第3話 状況確認
「!?」
どうやらループしてしまったようだ。
「ここは…異世界?」
「違うだろ、ゲームの中じゃね?」
「…確かにさっきまでやってたゲームの中みたいではある」
俺が最初に言ったセリフをカーリィが発していた。
「ここがゲームの中ならメニューバーはどこだ?カーリィ見つけたか?」
「えっ?えーっと…ないね。セリシアは分かる?」
「上にないなら下とかかな?イールドは?」
おっと、ここで俺に回ってくるのか。
まぁ、知ってることだから話すけど。
「さっき見つけたんだが、右上にあったぞ」
さも今見つけたように言っておく。
「本当だ!イールド流石だな!」
なんだろう…セリシアが睨んでる気がする。
セリシアが1番ハマってたゲームだし、最初に見つけたかったんだろう。
ここで3人は色々確認する作業に入ったので、俺は前回のループの原因と対策を考えよう。
まず装備だが、服は布の服に着替えたほうが良さそうだ。
前回は服が目立って話しかけてきたのもあるだろうからな。
それと、この世界では能力は隠しておいたほうがいいだろう。
理由は分からなかったが、能力者というだけで殺しにきたな…
あいつらのレベルはかなり高かったと思う。
ループに入る直前に見えた数字は…9だったかな。
レベル9もありえるが、あの時の俺たちのレベルは10だったことと、レベル差があるにしても素早さが桁違いだったことを考えると、少なくとも29以上ではある。
次に対策だが…
「おい、イールド!お前の番だぞ」
「え?」
なんの話だったのか。
前回を考えると能力か今後の行動か?
「イールドの能力の説明。みんな話してあとはイールドだけよ?」
カーリィに怒られてしまった。
「あぁ、俺の能力の説明ね。『この世界に来た時に強制的に戻る。発動条件は、この能力所持者が死ぬことと、この能力をパーティメンバー以外の他者に話すことである。プレイヤーレベル・スキルレベルはリセットされるが、スキルポイントはリセットされない。また、獲得した一部の道具は持ち越せる』」
「なるほどな。だが、俺たちと違ってこのゲーム攻略自体には関係ないんだな」
「分からないわよ。ループしないとクリアできないっていう糞ゲーかも」
ここまでは前回と同じだな。
…ということは次話すのはセリシアか。
「…そういうことか」
「どうしたの?」
「ループの発動条件…能力所持者が死ぬということは…この世界…おそらくゲームではないようだね」
「カーリィ、魔法のスキルのどこかに蘇生はあるか?」
前回の発言の全てをゴレゴンが話していくな。
この後の展開も分かりきっているので、今後の行動について考えよう。
まず、セントラルシュタインには行かないという選択肢があるが、これはダメだ。
少なくとも何故能力者というだけで殺されるのか理由を知るためにセントラルシュタインには行くべきだろうな。
その際…いや、今からでも布の服に着替えるべきだ。
と、ここまで考え、何も考えずに道具のリストを見ると…
「前回入手した道具がある…」
なんと道具も持ち越されていた。
ループ便利すぎるだろ。
そういえば説明文の最後にそれらしき文があった気がする。
「どうした?イールド」
驚きで言葉に出していたようだ。
だが、これで行動の方針が決まった。
「あ、ごめん。…ところで俺の能力なんだけど」
まずは話を理解してもらうためにさっきまで考えていたことを話すことにした。
「実は俺にとってループ2周目なんだ」
「な!?」
「うそ!?」
「…」
嘘言うわけないし、さっき能力の説明しただろ。
セリシアは反応がないな。
知ってたよ、みたいな感じだ。
「で、早速だけど前回ループした原因が今の服装と能力者ということを他言したからなんだ」
「服は分かるけどなんで能力持ってたら殺されるんだ?」
「てかループのことを他人に話したの?説明にも書いてあったのに?」
「いや、ループは話してない。能力を持っているってことを話しただけだ。そして、その理由だけど残念ながらそれを知る前に殺された」
「…なるほど」
そして今後の行動方針は…
「つまり、セントラルシュタインに能力者ってことを知られないように行ってその理由を探せばいいんだね」
…セリシアに先越された。
「あ、ああ。それで服なんだけど、前回入手していた布の服が10個あるから好きなやつやるよ」
とりあえずは服を変えることだ。
前回の冒険者四人組がこっちに来ないとは限らない。
「どれでも同じだろ、どれでもいいから送ってくれ」
「1番綺麗なのちょうだい」
「私もどれでもいい…」
服を着替えたところで、レベル上げながらセントラルシュタインに行くのは前回と同じだ。
だが、なるべく時間をかけてレベルを上げながら行くことになった。
そして、一週間後にセントラルシュタインに着いた。
今のレベルは平均12だ。
レベル10を超えたあたりからこの辺のモンスターでは経験値が足りなくなって上がらなくなったので結局前回と同じようなレベルになってしまった。
スキルポイントも18と前回とほとんど変わらないので同じように振っておいた。
「へー広いなぁ…城下町に入ったのに城はまだ遠くだぜ」
「ゲームの中とあまり変わらないのね」
「人が多い…」
まずは防具屋へ行くことになった。
目立たないような服を買うためだ。
前回から持ち越すことはできなかったが、所持金は前回より多いので問題ない。
途中、前回絡まれた辺りで同じ冒険者4人がいた。
おそらく、珍しい服装の能力者を待っているのだろう。
後々危険になるかもしれないので、それとなく3人に伝えておいた。
「…なるほどな、俺たちよりレベルが大きいような装備してんな」
「服装はその辺にいるNPC…じゃなった町の人に合わせてるのね」
なんとか無事に防具屋まで着くことができた。
ここで、フード付きのマントを7枚購入。
「なんで、7枚も買ったんだよ」
「そうよ、武器買えなくなったらどうするの」
言われると思ったよ…
セリシアが答えてくれたからよかったけど。
「次ループした時を考えたら当然ね」
「ああ、そういうことか」
「理解してもらえたようでなによりだ。次は武器屋行こうか」
早速マントを羽織って武器屋へ向かう。
ここの武器屋…だけではないが、この国の店は初心者・中級者・上級者向けの品物が全て揃っている。
武器に関しては初心者用の武器をそれぞれ購入した。
レベルが上がれば買い換えればいいからな。
…というのは建前で、本音を言うと金がないんです。
ちなみにここの店の店主から能力者について聞くことができた。
どうやら、1週間ほど前から能力者が世界各地に出現したらしい。
この国の王、レオナルド・シュタイン国王の調べによると、能力者はこの世界を滅ぼす存在になり得ると判断したらしい。
詳細は城の者しか知らないそうだ。
世界の中心国であるセントラルシュタインがそう判断したことによって他の国も能力者を捕まえて処刑しようとしているらしい。
ナイトガナンという国だけは能力者を受け入れる体制らしいが、マルチ・オンラインでは凶悪なラスボスが王の国だったので、行くにしては危険度が高い。
武器屋を出たところで、冒険者四人組…面倒なのでハンターと呼ぼう。ハンターが城に向かって歩いていたので、彼らの後をつけることにした。