執事と白衣
俺は、魔王様からマリウスと共に行動するように命じられた後、内密の話があるようで、マリウスと魔王様のみが残り、先ほど、ベリアルや執事の人と共に玉座の間から出たわけだが・・・・・
「すいませんが、少し用事があるので、私はこれで失礼しますね」
ベリアルは楽しそうに歩き去っていったが、付いていっても、ろくな事が無さそうだったので執事と二人きりで、広い大広間に取り残されていた・・・・・
「「・・・・・」」
(気まずい・・・・)
あまりの静寂に、ついつい一人で玉座の間の扉を眺めてしまっていた。
最初は緊張でそれどころではなかったが、よく見てみると、扉一つ一つに細かな意匠が施されていた。
特に、玉座の間に入る扉は壮大だった。・・・・まだ、城の内部構造をほとんど知らない俺だったが、玉座の間の扉からは、相当な熱意を感じた。扉は、全て大理石でできており、細やかな彫刻が印象的だった。
恐らくではあるが、天使を悪魔が焼き殺しているであろう情景を描いている。
悪魔だから、宿敵であろう天使に対する憎悪は、かなりのものだと思われる。
(それにしても・・・扉眺めも飽きてきたなあ・・・・・・)
とりあえず、何を話したら良いのかを考えていると・・・・・・
「シンジ殿。とりあえずは自己紹介でもしましょうか」
彼は空気を読んで、話を振ってきてくれた。
「は、はい。そうですね、俺は斎藤シンジです。よろしくお願いします」
「私は魔王様の執事をしております、セバスチャンとよく呼ばれております」
(セバスチャン・・・本当に執事ってセバスチャンって名前なのか!!・・・)
「それって・・・・本名ですか? 」
すると、セバスチャンは少し間をおいて聞き捨てならない事を言った。
「いえ、セバスチャンはあくまで源氏名に過ぎません。・・・・本名は小林と申します」
「・・・・・え?・・・・小林?・・・・・」
(流石に、小林が・・・執事?・・・というか、この人・・・日本人!?・・何か・・・もう、いいや)
確かに、小林は異世界感だだ下がりだよなあ。そもそも、源氏名ってスナックのママか!!
Bパートへ移る!!
ー魔王城、地下の一室にてー
「いえいえ、ですからパートの使い方が間違っていますよ。いい加減、学習してくださいよ。いいですか、パートというのは、アニメにおいて本編部分の区切りの事を言うのです。大体、アバンもオープニングもないのですから・・・・・」
・・・すいません。やはり、私の声がこの悪魔には聞こえてしまうらしい。
「まあ、天の声は高位であれば、天使も悪魔も聞こえるらしいですからね」
あれ、知らぬ間に・・・俺・・・・・天の声って呼ばれているのか・・・・
「ええ。空から怪しい声がするので、気持ち悪さを無くすために、天の声という聞こえの良い感じの名前にしたそうですよ。」
おい!怪しいって・・・それはないんじゃないの・・・・・
流石に、傷つくっていうか・・・・・その・・・
「まあまあ、最終的には天からの声になったことですし、良いじゃないですか」
何がいいもんですか・・・・・・・怪しいって言っちゃってるよ・・・
「そんな事よりも、話を進めるしましょうか」
私は魔王城の地下にとある施設を造ろうと計画している。
その施設の具体的な案は出せていないが、赤字解消に大いに貢献できると期待している。
異世界から連れてきた彼ならば、この世界には無い技術や知識で役立つだろうと期待もしている。
「あとは・・・・・薬品開発部に頼むという手もありますが・・・・まあ、最終手段ですかね・・・」
薬品開発部とは、魔王軍の中でも、戦闘に直接は関わらないが、アイテム開発や魔法研究によるバックアップを担当する者達のことだ。
ただ・・・・彼らの開発したアイテムの殆どは開発費用に見合わず、使用用途があまりにも限定的だったり、いつ使うのか分からない様な・・・・所謂ガラクタばかりなのだ。
ベリアルが独り言を部屋で呟いていると、部屋に白衣を着たウェーブのかかった金髪の女性が入ってきた。
「噂をすれば何とやら・・・・・ですね。それから、しれっと独り言とか言わないでください」
すると、白衣の女性は面白そうに話しかけてきた。
「さっきから、何で一人で話してるんですか~?もしかして、エア友ですか~? 」
「変な誤解はやめてください。それより、ドクター。わざわざ何をしに来たのですか? 」
「はい~。実は~、前に頼まれていた魔力炉の事で、話があって来たんですよ~ 」
すると、ベリアルは急に態度を変えて、ドクターと呼ばれた女性とコソコソと話を始めた。
そして、二人の奇妙な笑い声と共に夜が明けた................
始めまして。私、魔王城で執事をしているセバスチャン小林です。
私にも様々な過去がございますが、執事たる者、秘密の一つや二つ持っていて当然です。
なので、お気になさらずに。