第4話 国王の命令
ハンターの外見はまさに盗賊と言った感じだ。
どうやら俺たちを捕まえれなかったおかげで報酬がもらえないらしい。
ハンターに報酬を払うやつが誰なのか気になったので後をつけていたわけだが…
「お前らも災難だったなぁ…」
「いえいえ、能力者が全て悪いんですよ」
いつのまにかハンターたちから情報を得る方針になっていた。
ゴレゴンが急に話しかけて情報を得ようとしたのだ。
ちなみにどういう経緯で取り入ったかというと…
「すみません、先程様子を見ていたところ誰かを捕まえようとしていたみたいなんですけど」
「ああ?お前誰だ」
基本ゴレゴンとハンターのリーダーしか話してないので、ゴレゴンの会話術を見てみましょう。
ちなみに偶然なんだが、ハンターのリーダーの名前はハンターだった。
「この街のヤツじゃねぇな?ここのヤツらは俺らに話しかけるのを避けているからなぁ」
「お察しのとおり、俺たちはセントラルシュタイン南東の村から来た旅人です」
「で?俺らに何の用だ」
「実は1週間前に村に能力者が来て村の人たちを殺し回ったんです。俺たちはその復讐のため国王にお力を貸してもらいたくて来ました」
「ほぅ…」
もちろん全て作り話だ。
後で聞いた話だが、この世界で能力者は敵だという話をすれば話を聞いてくれるはずだと言っていたな。
ゴレゴンの想定通りハンターの目つきが変わったぞ。
「それで俺たちに近づいてきた理由はなんだ?代わりに復讐なんて面倒なことはしねぇからな」
「分かっています。そんなことは頼みません。あなたたちが能力者を捕まえようとしていたのであれば、俺たちも協力したいんです」
「あぁ、そういうことか。残念だが能力者を捕まえようとはしてねぇ」
「え?では何を?」
「能力者を殺そうとしていたんだよ」
なるほどな。前回俺たちの話を聞こうともせずいきなり殺してきたのは最初から殺すつもりだったからか。
「これは雇われ主からの依頼だ。能力者を生かさず殺せ、ってな」
「たしかに俺たちも殺したいほど憎いんですが、何故殺すのですか?」
「その辺の話は見ず知らずのお前らにはできねぇ。どうしてもというのなら…雇われ主のところまでついて来い」
…という流れで一緒に行くことになったわけだ。
ちなみに俺の予想だが、ハンターは城に向かっているように見える。
ということは雇われ主って…
城門についた。
近くから見るとかなりでかい。
そして、やはりハンターは城に来たな。
ハンターについていくと、国王と思しき人物が椅子に座っていた。
「今回の結果は?」
「申し訳ね…ありません。今日も能力者みてぇな…思われる人物はいませんでした。途中で知り合ったこいつらは能力者によって同じ村の人を虐殺された被害者です」
「フム…ハンターよ。お前は下がってよい」
「はっ」
さぁ、ここで情報を引き出すんだ…ゴレゴン。
「それでお主らは何をしにワシに会いにきたのだ」
「実は…」
ここでさっきハンターにした偽物語を国王に披露し、能力者殺しの理由と協力を求めた。
同じ世界の人を敵に回すことになるが、情報を集めるには仕方ない。
「良かろう。能力者が出現したことの脅威を話そう。そして、協力せよ」
国王の話は長く途中で何度か意識が飛んだので、後でゴレゴンから聞いた話をまとめる。
能力者はこの世界に23人いるらしい。
ん?マルチ・オンラインは4人でするゲームだから人数合わない気が…
話を戻すが、どうやらその能力者たちは、各地でモンスターを狩り尽くし、生態系を崩しながら集結しようとしているらしい。
能力者が揃うとこの世界を滅ぼすほどの力を手に入れる可能性があるが、能力者一つ一つのパーティが強すぎて捕獲は不可能と判断し、見つけ次第殺すことを命令したらしい。
世界の中心であるこの国がそういう決断をしたことで、残りの国もその方針に切り替え、能力者を殺そうとしているという。
ナイトガナンだけが敵対し、能力者を集めて世界を滅ぼすと言っているとか。
こうした経緯を踏まえて俺たちには各地の能力者を殺してくるよう命じた。
ちなみに確認しているうちでは各地に4人ずつ、つまり一つのパーティがいるらしい。
「どうする、イールド?」
この命令は相談して後日決めると保留にしている。
俺たちは用意された部屋で会議をしていた。
「俺たちが能力者ということを隠すのは確定だ。問題は他の能力者を殺すってことなんだけど…」
「いくらなんでも殺すまでしなくてもよくない?」
「でも、おそらく断ったら処刑されるだろうね。誰にも知られないように地下牢とかで」
「セリシアあのね…」
「考えられない話ではないよ」
「まぁそうだけど…」
「ってことは命令を受けるのも確定なのか?」
できれば避けたい命令なんだが…
「でも、できれば殺したくはない。殺さずにどこかに保護って形で隠すのではダメかな?」
「でもイールド、隠す場所はあるの?」
「うっ、それは…」
考えてなかった。
さっきから最悪の決断が頭の片隅に出てきている。
ループすること前提で能力者を殺し、この世界で能力者が生き残れる可能性を探るという計画が。
だが、俺の決断は決まった。
「隠す場所はあとで探す。とりあえず命令は受ける。能力者と接触して保護するか協力してもらおう」
「それがイールドの決断なら文句は言わねぇよ」
「そうね、私も殺したくないし」
「このことは国王には話さない方がいいよ。命令に従うってだけで」
「ああ、もちろんだ」
こうして俺たちの方針は決まった。
そして、翌日
「…して、昨日話した件については決まったかな?」
「はい、命令を有り難く受けたいと思います」
「良い決断をした。それではそなたらに支援金を支給しよう」
俺たちはその金で上級者向けの武器と防具を買い、その他薬などを買いそろえて2日後に旅立った。
不本意ではあるが、国王の命令に従うという形で能力者の探査と保護する場所を探す旅に出た。