはカロルとの会談について話した。エンブレムの件は隠したまま。
「……ふうん。その小娘のために盗品を取り戻してやって、恩を売ろうってわけね」
女がそう言うと、ボードリヤールはあごを擦りながら、「ああ」と短く返答した。女の目が鋭く細められる。
「私らがそのカロルとかいう小娘を誘拐したら?」
「その時は私はヴィースの良き一市民、シャロン嬢の良き理解者として、お前たちを誘拐犯として訴えるだけだ。万が一、シャロン嬢がその過程で命を落としたとしても、それはそれまでの話。益が無くなることはあっても、損をすることは無いな」
「ふん、忌々しい」
女はこの返答を予期していたらしく、さらりと受け流す。
「来るなら明後日の19時に来なさい。場所はウチの商会名義で持っている第24番倉庫。マティアスには話を付けておくわ」
「良い取引を期待している……ローザ・ヴァイスマン」
ボードリヤールがそう言うと、ローザは鼻を鳴らして踵を返した。
「行くわよ、クク」
「……はい」
背の低いエルフの女が返事した。
アレンは驚愕に目を見開いた。ククだって!?
アレンは緞帳の端をそうっとめくり、中の様子を直接覗いた。
「……あのエルフ女、マティアス一味の仲間だったのか!」
アレンが取り逃がしたククという名前のエルフのスリ女が、ウェーブ掛かった長い栗毛色の髪を垂らした女の横に並んでいた。
「ということは、あそこに座っている男がボードリヤール。そしてあの女が……」
ローザ・ヴァイスマン。マティアスに並ぶ、一味のトップ。アレンは人知れず手に汗を握った。
ローザがククの肩辺りに手を置いた。
「早くしなさい」
ローザがククに何かを急かすと、ククはコクリと頷いて、そして――。
「「ッ!」」
アレンと目が合った。
心臓が痛いほどに脈を打つ。血圧が一気に上昇し、息が苦しくなる。
見つかってしまった! なんという間抜けなドジを!
アレンはどうすべきかと周りを素早く見渡し――。
「……? 早くしなさい、クク。一体何を……?」
ククのおかしな様子にローザは何かを察し、唐突に緞帳の方と振り向いた。
緞帳の端が、風も無いのに揺れていた。
それを認めるとローザは考える間もなく、即座に片手を緞帳に向けた。
するとローザの影から、影と同じく真っ黒い蛇が4、5匹、勢いよく飛び出した。
蛇共は奇声を発しながら、緞帳へと飛びかかる。
その結果を待たずして、ローザは歩きだす。
蛇が強く体当りし、緞帳へと牙を立てる。
ローザはつかつかと緞帳に歩み寄る。
手を伸ばし、緞帳を掴む。
思いっきりめくる。
そこには。
――誰も居なかった。
「……」
ローザは周りの様子を伺い、手すりから下を覗き込んでみるが、誰も居ない。
「……」
ローザは束の間棒立ちになると、不意に緞帳から手を離し、元居た場所へと戻っていった。緞帳に咬み付いていた蛇たちも瞬く間に消え失せた。
「い、一体なんなんだね? よもやスパイか?」
さきほどから何もできずにいるボードリヤールが不安げに問うた。ローザはボードリヤールの横を通り過ぎながら「さあね」とだけ返答した。
困惑と不安の入り交じる表情を浮かべたククに、ローザが話しかけた。
「あなた……何か見たわね」
「いや……あの……」
「何を見たの?」
ローザが鋭い目線でククを射抜く。その目線にククの心臓は止まりそうになる。
ククがおろおろと視線をさ迷わせていると、不意にあるものが視界に飛び込んできた。
「……あれを……」
「ん?」
