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「お、お嬢様!大丈夫ですか!」


その瞬間、私の意識は動転した。

グルグルと頭の中が、回り見えてくるのは、恐らく前世の私の人生。

リストラをされて、家にひきこもっている私。

『薔薇と楽園』という乙女ゲームを無心でしている私。

ゴミ屋敷の中、孤独死して言った私。

グルグルと、何度もその人生を頭の中でループされ続け、私は倒れた。



目が覚めると、ここは自室だった。

どうやら、使用人が運んでくれたらしい。

ベッドから降りて、私は勉強机の前に座る。

未だに信じられない。だが、これは本当なのか?


『いやいや、これガチよ?』


すると頭の中で聞き覚えのあるような声がする。


「だ、誰!!」


私は立ち上がって辺りを見渡すが、誰もいない。


『私は貴方。貴方は私。前世の私と、今世の貴方という違いはあるけどね。簡単に言うと、ひとつの体に2人分の意識がある感じかな。けど、その体は貴方のもの。あくまでも、私は意識体として転生した私の体にいるだけ』


言っている意味がわからない。

私が貴方で、貴方が私?

つまり、私は今の自分の記憶と、死ぬまでの前世の記憶を持ち合わせていると言うの?


『簡単に言うとそうだね。私の体が転生したが、私は意識体として残り、今世の新しい記憶と共に、この記憶を植え付けられた。今まで目覚めなかった理由は分からないけれど』


ってことは、この体は前世の貴方の体を修復し、転生させたものだと。

この今の私は、新しく出来たもので、元々の記憶やこの体は貴方のものだと言うのね。


『まぁ。そんな感じ。今の私と呼ばれ方は違うからね。せっかくだし、自己紹介しなくちゃね。今世の私にするって、なかなか面白い話だけどね』


そうね、私もあなたと同じに思っているわ。

今世の私の名前はソラ=ローリエ。

子爵の地位を預かっている、貧乏貴族よ。


『へぇ!私の体って、そんなとこに転生したのね。いいのか、悪いのか分からないけれど、とっても面白そう。前世の私の名前…まあこの意識体の名前は、花芽陽(ハナメハル)。まあ、よろしくね』


花芽陽?なら、私はハルって呼ぶわ。

私のことは、ソラって呼んでね。


今更ながら、この意識体…ハルは私が考えていることを、認識して話していることに気づく。

ってことは、普段私が考えていることも分かってしまうのだろうか。

例え前世の私だとしてもそれは少し嫌な気がする。


『あ、無理に貴方の気持ちを悟ったりはしないから安心して?話したい時は、話しかければすぐに目を覚ますから』


どうやら、彼女は普段は眠っているが呼べば起きるらしい。

つまり、普段は今世の自分として生きていけばいいのね。


そんなことを考えていると3回ノックが聞こえて、ガチャリとドアを開く音がして、メイドのサラン・トゥニカが入ってくる。

サランは、とても心配そうにして私に駆け寄る。


「お嬢様!!起き上がっては行けません」


必死にベッドに戻そうとするサランを制してから、私はソファを進めて、彼女と向かい合わせになって座る。


「大丈夫よ。少し貧血になっただけだと思うの」


なるべく不自然にならないように、ニッコリと笑顔を作る。

サランはそれでも、不服そうにするがあんなことを話せる訳でもない。


『おっ、誰か入ってきたと思えばサポートキャラのサラン・トゥニカじゃないの。いやー、この目で拝めるとは…』


ハルがいきなり語りかけてくる。

それにしても、サポートキャラって何?

って、そんなことを考えている暇はなーい!!

ちょっと、今は辞めてよね。見てるのはいいけど、少し話さないでくれると助かるわ。


『りょーかい。邪魔はしない』


ハルを落ち着かせて、私はもう一度サランの方に意識を戻す。

けれど、本当に彼女は心配そうに私を見つめていた。

自分の仕事もあると言うのに、合間を縫って来てくれたのだろう。


「サラン、心配しなくていいわ。私は見た目のとおり、こんなにピンピンしているから、早く自分の仕事場に戻って」


私はなるべくキツイ言い方にならないように、言う。

「けど…」と、サランは言っていたが私は、それを止めて、ドアの前まで引っ張る。


「ほら、行って行って!私も、服装を整えたらすぐに向かうわ」


私は貧乏貴族だ。

使用人もサランともう1人の執事がいるのみで、他の者は誰もない。

だから、家族総出で使用人と共に家の掃除や、家事をするのだ。

こんなことで、倒れていては行けない。


「わかりました…ですが、無理はなさらないでくださいよ?」


サランは、ドアを開けて出る。閉まるまで、何度もチラチラとこっちを見てきていたのは、見なかったことにする。

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