始まりの夜
今回は転生前の主人公と悪魔が出会う直前の話です。
遂に(早くも)あの悪魔の正体が判明!?
是非、ご意見をお聞かせください。
時を遡り20XX年ー日本にてー・・
ソレは闇の中を1時間以上も飛び回っていた。
魔王から命じられた運命の少年を見つけるために。魔王軍を財政難から救い出すであろう少年を、魔王城に雇い入れるために。
しかし、一向に見つからない。
それもそのはずだ。彼が探す少年は今、日本にいないのだから。
しかし、彼がそんな事を知っているはずもなかった。
今は季節的には夏だ。いくら炎に対する耐性を持つとはいえ“蒸し暑い”属性(?)に対する耐性はない。
悪魔も疲れるのだ。溜息の一つや二つ自然と出てしまう。未だかつて体感したことのない“蒸し暑い”にイライラしている最中彼は名案を思い付く。
「アッ、適当にガキ捕まえて運命の少年と言い張ればいいのか!」
「だって、魔王様も誰が運命のガキかなんてわかんないんだし!やっぱ我が輩、最高に頭が切れるなあ」
まるで脱出ゲームで、壁すり抜けに成功した時のようにはしゃいでいた。
彼がこの仕事に抜擢されたのには理由がある。彼には魔王軍の中でも優秀な人材の発見や味方の増援などにおける才能において魔王を凌ぐ程に並外れているのだ。
ただ、彼には難点があったのだ。彼は敵味方を問わず、嘘をつくのだ。彼の息をするように出てくる、巧妙なまでの嘘を讃えて、弟子入りを志願する悪魔が後を絶たなくなったことさえあったという。
もちろん、嘘をつく対象に魔王すら含まれている。
そんな時、闇夜の空ではしゃいでいた彼の目に留まった一人の少年がいた。
彼の名は 斎藤 シンジ。ごく平凡な大学生だ。彼は別に経済学を学んでいるわけではなく、特別に賢いというわけでもない、キャンパスライフを謳歌している平凡な青年だ。
まあ、悪魔目線で言えば彼は少年の範疇と言っても過言ではない。
彼は、アパートでの一人暮らしで気が緩んでいたのだろう。丁度その時、窓を全開にして眠っていた。
彼が選ばれたのは、“ただ窓を開けて寝ていた” それだけだった。なんでも、侵入しやすかったとのことである。
その諸悪の根源である悪魔こそ、魔王お抱えの四天王であり、サタンやルシフェル、レヴィアタンと並ぶ大悪魔ベリアルである。ベリアルは基本的に戦わず、後方での人材調達を任されていたため流れで財務部のトップに据えられた。
何故、人材調達と資金調達が纏まっているかというと魔王にとっては金も人も似たようなもんだという偏見による決定だそうだ。
本来ならば、爵位を持つほどに高貴な存在であるはずだが、夏の蒸し暑さに文句を垂れている姿からは、威厳の欠片も感じられない。
ベリアル曰く、「窓の鍵を開けるのにだって、魔力を使うんだぞ! 悪魔だって疲れるし、嫌なことくらいあるのだ。それに、ちょっとくらい楽しても罰は当たらん! 」とのことだ。
ベリアルは溜息をつくと、面倒くさそうに少年の部屋に侵入すると、ピンク色のいかにも怪しげなポーションを取り出して少年に振りかけると、ベリアルの意識が遠のくよりも早く、吸い込まれるように少年の夢の世界に入っていった。
実はこのポーションは魔王軍の薬品開発部が総力を結集して開発したアイテムである。
これは、振りかけた相手の夢の世界に侵入して悪戯する、それだけのために開発されたアイテムで魔王軍の赤字を払拭するために作られたらしい。
ちなみに、商品名は「ユメニン」だそうだ。なんでも、開発者が「夢に入るから、『YUME に IN』、略してユメニン!! 」とかいう安直な理由でつけたそうだ。
だが、開発費用が馬鹿にできない程の大きさで、当初は魔王軍の闇として葬られる運命にあったのだが、
一部の貴族や王族に重宝されて、予想外にもかなりの利益を上げている。
「まさか、我が輩がコレを使う日が来るとはな」
ベリアルはどこか皮肉交じりに呟いた。
それもそのはずだ。子供の悪戯を発展させたような、しょうもないアイテムに金を使うことに反対する輩は多くいた。ベリアルもそのうちの一人だ。
「さて、どんな夢を見ているのやら・・」
と呟きつつ目を開けてみると目の前に広がっている景色に戦慄を覚えた。
お読みいただきありがとうございました。
次話予告・・・・青年は遂に悪魔と邂逅する。その時、異世界にくるきっかけとなった悪魔から聞かされた一言とは!?
是非、次話以降もお読みください_(._.)_