ククが何かを指差し、ローザとボードリヤールがそちらに目を向けると、バルコニーの上に何かが落ちていた。ククが風を操って、それを手元へと持ってくる。
「……これは?」
それは、カロルがアレンのコートを留めるために使った、造花のブローチだった。
「……このブローチが」
ククが言葉を告げる。
「3階の方からそこへ落ちてきたのを見たんです。思わず条件反射で風を使ってしまって、それで、その……緞帳を揺らしてしまって……」
ククが萎縮するようにローザに告げる。ローザはそのブローチを手に取り眺めると、少しの間黙り込んだ。
そして、不意にククの横っ面を平手で引っ叩いた。
「エルフってのはヒトより長生きな癖に、幾つになってもガキなのかしら?」
ローザが隠しきれぬ怒気を滲ませ、静かに言葉を呟く。造花のブローチを怒り任せにククに投げつける。
「仕事中、こんなものに気を取られる間抜けが何処にいるっていうの?」
ローザがそう言うと、ククの首元に影の蛇が巻き付いた。
「かっ……は……!」
「あなたの身体にはこうやって私の蛇を潜ませていること、よもや忘れちゃいないでしょうね?」
ククの首に巻き付いた影の蛇が、ククの肌から剥がれ本物の蛇のようになり、その牙をククの首筋に立てる。
「……今ここで殺してやろうかしら?」
「やめろ! この場でそんな派手なことをしないでくれ! 私に疑いがかかる!」
ローザの物騒な物言いにボードリヤールが待ったをかける。ローザは感情の籠もらぬ目でボードリヤールを見据えると、急に白けたような表情になり鼻を鳴らした。
「かはっ! はぁーっ! はぁーっ!」
ククは締められた首を擦りながら、急ぎ呼吸を取り戻す。
「全く、とんだ無能を抱え込んだものよね。使えるのはあなたの『ギフト』、ただそれだけ」
そう言うと床に這いつくばるククを足蹴にした。
「ああっ!」
「それもこうなると、『ギフト』のメリットより、あなたを抱え込むデメリットの方が大きいんじゃないかしらと思うわ」
そういうと、ローザはククの髪を引っ張り上げ、無理やり立たせた。
「あなたの今後の処遇は、マティアスと相談することにするわ。……アジトに戻るわよ」
「はい……」
そういうとローザはボードリヤールの方へ顔を向けた。ぞっとするほど冷たい微笑を浮かべている。
「それじゃボードリヤール様。またお会いしましょう」
そういうとククの肩をギュッと掴んだ。爪が食い込むほどの力強さに思わず顔をしかめたククだったが、『ギフト』を発動させてその場からローザごと消え失せた。
後には位置を入れ替えるためのものと思われる葉巻が一本床に落ちた。
ボードリヤールはそれを拾うと、忌々しげな顔をしながら火を点け、煙をくゆらせた。
アレンはそれらの一部始終をバルコニーの裏側から盗み聞いていた。
「危なかった……」
思わず独り言を洩らした。あの時、ローザに見つかりそうになったアレンは咄嗟に黒玉の力でバルコニーの裏側に張り付き、難を逃れていた。
「くそっ、ブローチ落としちまったか……。カロルが気に入ってたのに……」
やはり厚ぼったい生地を留めるのには無理があったのか、急に動いた際にブローチが外れてしまっていた。
アレンはそれに気づいたものの、もはやそれを拾う時間の余裕は無く、悔やむも悔やみきれぬまま、そこへと置き去りにする他無かった。
「それにしても、なんであのエルフ女、本当のことを言わなかったんだ……?」
それが不思議だった。あの時アレンとククは確実に目が合ったはずだ。ククはアレンの存在に気づいていたはずだが……。
