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scene.10


「……」

 タブレットを操作していた響子さんの顔つきが、みるみる強ばっていく。

「なにがあった」

 そんな彼女へ関さんが訊ねた。

 僕も気になる。

 響子さんはちらと僕を見てから関さんを見やる。

「……此花市にバイオネットの連中が出たみたい。マスカレイダー雅が迎撃に出たみたいだけど、テクノまで現れて苦戦中よ」

「ち、雅一人で戦ってんのか」

「ミラージュも凰呀も別件よ。他のメンバーは県外。で、距離的に近いあたし達のとこに援護要請が着たわ」

 響子さんの話に、関さんは身を翻した。

「先行する!」

「ダメよ! ハードラッシャー! ジェネレーターlock!」

『yes professor』

 すばやくバイクにまたがった関さんがキーを回すより早く、響子さんの指示にバイクが応えた。

 そのせいか、関さんがキーを回してもエンジンがかからないみたいだ。

「おい! 響子!」

「落ち着きなさいよ。少なくともハードラッシャーのエネルギーをチャージしなきゃ、まともに戦えるわけ無いでしょう? キャリアーの簡易メンテナンスベースへ移動させて!」

「ち!」

 舌打ちしながらも、関さんはキャンピングカーの後部へとバイク……ハードラッシャーを走るようにしながら押していった。

「……まったく」

「あの、響子さん」

 その姿を見ながらため息を吐く響子さんに、僕は声を掛けた。

 彼女が僕を見る。

 僕は、意を決して告げた。

「……なにか、手伝えませんか?」

 それを聞いて響子さんは微笑んだ。

「そうね。まずは……」

 続く言葉を緊張ぎみに待つ。

「ここの片付け、手伝ってちょうだい」

「……へ? あ、はい!」

 予想と違う言葉に肩透かしをくらいながらも、僕は響子さんへ返事をして、片付けに取りかかった。

 テーブルの上にセッティングされていたPCタブレットやらキーボードやらを、響子さんが素早く落としていく。

 僕はそれらをまとめて、指示されたケースへ詰めるくらいしかできない。

 バイオネットっていうのや、テクノっていうのがなんなのかは分からないけど、関さんと響子さんの様子を見ればただ事じゃないのは僕でも解る。

 と、気になることがあった。

「……そういえば響子さん。ここから此花市って近いんですか?」

 手を休めずに尋ねれば、響子さんがうなずいた。

「ええ、ここは此花市の北側にの山の中だしね」

 結構はなれた場所に来てるみたいだ。此花市は、僕の住んでる星見台からは学園都市の央華と桐ヶ丘を挟んで電車で十数駅以上はあり、なかなか距離がある。

 あの人のいない町並みの中蓋の世界で追いかけられたのは一時間もない。運動部でもない僕の足でたどり着けるような距離じゃないのは確かだ。

 つまり、あの世界での距離とかは当てにならないってこと?

 ちょっと帰るのが大変かも……。

 そんなことを考えながらも、僕は折り畳んだテーブルを抱えて持ち上げようとした。

「……ふん、にゅっ!」

 い、意外と重い。

 少し震えながらもテーブルを運ぼうと……。

「……あれ?」

 不意にテーブルが軽くなったことに目をしばたたかせた。

 と、僕の頭にぽふっとなんか乗った。

「……非力なのが無理してんなよ」

 ぶっきらぼうな声と共に、テーブルはひとりでに運ばれて……ううん、関さんだ。

 僕がテーブル運びに難渋しているのを助けてくれたんだ。態度はアレだけど。


 彼の優しさが感じられて、僕はちょっとうれしくなってしまった。

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