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同じ仕事。同じ生活。
6時に起きて出勤、帰るのは2時を過ぎる。食べるのは専らカップ麺かコンビニ弁当。
唯一の休日である日曜にすることと言えば寝溜めの一択。
もういっそ死んでしまった方が楽なんじゃないか、そう思いながらそんな勇気もなく生きてる。
それが俺の生活。生きる価値もない俺の人生。
睡眠不足からくる偏頭痛に死にたいと思いながら、今日も出社する。
「…おはようございます、」
「石井!朝から辛気臭い顔をするな!!声も小さいし、やる気があるのか?!」
声を出すことにすら疲れているけどそれでも絞り出した挨拶に早坂課長から怒声が飛ぶ。
すみませんと声を張り上げるのにHPを半分持っていかれる。
デスクにつくまでにも試練があるがやっと着いたデスクにはさらにでかい試練いや、悪魔がいる。
その悪魔もとい書類の山を見てもう半分のHPが減った気がした。俺のHPはもう0である。
グダグダとくだらないことを考えるこの脳にスイッチを入れ、やっと作業という名の仕事を始める。
第一、仕事は量だといわんばかりにありえない量の依頼をとってくる営業課の奴らがおかしいんだ。
呪詛の言葉の代わりにキーボードを叩く音を連ねて、叶うことのない願いを思い浮かべる。
今日こそは早く上がりたい。定時とは言わないからどうか12時までに。
そうして仕事を次々と終わらせていくうちに終わりが見えてくる。
もしかしたら今日は定時に帰れるかもしれない。
そう思ったとき、
「わ〜!石井さん仕事早いですね〜!!私の仕事も手伝って頂けませんか?」
隣の佐藤が声をかけてくる。この女が俺に仕事を押し付けてくるのはいつもの事で俺はそれを断れない。
「あぁ、わかりまし「じゃ、これおねがいしまーす♡」
どさどさと置かれる書類に頭痛が酷くなる。キーンと耳の奥で響く耳鳴りが拍車をかけ、目眩までし始めた。
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「おわっ、た…」
時刻はすでに深夜2時。今日も終電に間に合わなかったと何度目増してのショックを受けながら息を吐いて背伸びをする。肩と腰からバキバキ鳴る音を無視して立ち上がった瞬間。
―――ぐらり
目の前が歪んだ。
「え、」
重力に抗うことなく倒れていく体。
動かない体。空を掻く腕。
そして地面に到達しようかというとき、俺の意識は途絶える。
暗転する視界が最後に捉えたのは淡く光る魔法陣のようなものだった。