「……ここで悩んでも仕方ないか。誰かに見つかっても厄介だ」
黒い服装で暗闇に紛れているとは言え、注意深く見られてしまえば当然見つかってしまう。いい加減動かなければならなかった。
アレンはブローチのことだけが気がかりだったが、流石に取りに戻ることもできず、諦めて引き返す他無かった。……この埋め合わせは後で必ずしよう。そう心に決めた。
アレンがカロルの下へと戻った頃には曲の第1楽章が終わり、第2楽章が開始するまでの短い静寂が訪れていた。
ククがドサリと床の上に倒れ込んだ。
「本当にあなたって……愚図な女」
ローザがククを睨みつけた。
「この前も下っ端のやるような簡単なスリ仕事ドジって……あなたは一体何ならできるの?」
「あれは思わぬ邪魔が入って」
「その邪魔も含めて」
ローザはククの言葉にかぶせながら、顔を寄せた。
「どうにかするのが『プロ』の仕事ってもんでしょう……よっ!」
ローザはククに蹴りを入れる。「ぐっ」といううめき声がククの口から漏れる。
「……おい、臆病者よ」
物陰からヌッとスキンヘッドの男が姿を現す。ローザがその男に「マティアス」と声をかける。
マティアスはその大きな手で、ククの小さな顎を引き上げた。
「てめぇ、もしやわざとドジってんじゃねぇだろうな?」
「……そんなことはありませんよ」
目を眇めて睨むマティアスを、キッと睨み返す。
「俺はてめぇにお情けしてやってると言ったはずだ。それを忘れてまた今度ドジってみろ」
ククはギリッと歯を食いしばった。
「殺すぞ」
マティアスは地の底から響いてくるような恐ろしい声色で恫喝した。
マティアスが手を離すと、ククの頭ががくんと垂れ下がる。床に顎を打った。
「行くぞ、ボードリヤールとの取引についての話し合いだ」
マティアスがローザを促しながら、部屋をのっしのっしと出ていく。ローザは床に這いつくばるククをチラリと一瞥すると、失笑しながら部屋を後にした。辺りは静寂に包まれる。
ククは身体に力を込め、なんとか上体を起こすと、木造の床をドンと拳で叩いた。
……屈辱だ。なんという屈辱! ヘマをやらかしてこのような屈辱を受ける自分が、惨めで堪らない! ククの目から大粒の涙が溢れた。
ヘマというのは、先程のボードリヤールとの話し合いの一幕のことではない。もっと前の話だ。
ククは溢れる涙を拭いながら、床に座り込み、そのことを思い返した。
ククには目的があり、長い間旅をしていた。
その目的とは、とあるペンダントを探しだすことなのだが、それを見つけるために既に7、8年は旅を続けていた。
そのペンダントは希少な宝石が嵌め込まれているため、もしかしたらとデパルト国内中の宝石商をあちこちと探し回った。それでも見つからない焦りから、次第にお宝を抱えてそうな野盗、山賊の類にも接触するようになった。ある時は直接対話し、ある時は根城に侵入し、ある時はやむを得ず戦いながらも、目的のペンダントを探し求め、歩き続けた。
半年ほど前だったか。
そのような生活に疲れを感じ始め、しばらく前から薄々と感じていた「もう国内にはないんじゃないのか?」という疑念に屈服し、国外へ出ることを考え始めていた。
しかしそれはククにとって恐ろしい疑念だった。国外? 一体それはどの国外?
もしかして私はペンダントを求め、延々と世界中を彷徨い歩かなくてはならないのか?
終わりの見えない、途方も無い旅路に思えた。空にかかる満天の星を数えるほうがまだ楽なのではないだろうか?
