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迷い人の仕事  作者: 山羊SUN
携帯がなければ死んでいたかもしれない
4/7

4


今の時間は13時34分。

携帯の残り充電は84%である。


起きてから森を彷徨い、街の外壁を彷徨って体力は底をつきそうだった。

先程の好調さは見る影もなく消えて少し歩くだけでも体が悲鳴をあげはじめる。


せめて水でも飲めればと外壁にもたれ掛かりながら門の方を眺める。

門にはたくさんの馬車らしきものが入っていく。

馬車らしきものというのは、引いているのが馬だけでなくトカゲのようなもの、角の生えた牛のようなもの、象など多種多様だからだ。

中には巨大なカタツムリのようなものまであった。


引かれている箱も円形のものや円錐状のものなど様々な形をしていた。

さらには装飾がギラギラしたものから木の板を貼り付けただけの質素なものまで本当に様々である。


見ていると馬が引いているのは質素な箱が多かった。馬が一番安いのか?

次に多いのはトカゲ。これの上には模様のついた箱が多い。

模様は盾の中に剣と斧が交差したもの、蔦に絡まれた魔法陣のもの、黒猫が袋を守るように寝ているものの3種類。

その他にもあったのだが、出入りの多いのはこの3種類だった。

この3種類は門で止まることなく中に入っていく。


その他の動物や箱に規則性は無かった。

そしてその多くは1度門で停まり、住民証か通行証を見せているようだった。


さて、巨大なトカゲやカタツムリやらを見せられてまだ日本にいるという考えがあるというわけではない。

おおよそここは『異世界』というものなんだと思う。

ホグワーツとかそんな感じだろう。

もしかしたら夢オチという可能性もある訳だが意識ははっきりしているし頬を抓ると普通に痛い。

ならばすることは現実逃避の一択だ。


昨年母が死んでるし、父親はとっくに他界している。


心残りはない。


あのブラック会社での生活にも疲れていた。

死にたくても勇気なんか無かった俺がやっと新しい人生を歩めそうなのだ。

これを幸運と言わずになんというんだろう。

何とかこの街に入って、安定したホワイトな仕事と優しい奥さんでもつくって幸せに暮らしたい。

そのためには何としてでもこの街に入らなくては。


そこでさっきから観察していた馬車の情報だ。

1度止まる馬車の中には荷物がたくさん積まれているものがある。

その荷物の中に何とか忍び込めれば通行証無しでも入れるのではないだろうか。


思い立ったが吉日。

行動に移そうと動こうとした時、10m位先の草むらで蹲っている人影が見えた。

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