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魔王軍、財政難と闘う  作者: 工場長代理
王国編 《Ⅰ》
18/19

姫君の不満

 シュトラエル王国は軍事力はもちろんの事ながら、商業で有名な海運都市フリーセンと友好的な関係にある事から、それなりに豊かな国として有名だ。


 だが、そんな国にも確かにある種の不満は(つの)っていた。


 そう、絶望的なまでに()()()()()()のだ。

 

 この世界では柔らかいパンは存在せず、鉄のように硬いものが主流である。少なくともこの国ではそうだ。

そして、その()()への何百回目とも知れぬ罵詈雑言が王国城内に響き渡る。


「こんな硬いものを食べられる訳が無いでしょうっ!! 毎回言わせないでくださるかしらっ!! 」


「申し訳ございません! ですが、わが国最高の職人たる宮廷料理人の力をもってしても、これ以上は柔らかくすることはできな......」


「侍従風情が私に口答えするつもりですか? 身の程を(わきま)えなさい!! 」


「申し訳ございません! 決してその様なことはございません、ですが......」


「ですが、何ですのっ!! 」


「その辺で許してはいかがですか、シャルロット姫殿下? 」


 そう、先程から偉そうな態度を取っていた金髪碧眼の美女は、実際に偉い人だった。シュトラエル王国の第一王女シャルロット・ド・シュトラエルその人なのである。


「ノエル......分かりましたわ...」


「ありがとうございます。ナタリー、下がって構いません」


「は、はいっ。では、失礼します、姫様」


 ナタリーは田舎から上京して姫の傍付きになってまだ間もない、新人メイドなのである。そして、ノエルと呼ばれた還暦の女性は数多のメイド達を従えるメイド長なのだ。元々美人だったのだろう、老いてもなおその相貌(そうぼう)が崩れる事はなく、凛とした態度でメイド達からも憧憬(しょうけい)の眼差しを向けられている。


「姫様、例のジェスター(宮廷道化師)からの助言ですが、姫様の舌にあうパンを探すために、王国主催の祭りを開催してはいかがでしょうか? 」


 その後、シュトラエル王はあっさりとパン祭りの開催を認め、祭りを収穫時期と重ねて、収穫祭の三日目の大目玉として大々的に周辺都市にも宣言した。


 収穫祭とは、シュトラエル王国の主食である麦の刈り入れ時の一週間に渡って行う豊穣の神への感謝を込めた祭りである。シンジのいた世界で言う所の6月辺りである。



~開催日一週間前~


「お金が......欲しい」


「おいおい、大赤字真っ只中(まっただなか)だってのに...何言ってんだよ。そんなモンお前が()()()やら、()()()やらにエネルギーを大量に使うのを止めれば、ほんの少しは貯まるんじゃあねえの? 」


 魔王軍の赤字は確かに旧魔王が人間との戦争におけるものが(ほとん)どであるが、一因として現魔王の娯楽費が大いに関わっている。現魔王は、シンジの居る日本から秘密裏にパソコンやゲーム機といった電子機器を、ベリアルに持ってこさせていたのだ。決して彼らは口にはしないが、シンジを召喚するという事は、ただの思い付きなのだ。日本に転移するのにも大変な労力を使ってしまう。だから、赤字解消のために運命の子などという存在が生まれてしまったのだ。


 なぜ電子機器が赤字に直結しているかというと......

 

「電気とかいうエネルギーだって、無理やり魔力から変換しているんだ。無駄に費用がかさむし、異世界にネットワークを繋ぐのにだってメチャクチャ金かかるんだぜ~」


「はいはい、我とて分かっておる、分かっておるて。()()()は一日一時間じゃろ?

ちゃんと守っておるわ」


「嘘つくんじゃね~よ。明らかに一日に十時間は遊んでるってベリアルの奴も嘆いてたぞ」


「だが、仕方なかろう! 大体、我は暇で仕方がないのじゃ!! 城から出る事も出来ずに、何をしろと言うのじゃ! 遊ぶほかに無いじゃろ~が!! 」


(じーー)


「なんじゃ? セバス、我に言いたい事があるならば、はっきり申してみよ」


「...いえ、なんでもございません」


(あちゃあ~、遂に魔王様も引きこもりに転職か~。いやあ、まあ分かりますとも!働いたら負けって感じなんでしょうな~)


「そういえば、マリウス。この前、言っておったパン祭りとはどの様な催しなのじゃ? 我の何かが言っておる。金の匂いがプンプンするとな!! 」


「ああ~、確か王族主催で優勝したら大金と、宮廷料理人として雇われる副賞付きだよ。シンジの奴、クロワッサンとかいうメチャクチャ美味しいパンを作るくらいだし、優勝できんじゃね~かってな」


「ちなみに、賞金は? 五十兆くらい? 」


「あのなあ~、そんな国家予算並みの大金なわけ無いだろ~。でも、五億だぜ! 今までとは比べ物にならない大金だ! でも、これは赤字解消に充てるのであって、お前の娯楽に費やす金は一Gたりとて無いぞ」


 マリウスの読みが完全に当たったのだろう。魔王様もグヌヌと悔しがっている。


「わ、分かっておるわ! 仮にも我は、魔王軍のトップなのじゃぞ!! ではマリウス、明日の朝に必要な準備を整えて魔王城を発ち、王都へ向かってくれ!! 」


「あいよ~。まあ、任せとけって! ところで、今日はベリアルの奴はどこに行ったんだ? 一度も見なかったが」


「あやつには、別件で任務を与えておるので、気にするな」


 こうしてシンジの知る由もなく、朝と共に出発することになったのであった。 








まさか、この枠に飛ばされる日が来るとはな................

俺、主人公だぞ...なんで、どうして.....がおおおおー!!!


さーて次回のお話は.....

「って、そこで切るのかよおおおお!!! 」

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