そのことを考え出すと恐ろしい虚脱感に見舞われた。だが、諦めるという選択肢だけは絶対に無かった。そのペンダントはなんとしてでも見つけ出さなければならない、大事なものだった。
……次で最後にしよう。次でハズレを引いたら国内には見切りをつけ、国外に探しに出よう。
そう思い、目を付けたのがマティアス一味だった。……そしてそれこそがククの言うのっぴきならない『ヘマ』だった。
ククはヴィース市までやってきた後、マティアス一味について独自に調べを進めた。街の噂話や新聞記事、果ては年端も行かぬ少年の情報屋などから情報を仕込んだ。ボードリヤール家という宝石商で身を立てた家と、マティアス一味の繋がりを知り、いよいよ期待が膨らんだ。そうして、自分では準備を万端に整えたつもりでマティアス一味の拠点の一つに乗り込んだ。
そうやって慢心によって乗り込んだ先で、ローザの『ギフト』に捕まってしまった。
ククは床に座り込みながら襟元を引き伸ばし、自分の胸元に視線を落とした。
そこには胸元から背中へと、ぐるりとローザの操る蛇が取り巻いていた。入れ墨のように平べったい蛇だが、その鱗の気味悪い感触は無くなる気配がない。
この蛇はローザによって付けられた枷だ。一味への反逆、あるいは逃走。それに限らず、どんな些細なことであっても、ローザが気に入らなければこの蛇はすぐにククの首を締め上げる。
それだけではなく、先程のボードリヤールとの密談の時のように、必要とあれば肌からその鎌首をもたげ、首に喰らいつくことも出来る。
自力で引き剥がすことも叶わない。それは完璧な枷だった。
ローザを暗殺してしまえばいいのではないか? それを考え実行に移した時もあったが、この蛇、簡単な命令くらいなら与えることが出来るらしく、ローザの寝室に近づくだけで首を締め上げられた。
その間に例のペンダントがありはしないかと、マティアス一味の拠点を調べてみたが、それも徒労に終わった。一味に囚われた上に、目当ての物も無い。虚しい結果に終わってしまった。
そういう2ヶ月を過ごすと、もはや抵抗の意志すら放棄し始めた。
先のように虐げられた際には気丈に睨み返したり、言い返したりもする。だがそれだけ。
もはや反逆する意志も無ければ、逃走する意志もない。心の底には常に無力感があった。
そのうちにこう考えるようになった。
エルフとヒトの寿命換算で言えば、ヒトの3年が、エルフのおおよそ1年。
マティアスの奴らは、30代くらい? それとももうちょっと若い?
エルフにとってヒトの年齢は、見た目だけで判断するのが難しい。だがきっと、後30~40年もすれば奴らも引退するだろう。あるいはそれよりも先にくたばってくれるか。
もしそうならば、エルフの年齢換算で10歳分くらいの時間を耐え忍べば、私もこの苦しみから解放されるのではないだろうか。
そうだ、そのとおりだ! エルフはヒトよりも長く生きられる。ならばその利点を生かして、奴らの30年を、私のエルフ的10年で耐え忍んでやればいい! そうして本来の目的であるペンダントを探すため、一路国外へと旅立つのだ。
エルフ的10年で。
そう、10年――。
10年!!
ククは再び床を拳で強く叩いた。
「バカ野郎がっ!!」
悔しさにククは叫び声を上げ、再び涙が溢れだした。
そう、私はとんだバカ野郎だ。何がエルフ的10年? それはあまりにも詭弁だ。寿命の長短など関係なく、事実30~40年の月日は過ぎていく。
そして、その30~40年……あの子はきっと、一人ぼっちで。
こうやって私が屈辱感に塗れ嗚咽する今も、あの子は――。
「ルル……」
ああ……思わず名前を呟いてしまった。言葉に出して、認識してしまった。
床に突っ伏すようにうずくまった。私は叫んでいるようだった。涙をこぼしているようだった。全てのことを上手く認識できない。
誰かに助けて欲しかった。希望が欲しかった。
先程のボードリヤールとの密談で、あの追走劇を繰り広げた黒髪の青年の姿を認めた。そしてそんなわけ無いと知りながらもつい、こう思ってしまった。
彼は私を助けに来てくれたのではないか……?
気がつくと咄嗟に嘘を吐いて彼を逃した。一筋の希望を抱かずにいられなかった。
……その希望がまやかしでも、それを抱かずにはいられなかった。
目の前に血だらけの手が見える。思わず手に取ろうとしてようやく、それが床を殴りつけた自分の手であることを知った。
「誰か……」
「誰でもいいから助けて……」
嗚咽を止めることが出来なかった。
きっと私は、絶望している。
ククの能力については
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・作者twitter
https://twitter.com/hiro_utamaru2
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