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そして、2週間が過ぎた。

今日は遂に、ルーク・フォジャー様が家に来る日だ。

この日のために、いつも以上にダイエットや美容に気を使ってきた私は、152cm68Kgという悲惨な数字から、154cm59Kgまで体重を減らすこと、身長も伸ばすことに成功した。

私は新しく新調した白のワンピースと、丁寧に結いた髪の毛をもう一度確認して、ルーク・フォジャー様が来るのを待った。


『凄い張り切ってるな』


ハルが話しかけてくる。

彼女も少しワクワクしているようだ。


「そりゃ、醜い姿は見せられないですし。体重も減りましたし、身長も少し伸びましたし、高めの美容品も使いましたし。私は準備万満ですわ」


すると、コンコンコンとドアを3回ノックする音が聞こえる。

私は、深呼吸をしてドアを開けた。


「えっと、あの今日はよろ…」

「あのさ、帰っていい?」


彼は私を見るなり、軽蔑した顔で言った。

私が何回も練習した言葉を遮って。


「はい?」


思わず聞き返してしまった。

彼は面倒くさそうに私見下ろして言う。


「だってさ、あんな目深にフード被ってたら可愛い子だって思わない?それなのに、出てきたのはこんなブスだよ。あーあ、心配して損した」

「………」


私は怒りでどうにかなりそうだった。

彼はそんな私の気も知らずに続ける。


「今日はさ、適当にここでゆっくりして帰るから。って、こんなボロボロの家じゃゆっくりするどころか、目が痛いけどな」


はははっと、笑って彼は私をキツイ目で見下ろしてきた。


「どうせお前も俺に媚びるんだろ?しかも、ブスに媚びられるなんて俺だって嫌だよ。そんなわけだから、今後一切俺の目の前に現れないでね?」


家畜を見るような目で私を見下ろす彼…私はドアを足で蹴って占める。

この行動に彼は少し驚いているようだ。

私は彼のネクタイを掴んで言った。


「ふざけんじゃねぇよ!誰がお前媚びるかアホが、こんなクソみたいな頭狂ってる男に媚びる女なんぞ、余程の馬鹿でない限り居ないと断言できるね!」


追い込まれていく彼は動揺して、「えっ…ちょ…」と言っているが私はまた、キツくネクタイを握り締めて続ける。


「私がブスだって?え?そんなこと知ってますから、言わなくていいですよ。そこまで私も馬鹿じゃないのでね。それに家庭教師をさせろと、要望…いや圧力をかけて命令してきたのはそちらですよねぇ?!どうせヤリたい盛りの男の子だから、可愛かったら襲うつもりだったんだろ?え?帰りたい?勝手に帰れや、クソ男!」


私は口から零れる言葉をどんどん言っていく。

辛いよ、悔しいよ、悲しいよ。

この努力はまだ花を咲かせないのだと、まだ蕾なのだと実感させられる。

彼は何も言わなくなった。


「それに、勝手に心配したのはお前だろうが!損した?知らねぇよ、勝手に1人で損してろや!お前はな、こんなクソブスの為に1時間も時間を使ってド田舎にやってきたんだよ。どうだ?この1時間で可愛い女の子を1回襲えるくらいの、時間を使ったんだぞ?こんな無駄な時間を過ごすなら、来なきゃ良かったと思ってるよな?こっちも、こんなクソ野郎の為に高い金使って服も、美容品も買わなきゃ良かったわ!」

「………」


遂には、俯いてしまった。

そんなことは、知らない。

こうなったら、言いたいこと全部言ってやる。


「それに、私の家を馬鹿にするな!民の税金を湯水のように使って、豪遊してるお前には馬鹿にされたくないね!何が人気者だよ、どこのどいつが言った噂か知らないが、どうせお前らと同類なんだろ?その同類とズッコンバッコンヤッてろや!!」


私は1度深呼吸をして、彼に言った。


「二度と私の前に顔を見せるな、クソ野郎!!」


私は最後に彼の顔にビンタをかまして、ドアを開けて蹴って追い出す。

ルーク・フォジャー様は、叩かれた頬に手をやって呆然と私を見つめていた。

私はそんな彼を軽蔑した目で見下して、ドアを閉めた。



その後、私はあんなことをしてしまって訴えられるかと危惧していたが、特に何も起こらず、2ヶ月が過ぎた。

私はあの後、怒りを燃料にしてより一層ダイエットに時間を費やした。

そして、身長は160cm56Kgになれて、ダイエットは成功。

また、美容にも気を使いあの男という目標が無くなってからも、その美容品を使い続けた。

結果、恐らくどこからどう見ても平凡な貴族令嬢となれたのだ。

今日は私の誕生日であり、社交界に初めて出れる日である。

16歳…それは夢の年齢である。

この年齢になると、社交界に出れるようになり、結婚相手を探す時期にもなる。

私はこの日のために、ドレスも新調して言葉遣いも直した。

そして今私は社交界に来て、壁の花になっている。

なぜなら、結婚相手なぞ特に興味もないし、このキラキラとした空間が嫌で仕方ないからだ。


『おい〜、折角の初めての社交界なのに壁にもたれかかってどうするんだよ』


いいのよ、私は平凡令嬢。

貧乏臭い私が、こんな煌びやかな所にいたら性根が腐ってしまうわ。


私の考え方で、1つ変わったことがある。

お金を持っている貴族たちに対する見方だ。

あれ以来、私は金持ちというのが信じられなくなってしまった。

元々いいイメージはなかったけれど、あの男がきっかけでどうしても軽蔑した目でしかみられなくなってしまったのだ。

今回の社交界だって、適当にお呼ばれしただけで、次回からは呼ばれなくなるだろう。

今日は適当にやり過ごして行こう。


『まあ、綺麗になれたしいいんじゃないか?私は、もう満足だなぁ…』


ハルも私と少し似た考えを持っているようだ。

やはり、あの男がトリガーだったのだろう。

そして、15分程過ぎて社交ダンスが始まった。

特に興味もないけれど、何もすることがないのでボーッとそれを見つめていると、1人の男性に声をかけられた。


「先程から、あなたの事が気になっておりました…。よければ、踊っていただけますか?」


その男性は、私の手を取って言う。

だが、私はこう言った。


「いいえ、丁重にお断り致しますわ」


ソラ・ローリエは気づいていない。

彼女は、この約3ヶ月でとてつもなく美しい少女に変貌しており、そのおかげで先程から色々な貴族から視線を集めていること。

そして、高嶺の花となっている彼女に話しかけた男は、攻略対象ということ。

そして…この場にルーク・フォジャーがいるということに…。


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