旧友
「よく来たなぁ、いやいや昨日の晩珍しくカイから手紙が来てな。」
大きなしわがれ声で目の前の男の人が喋る。身長は低く、大きく長い髭をたくわえている。
「声をもう少し小さくしてくれないか、ルイがビックリしてしまうよ。」
カイのその言葉を聞いた老人はガハハと大きく笑い口を開いた。
「いや、すまんの。そんな驚かせるつもりはないんじゃ。」
私に老人はニッコリとほほ笑みかける。
「ルイ、この人はユル。サクと同じでドワーフなんだ。僕の古くからの友人でもある。」
「ユルってのは愛称じゃがな。本当はユルゲン=ドヴォルザークじゃ、まぁ気軽にユルと呼んで欲しいの、可愛いお嬢さん。」
顔を近づけながらそういう。
「あ、はい。ユル……さん。」
さんは付けんでいいわい。とユルさんが笑う。
「まぁ、初対面では難しいだろうしだんだんと、ね。」
カイがそう言ってくれた。
「そうそう、本題なんだけどさ。ルイのために魔具を作って欲しいんだ。彼女自身の魔力の暴走を防ぐためと、安全のためだ。」
「お嬢ちゃんは魔法を使うのかい。」
ユルさんが尋ねてくる。
「これから、使いたいと思っています。」
ルイはこれから魔法の勉強をするんだ、とカイが付け加えて説明をしてくれる。ユルさんはなるほどと独り言を呟きカイの方に向く。
「お嬢ちゃんの安全のためってのはどういうことかの。」
カイは真面目な顔になり、少し俯きながら口を開いた。
「これから先きっと僕の知らないところで何かあると思う。そういう時のためだ。」
カイはそう言った。どことなく本当のことを言っているような感じはしなかった。そんな感じをユルさんも感じ取ったのか、腑に落ちなさそうな顔をしながらそうか、とそれだけ呟き
「設計ができたらそちらに送る、もう今日は帰ったらどうじゃ。」
といった。カイは席を立った。私もカイに合わせる。
「この後ルイと2人で買い物をしに行く、昼過ぎにもう一度来る。」
そういいカイは入ってきた扉の方に歩いていく。遅れないようにその背中について行く。店を出る時にカイは先程言ったことを繰り返し店の奥にいるユルさんに聞こえるように大きめの声でいった。行きに通った道を歩く。その間カイは一言話をしなかった。ユルさんと話している途中からカイの様子が少しおかしかった気がした。怒っているというか何かカイの癇に障るようなことがあったのか訪ねようとした。その時カイが突然止まった。ぶつからないように私もとまる。
「さぁ、ルイ買い物をしよう。ルイは欲しいものはあるかい。」
先程の様子とは変わってカイは楽しそうに笑っていた。
「え、わたし。服が欲しい。」
どぎまぎしながら答えたせいで言葉が詰まってしまった。そんな私にカイは優しくほほ笑みかけてあっちの店に行こうかと手を引いてくれる。こうやって私に優しく接してくれる笑顔が素敵なカイが本物なのか作られているのか私は考えていた。