【没ネタ】大図書館の魔法使い語る究極魔法
第二千十六季 皐月
同月の21日に私は泣く子も黙る孤島の血塗られた洋館、紅魔館へ赴いていた。きちんとアポをとったうえでの取材だ。庭園でわたしを待っていたらしい案内人の赤毛悪魔さんに大図書館へ案内された。大図書館に入り奥へ向かった突き当たり。老婆を彷彿とさせるどっしりとした座り方で、分厚い本を両手で持って読み耽っている歯磨き粉の化身が椅子にへばり付いていた。
赤毛悪魔が紅茶と洋菓子を持ってきて、山のように積まれた分厚い本を持って行った後本題に入った。究極の魔法とは何なのか?という質問に対しパチュリーさんは、
「はっきりとは答えられないわね。魔法を扱う者の性格によって、何が究極かだなんて別れるものゴホン。……」
パチュリーさんが間を置いたので、私の手が自然と紅茶のカップへ手が伸びる。私は紅茶を全部喉へ流し込んだ。本の整理をしながらこちらの様子を伺っていたのか赤毛悪魔さんがこちらに来て、空になったわたしのカップをティーワゴンに乗せてどこかへ押して行った。私はパチュリーさんに続きを促す。
「でもそうねゴホン……私が思う究極の魔法は"万物の知識量"といったところかしら」
これには私も共感出来た。だがわたしが聞きたいのはそんな題それたことではなく、もっと魔法らしい非現実的なメルヘンだ。魔法使いらしい冷めた答えの連続に飽き飽きしつつ他にないか聞いてみたが、パチュリーさんは目を閉じて考え込んでしまった。
7分ほど経ったか…赤毛悪魔さんが紅茶を入れたカップをティーワゴンに乗せて帰ってきた。沈黙が長く、緊張は苦痛へと変わり喉も自然と渇いてくる。どこかの貧乏巫女の如く気品に欠けるイッキ飲みをした後、赤毛悪魔さんにおかわりを催促した。嫌そうな態度も無く、紅茶を入れるため再び空になったカップをティーワゴンに乗せてどこかへ消えて行った。この主にしてこの従者ありとはまさにこのこと。この館の従者は皆優秀なのだ……1名を除いて。そんなことを思っているとパチュリーさんがやっと口を開いた。
「……………私にとっての究極の魔法は『世界中に生きるすべての生命を幸せにする魔法』かしらね」
メルヘンも甚だしい答えだがなるほど。それは誰もが頷くであろう究極の魔法に違いない。
こちらは文々。通信のコーナーの1つ、没ネタです。ある事情で本誌に載せられず没にした記事ですね。没にしたので文章の構成が自由ってとこが楽でいいんですよねぇ♪