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リファックタリング  作者: 青倉真輝矢
7/8

第7話 絶望

「将軍…レパル…スドルガン…」


 嫌な予感がする。


「セリシア…あのモンスターの立ち回りは分かるか?」


 記憶を探っているようだ。

 ついこの前までやっていたゲームの中に目の前のボスモンスターがいたかどうか。

 少なくとも俺は知らない。

 あのゲームのことならなんでも知っているようなセリシアがここまで考えているところを見ると…


「…あんなボス見たことない」


 無情にも俺の考えと一致する。


「やっぱりか…」

「てことはあのボスの弱点も攻撃パターンも分からないってこと!?」


 カーリィの言う通りだ。

 残念ながらこの世界の攻略サイトはない。

 一から攻撃パターンを覚え、弱点を見つけ、攻撃することをボス相手にしなければならない。


「いや、弱点なら予想はできるよ」


 え?セリシア今なんて言った?


「弱点が分かると言ったんだよ」


 心の声が漏れていたようだ。


「で、でもどうやって?ヤツはゲーム内に存在しないんだろ?」

「見た目だよ。あのボスモンスターの見た目から弱点を判断するんだ」


 な、なるほど…

 さすが、セリシアだ…

 あいつの見た目というと、どこか西洋の騎士っぽい…というより騎士そのものだけど。


「魔法攻撃が効くんじゃないかと思う。あくまでも予想だけどね」

「効かなくて弱点が違ったら一から探すってことなのね?」

「ヨッシャ!じゃあ、俺が先頭で守るからその間に頼んだぞ!」

「俺は?」

「イールドは観戦でもしてたら?暇でしょ」


 ひどいっ!俺だけ扱いひどいっ!


「じゃあ、行kーー⁉︎」


 それはほんの一瞬だった。

 ゴレゴンが一歩踏み出した瞬間に将軍:レパルが消え、ゴレゴンは俺たちがこの部屋に入ってきた入り口近くの壁に叩きつけられていた。

 なんとか盾でレパルの槍を防いでいたが、ゴレゴンの防御力をもってしても身動きが取れないようだった。


「な、なんてスピードと攻撃力…」

「あんなの…勝てるわけないわよ…」


 俺も同じ意見でその場に立ち尽くしていた。

 盾にヒビが入った気がした。

 そうだ、このまま何もしなかったらループに入ってしまう。


「カーリィ!ゴレゴンに回復と防御強化を!

 セリシアは魔法攻撃の準備!」

「わ、わかったわ!」

「あ、ああ、そうだったね!」


 よし、これでゴレゴンは大丈夫だ。


「メギ!」


 セリシアの声と同時に闇属性の魔力がレパルに向かって行く。


「クッ…大防御!」


 それと同時にゴレゴンもシールドを展開する。

 しかし…


「き、効かない…」

「あいつ…無傷だぞ」

「盾で…防御すらしなかったわ…」

「おいおいおいおい、嘘だろぅ」


 これで一から探す作戦になってしまったな。

 予想以上に厳しい戦いになりそうだ。


「ゴレゴン!斧で攻撃できるか?」

「無理に決まってんだろ!防御するので手一杯なんだよ!」


 クソッ…何か手はないのか…

 ……あっ、俺がいるわ。

 カーリィの言葉通り観戦してたわ。

 となりのセリシアに小声で作戦を伝える。


「…了解。ゴレゴンには伝えるの?」

「いや、あいつなら分かってくれるはずだ。」

「分かってなかったらイールドが代わりにしてね」

「え?あ、はい」


 ボス部屋に入って初めて武器を構える。

 セリシアは攻撃強化と素早さ強化を2回ずつ俺に唱え、準備は完了した。

 そして、俺はレパルに向かって全力で走った。

 数秒でレパルの後ろに着く。


「ファイア!ソードおおぉぉ!」


 両手の刀で同時にファイアソードで攻撃する。


「!?」


 レパルはゴレゴンへの攻撃をやめ、俺の攻撃を盾で防御する。

 悔しいが、レベルの差か、盾に触れた瞬間に弾き飛ばされた。

 だが、これだけ時間を稼げば充分だ。


「いけぇぇぇぇ!ゴレゴオオン!」

「ヨッシャアアアァァ!グレートアックス!」


 俺への攻撃で後ろに無防備なレパルにゴレゴンの斧が振り落とされる。

 …が


「え?」


 ほんの一瞬だった。

 レパルは槍を振ったあとの構えをしており、ゴレゴンは斧を振り下ろした構えをしていた。

 しかし、ゴレゴンの手に斧は無かった。

 少し離れたボス部屋の壁に斧は刺さっていた。

 槍で斧を弾き飛ばしたようだった。


 そして、今度はレパルが無防備なゴレゴンに槍で突き、ゴレゴンは再び壁に叩きつけられた。

 ゴレゴンの守備力でなんとか命はあるようだが、気を失ったようだ。


「こんなの…勝ち目ないわよ…」


 カーリィが座り込む。

 カーリィだけではない。

 ここにいる全員が同じ考えだっただろう。


「何か…勝つ方法は…」


 セリシアは何も考えず、俺に攻撃強化と素早さ強化をかけ続けていた。


 レパルはゆっくりと俺の方へ歩いてくる。

 俺も吹き飛ばされた後の格好なので、すぐに動くことはできないだろう。

 だが、動く気は起きなかった。


 ここで負ける。


 ここで死ぬ。


 これでループに入る。


 そうだ…俺はここで死んでもループするじゃないか。


 クソッ、今回はうまく行けそうだったじゃないか。

 普通ループ物の話なら選択肢を間違えて死ぬだろ。

 俺の場合強敵にあって負けて死んでるじゃないか。


 レパルが槍を振り上げる。


 このループで能力者の情報を集めるんじゃないのか。

 まだだ、まだだ、まだだ、まだだ、まだだ、まだだ…


「…まだだ!」


 レパルが槍を振り下ろした。

 それだけで、地面に穴が空いている。

 俺は間一髪でかわすことができた。

 というより、スピードがかなり上がっていた。


「(そういえばセリシアがずっと攻撃強化と素早さ強化をかけ続けていたな)」


 すぐにレパルの背後を取る。


 ゴレゴンが攻撃した時を思い出した。

 レパルは背後への攻撃の時、右から槍を振っていた。

 すぐに防御できるように右手の刀で槍の攻撃を受け止める構えをする。

 左手の刀にはファイアソードを発動させ、レパルの足を狙って斬りつける。


「な…」


 しかし、左手の刀は折れてしまった。


 すぐにレパルの攻撃が来る。

 予想通り右から槍を振ってくる。

 俺はその攻撃をジャンプして避け、右手の刀でファイアソードを発動させる。


「死ねえええぇぇぇ!」


 そのまま刀を振り下ろすが…


「クソ…が…」


 またしても折れてしまった。

 いや、こいつ硬すぎだろ。


 これこそ絶望じゃないか。


 俺たちの攻撃は何一つ通らない。


 こんなやつに勝ち目はないんだ。


 レパルが槍で俺を突こうとしているのが目に入る。


 ああ、結局負けるのか。


 ループするんだな。


 だが、後悔はない。

 こんな勝ち目の無いやつがいる。

 それが分かれば今後のループに役にたつだろう。


 セリシアは俺の名前を叫んでいる。

 カーリィは座り込んで泣きながら見ている。

 ゴレゴンは壁に叩きつけられたままだ。


 ここで俺の意識は途切れた。

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