変態から村人に
そうして俺はベリアルに連れられて小さな村を歩いていた。
この村は、基本的にはごく普通の農村のように見えた。
・・・・見えたのだが、俺は村の入り口で大きな石の巨人を、目にしてしまった。
全長3~4メートルくらいの巨躯を持つ巨人からは一切の生気を感じる事が出来ない。
(なんで・・・え、これってどう見ても・・・)
「なあ、もしかして・・・あのでっかいのって・・」
「ああ、ゴーレムですね。あれは、私の主人が村に貸し出している、レンタルゴーレムの一体です」
悪魔は相変わらず普通に返答した。彼は、ゴーレムそのものよりも、ゴーレムを貸し出すという悪魔の主人の行為に驚きを隠せないようだった。
(え!?・・・今、レンタルって言ったのか?・・しかも、何体も貸し出しているような物言いだったが、こいつの主って・・何者だよ・・)
「つ、ついでに聞くけど・・・何体位いるの・・ソレ? 」
悪魔は当たり前のように返答した。
「そうですね・・・大体100体くらいですかね。まあ、そうは言っても、貸し出しているゴーレムは10体しかいないのですけどね」
少年にはゴーレムが100体という悪魔の言葉を理解できていないようで。
「え?・・・今、100体って・・・・嘘だろ・・」
(ゴーレム100体・・・・もはや、ベルトコンベアだよ・・・・)
「いえ、本当ですよ。我が主は大陸でも有名な王様なのです。このくらい簡単にしてのけるのです」
この村では、王からゴーレムを借りる代わりに、納税しているそうだ。特に、小麦が多く収穫できるので、城の近くに工房を造って毎日パンを届けているらしい。
俺達が歩いていると、村人が変な人でも見るかのようにこちらを窺っていた。
(何か、変なことでもしたっけ?・・・う~ん、わからん)
「なあ、何か俺達・・・見られてないか? 」
「その・・・・・ずっと気になっていたのですが、下は着ないのですか? 」
ベリアルが気にするのも当然だ。なぜなら、シンジはこの世界に来てからずっと白いシャツとパンツ一枚で行動していたのだ。おそらく、寝ながら異世界に転移したため寝ぼけていたの寝ぼけていたのだろう。
そして、彼もそのことに気が付いたみたいだ。
「・・・・・まじか」
「・・・マジです」
「「・・・・・・・」」
一瞬、世界は沈黙に包まれた。
しかし、その沈黙も当人の叫びと共にかき消えた。
「なんで・・・俺パンイチで気付かねえええんだよおおおおおおお」
「ていうか、お前ずっと気付いていたんなら・・言えよおおおおおおおおお」
「待てよ・・・ってことは俺、パンイチのまま異世界にきたのか・・・・・・」
流石に、悪魔といえどもパンイチと歩きたくなかったのか、村長の家に上がらせて貰っていた。村長の家も他の家と同じで、窓は無いようだ。村長に聞くと、窓ガラスはこの世界では、まだ新しい概念で城下町にでも行かない限り買うことはないらしい。その他にも、紅茶を頂きながら、この世界の事を、自分が異世界人だと気付かれないように、さり気なく聞いていた。
もちろん、パンイチで・・・・・
そうこうしているうちに、お爺さんが服を手渡してくれた。
「昔、わしが使っていたお古だけど、よかったら使ってください。どうせ、もう着る気は無かったですから。それに、そのほうが服も喜ぶってもんです。どうぞ、着てやってください」
村長のお爺さんから貰った服は年季が入ってはいるものの結構立派なコットだった。なかなか、体にフィットしていい感じだ・・・・・
問題は、上半身だけ着こんでいることだ。
第一、この格好はパンイチセーターくらいに変態的なものだ。
「あの・・・・・ありがたいんですが、できればズボンを頂ければ・・・」
「おおっと、そうじゃったな。すまんのう、年を取るとどうもボケてしまっていけない」
そう言って村長は、捨てるズボンが無かったのか代わりに、ゆったりとしたフード付きのローブを手渡してくれた。少し、年季はあるものの綺麗な黒色で装飾のない素朴さが、むしろ味を出していた。
「おお!これでちょっと魔法使いっぽくなった! 」
すると、村長は感心したように
「なんと!? そなた、まだ若いのに魔法を使えるのか! 」
「いえ、使えませんよ。そういう村長は使えるんですか? 」
すると、村長は懐かしい過去を思い出すように、空を見上げた・・・・・家の中で。
「懐かしいのう。わしも若かった頃は、魔法を習得する事に躍起になっておったもんじゃ。」
すると、悪魔が割って入ってきた。
「ちなみに、どんな魔法が使えるのでしょうか? よろしければ、お聞かせ願いたいものです」
村長は少し恥ずかしそうに答えた。
「ええ~。それ聞いちゃう?・・・・・その、透視の魔法じゃよ・・・」
(透視の魔法って、宝箱の中身を見れるアレだよな・・・便利そうだな・・・って村長、実は元盗賊? )
「そ、そうなんですか。村長って・・・もしかして盗賊してたんですか? 」
すると、村長は不思議そうな顔をして返答した。
「いや、しとらんぞ。・・・・・まあ、ちょっと近いかもしれんかの・・・」
俺達は全く同じタイミングで同じ質問をした。
「「じゃあ、何をしていたのですか? 」」
「わしは若い頃は・・・・・・・
そうして、お爺さん特有の長話が始まってしまうのだった。
※お爺さんの長話には飽きずに付き合いましょう。ちゃんとしたオチがある・・・・はずです。




