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手続きを済ませ、30分くらい待った後やっと検査を開始することができた。

私は検査所から借りた運動用の服を着て、大きなドーム型の芝生の上に立った。


「では、これから適正検査を開始致します。真ん中の魔法陣の真ん中に入ってください」


担当の人の指示通りに私は動く。

これが王国が作っているという魔道具か…。

魔法陣だということに少し驚く。


「では今から詠唱を始めますので、目を閉じてお待ちください」


担当の人はそう一言告げると、詠唱を始めた。

私はギュッと目を瞑る。

詠唱が終わったのだろうか、謎の浮遊感に襲われる。

私は恐る恐る目を開けると、そこは検査所ではなく謎の白い空間だった。


「ここは何処?」


私はわけも分からず問う。

すると、ふわりと上から誰かが舞い降りてきた。


「我は…水の上級精霊ジュノン…。我を呼び出したのはお前か?」


舞い降りてきたのは、美しい羽衣を羽織った肌の青い精霊だった。

彼女は私を見るとキリッとした目付きで言った。


「そうです!私です!あなたを呼び出したのは…」


少し不安になってしまって、語尾は小さいか細い声になってしまった。


「ならば…我に力を見せてみよ!」


彼女はカッと目を見開くと、いきなり水魔法を使ってきた。

咄嗟に避ける。

最近運動をしていた成果なのか、瞬発力などが上がった気がする。

私は、まだ精霊を持っていないため攻撃の仕方を知らない。


「ふっ…なかなかやるな…ならこれならどうだ!」


彼女は水の槍を床に突きつける。

その槍は瞬時に固まり、氷となった。


「み、水魔法って応用したら氷にもなるの?!」


私は焦って槍に当たらないように、とにかく避ける。

だが、焦りすぎたか腕に当たり血が出てしまう。


「ふっ…ここまで来れるとはなかなか大したものだな。この槍の攻撃で致命傷を負わなかったのは、お前が初めてだ」


水の精霊はクツクツと笑って、攻撃をする体制を辞めた。

すると、床に刺さっていた槍はそれと共に消滅した。


「そ、そうなのね…」


なんとも言えない気持ちになる。

うーん、別に大したものと言われても嬉しい訳でもないし、単なるまぐれとしか思えない。

私は瓶底メガネをクイッとあげて、ぺこりと頭を下げた。


「ありがとうございました、では失礼します」


そういって、この異空間からどうにかして出ようとすると、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と、言われ振り返る。


「いやいや、なんで何事も無かったかのように帰るんだ?契約しないのか?」

「えっ?」

「いや、えっ?じゃないだろ」


いやいや、私が契約出来るだなんてない。

こんな対して取り柄のない私が、水の上級精霊と契約だなんて、1億年早いと思う。


「我は、ここまで我に対抗してきた者を初めて見たのだ。そのような者に興味を持つのは当たり前だと思わないかい?」


水の精霊は相変わらず表情は険しいものの、先程よりも少しだけ近寄りやすい雰囲気を持っていた。

確かに、水の精霊と契約すれば…洗濯やお風呂の水道費が無くなるし…案外いい事尽くしな気がする。


「わかったわ…私あなたと契約する」

「それはとても嬉しいのだが、契約理由がとても高貴な理由でない気がするのは我だけだろうか…」


精霊は少し苦笑いをしつつ、私に近寄ってきて、手を差し出す。


「我と手を合わせるがよい。そして、契約が完了する」


私は差し出した手に優しく触れた。

その瞬間、私の中で何かが変わった気がした。

かなり強い魔力だ。

これなら、水道費がとても浮きそうな予感がするわ!


「ふぅ…これで契約完了だ。そういえば、お主の名前を聞いていなかったな」


今更と言った感じに、水の精霊は私に言う。

というか、どんなに強い精霊でもハルの存在は認知出来ないのだな…と思う。

私からしてみれば、ヒシヒシと伝わるこの彼女の高揚感に少し呆れたくなってしまう。


「私はソラ・ローリエ。これからよろしくお願いね、ジュノンさん」


私はにっこりと笑って、目の前の彼女に手を差し出した。

握手だ。精霊は握手を知っているだろうか。

ジュノンさんは、私の差し伸べた手を両手でしっかりと握りしめ衝撃の一言を言った。


「ああ、こちらこそよろしく。先に言っておくが、我は男と言うことを忘れずにいてくれ」


『「えっ??」』


精霊の適正検査所に私(と、ハル)の声が響いた。

ジュノン…はゲラゲラと笑いながらスッと、私の目の前から姿を消したのだった。



『それにしても、ジュノンが男だとはなぁ…』


ハルがしみじみと言う。

今は馬車に乗って、帰路を辿っている。

辺りは夕焼けで真っ赤に染まっている。

久しぶりにこのような、綺麗な景色を眺めた気がする。


そうね…私も女性として彼と向き合っていたから少し驚きが隠せないわ。


『だな…それにしても今日は私も疲れたよ。やはり、外に出るのはいいものでは無いな。ニートしてきたことが身に染みてるのかもな』


そういって、ゲラゲラと笑う彼女を今日は注意する気になれなかった。

やはり、水の精霊と契約できたから少し自分でも上機嫌なのがわかる。

ルンルンとした気分で、ハルと話しながら帰路を辿る。


そして、1時間ほど経ち、辺りが真っ暗になった時に家に着いた私は「ただいま!!」と、元気な声で言おうとドアを開けた。

その瞬間、


「お嬢様!!大変でございます!」

「ソラ!大変だ、今すぐ父の書斎へ来てくれ!」


慌てた様子で玄関の前で待ってたうちの執事と、兄のテオは私を見るなり父の書斎へ引っ張っていく。


「えっ、何どうかしたの?!」


私は執事にがっしりと掴まれた手を振りほどこうとするが、老人にも関わらず強い握力は、私の腕をなかなか離してはくれない。

兄さんは、焦り半分、興奮半分と言った表情で私に言った。


「お、お前宛に手紙が届いたんだ。しかも、あのルーク・フォジャーから!!」


『「はいぃぃ?!」』


本日2回目のハルとのハモリが起きた。





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