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挿絵諦めた
エレベーターを降りると、そこら中機械だらけの、白基調な部屋に出た。あまり広くはなく、また、このフロアにはこの部屋のみしかないようだった。
奥の方には机があり、そこに向かって白髪の男が座っていた。
その男は、僕を見るなり席を立ち、こちらへ向かってきた。
「私がここの所長の篠原です。えぇ。しのはらです。」
男がニコニコしながらいった。およそ老人とよべる年代の、メガネをかけた背の高い男だった。
僕の目をまっすぐ見ながら、今度は真面目そうな顔をして、こう続けた。
「色々前置きはするべきかもしれませんが、端的に言いますと、あなたはここに【提供】されました。」
提供?どういうことなのだろう。
「勿論あなたにとってはショックな話だと思いますが、あなたの保護者様が、あなたに無断で、あなたを私達に受け渡したのです。
すなわち…あなたは提供されたのです。」
「つまり私はもうここの所有物であると?」
「…そういうことでございます。」
なるほど、全て分かった。あの父親なら、平気でやるだろう。
金に釣られたのだろうか?
「分かりました。よろしくお願いします。」
「…なんと物分りの良い…」
細かいことはどうでも良かった。
なんで無断で渡すことが許可されたのだとか、なんでこんな山奥に施設があるのだとか、そういう疑問も、特に必要ではなくなった。
もとより、あの家には戻りたくなかったからだ。恐らく、ここで暮らすことになるだろう。それを受け入れることへの嬉しさが、僕にはあった。
しかし、一つだけ残る疑問があった。
「一つ聞いていいですか?」
「なんでしょうか?」
「下にあった、でかい物はいったい…?」
「あれには、…あなたに乗ってもらいます。」
耳を疑った。
「…明後日、あるものが来ます。それを迎え撃つために、あれを建造しました。乗り手を探しましたが、適合していてかつ、こちら側に身を貸してくれる人物は一人しか見つかりませんでした。
そこで名乗り出たのがあなたです。正確には、あなたは何も知らなくて、金という報酬に目をくらませたあなたのお父様が名乗り出たのですがね…」
「あるものって…何ですか…?」
「ここ最近、巨大な機械が出現して、色々な国で暴れているのは、情報番組などで知っていますね?」
「はい」
「数年前、それらとは格が違う機械兵器が来ることが予測されていたんです。それも、日本に。」
「…」
「今までと違って、今回のものは通常の兵器では太刀打ちできません。そこで立ち上げられたのがここ、抗災結社なのです。五十年前の戦争のときに確立された、人型兵器の技術を利用して作られたのが…」
「あの二機のロボット、ですか?」
「はい。」
胡散臭さMAXだが、それを信用できるだけの状況があったので、とりあえずそれに準じるしかないようだった。
「今日はひとまずここで寝てもらいます。」
「はい。」
「明日、起動実験をすませ、明後日の迎撃に備えてもらいます。」
「わかりました。」
僕がそう言うと、しばらく黙っていた須藤が、声を出した。
「それでは、失礼いたします。行きますよ。」
僕と須藤は、所長に挨拶をして、すぐにエレベーターに乗った。
所長は少しニヤケながら、僕たちに小さく手を降っていた。




