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魔王軍、財政難と闘う  作者: 工場長代理
魔界転生編
17/19

子猫と腹痛

 俺はその日、奇妙な笑い声と共に目が覚めた。

 どうも聞き覚えのあるウザったい声だったので快く眠ることが出来なかった。


「はあ...最悪の目覚めだ。なんで、こんな時間に起きたんだ................よし、寝るか...」


 そうして俺はとりあえず、二度目の睡眠に落ちたのだった...


 いや、落ちたはずだった。俺は眠りに落ちる前に腹部に凄まじい衝撃を受けて呻き声を上げながら、目を覚ます事になったのだった... 


ー同時刻、大広間にてー  

「...遅い!!あの()()は何をしておるのじゃ!?今朝の召集には遅れるなと、あれ程言っておったのに!!」


 その場には、既に魔王様に呼び出されていた悪鬼羅刹達が集まっていた。

 ある者は、絶えず笑みを崩さず、また別の者は呆れたように首を振り、他の者達もただならぬ気配を放っていた。......そう、まるで各々がそれぞれの目標(ターゲット)を噛み砕かんとする猟犬(ハウンド)のように。


「紹介しよう!!我が側近たる最凶の四天王を!!」


(ちまた)では“小悪魔”と称されている魔王の付き人、マリウス!!戦時は80の軍を率いて人々を業火で焼き払った大元帥、ベリアル!!その圧倒的なまでの魔力で人々を混乱させた大魔導士、ドクタ~!!なんかセバスチャン、こーばーやーしぃぃ~!!!!」



 ...こんな話でしたっけ?それに....確か四天王は...おっと、そんな事よりも...シンジ君は放っておいてよろしいのですか?



「おっと、そうじゃった。そうじゃった。すまんが、マリウス!!あの阿呆の様子を見てきてくれんかの?...なんなら、罰としてドロップキックの刑に処してもよいぞ」


 ニタニタと魔王様が提案すると、同じようにニタニタしながらマリウスも、「そりゃあ、名案だナ!!よっしゃ、ちょっくら()ってくるかあ!!」と言い残し、颯爽と駆けていった。


「良いのですか? あのままだと、あの少年...初仕事の前に死んでしまうのでは?...」


 珍しくベリアルは人の心配をしていた。彼は知っている、自らの主に致命的な欠点がある事を。


「な~に、大丈夫じゃろ。あやつは主人公補正とやらが掛かっているのじゃろ?ギャルゲーとかアニメじゃあ、よくある展開じゃしな!!」


(やはり、魔王様に異世界の娯楽を与えるのは間違いでしたかね...彼には悪いですが、魔王様が運命だのと言いだしたのも、過去に私が日本から持ち帰った...パソコンが原因ですし...。今、魔王城が財政難なのも無理やり異世界と回線を繋いだり、電力生産が一因だったりしますしね...)


「そ、そうですね。まあ、彼なら大丈夫でしょう。では、私はお先に失礼します」


「うむ。()()()はよろしく頼むぞ」


「はい? 例の件とは何のことですか? 」


「........馬鹿者、こういう時のお約束というかだな...ほら、なんかあるじゃろ!!魔王なんだし...」


(やはり、間違いでは無かったようですね。その証拠に、滅茶苦茶に面白いですからネ)


「はっ!!失礼致しました。()()()ですね。分かりました、早急に片を付けます」


「うむ、分かればよい!! 」


(相も変わらず魔王様は幼いですねぇ。毎回こんなのは御免被りますし、ここは彼に押し付けますか...)


ーその頃、現場ではー


 心地よく二度寝を貪る男の元に一匹の小猫が、足音も立てずに近づいていた。

 大きな小猫が...純粋なまでの悪戯(あそび)心で...


「うっしっしっし~!! いやあ~、何の警戒もなく無防備に寝てるなあ~。これはもう...ヤッチャウしかないよねっ!!........」


「...う~ん................」

「ひゃっ!?...って何だよ...寝言か...」


 やはり彼女は小猫なのだろう。ちょっとの物音で跳ね上がるくらいに、()()だったのだ。


「さ~てと.....とうっ!!....おらあ~!! 」


「ごふぁっ.........な、んだ?..」


 彼の目の前では、悪意のない天真爛漫な笑みが待ち受けていた。


 その後の彼が辿った末路は誰にでもわかるだろう......


ー翌日ー


「さて、今度こそは初めての仕事に向かってもらうぞ!!向かう先はナタイ村という、それなりに有名な村だが、まあ特に問題なくこなせるだろう。取り敢えずはマリウスと共にパンでも売ってきてくれ!! 」


(パンってまさか......あの硬いのじゃないだろうな。あんな凶器じゃ駄目だ...何とかせねばな...)


 

 この後、俺達は硬くないパン作りを始めて、ナタイ村に通うようになった。その後、俺達はパン騒動に巻き込まれる訳だが、考えてみれば小麦粉で金山を買うことになったのも、全てこれが切っ掛けだったか。


 俺は魔王様に「パンなんぞではなく、もっと効率の良い取引ならいくらでもあるだろう? 」という質問をしたことがあったが、返答を聞いて驚いたものだ。

 まあ、それはまた今度、丁度いい機会の時にでも話すとしよう。


 こうして、彼らの長くて果てしない旅は始まった(?)のであった!!















 





いやあ、相変わらず聞けば聞くほど運命とはかけ離れた他愛のない話ですねえ~。

おやおや? どうやら、またお祭りの予感です。いい加減パン職人は趣味の範囲に抑えてくれないと困ります。これではまるで魔王軍がパン屋ではないですか!?


次回予告・・・遂に新章突入!!いよいよ明かされる我が輩の真実とは!?我が輩の創生秘話に迫る??

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