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scene.8


「確認しゅーりょー!」

 車の中で僕の痣を見て、なんだか機械で確認し終わった響子さんが車を飛び出していった。

 同姓相手とはいえ初見の人に肌を見せるはめになるとは思わなかったけど、どうやら間違いないらしい。

 このシンボルが原因……といか、狙われる証みたいなものか。

 僕はため息を吐きながら服を直し、響子さんに続いて車を出た。

 そこでは……。


「すごかったわよ関くん! ほわっほわのおっぱいの間にマークが……」

「いやああぁぁぁああっ?!?!」

 なんで関さんに教えちゃうのおっ?!


 絶叫と共に駆け寄る僕の目の前で、響子さんは関さんに思いっきりゲンコツ落とされて悶絶した。




「バカかお前は」

「……深刻そうな感じだったから、ちょっと気分をほぐそうと思っただけなのにぃ」

「……」

 関さんに怒られた響子さんは、かなり痛かったのであろうか、涙目で頭のてっぺんをさすっていた。けど、同情なんてしません! 悪ふざけにも程がありますっ!

 ほほを膨らませてそっぽを向く僕に、響子さんは「ごめんねー?」と軽い調子で謝ってきた。

 絶対反省してないよねっ?!

「あーらら嫌われたかな?」

「あたりめーだ。ったく……」

 苦笑いする響子さんに、関さんがため息を吐く。

「……んー? まあ良いわ。説明の続きするわねー?」

「この空気で続けるのっ?!」

 僕は驚いて響子さんを見た。

 空気読ま無さすぎじゃないっ?!

 紅い瞳をまん丸くする僕を気にした様子も無く、響子さんは説明を再開した。

「その痣と機器の計測で、あなたは十二星座の巫女のひとりだって判明したわ。で、それがあなたが怪物に襲われた理由であり、あの怪物共……ヒルコのいるもうひとつの世界、中蓋の世界ミズガルズが存在する理由でもあるの」

 先ほどまでの軽い調子とは打って変わって真剣な声音で告げてくる。

「ミズガルズは、私たちの生きてるこの地上世界と、凍てつく炎の世界ムスペルヘイム、死者の坩堝たる冥界ヘルヘイムを隔てる仮初めの世界。ミズガルズが失われたら、この地上に死者が溢れ、凍てつく炎が力を取り戻して滅びの火となって大地と生きとし生けるものを焼き尽くす……って言われてるわ」

 ゾンビだらけになって、世界が焼かれちゃうってこと?

「……そんな話、聞いたこともないです」

「まあ、公式に発表されたことはないし、政府機関でも疑問視する声の方が大きいわね。けど……」



「中蓋の世界ミズガルズは実在する」



 響子さんのその言葉を、僕は否定できない。実際にその世界で、ヒルコって怪物に殺されかけた事実は消えないし、トラックの中にそっと置いてきた汚れ物《僕の黒歴史》もその証明だ。

 戸惑う僕に、響子さんは続ける。

「そのミズガルズを維持するのが、十二星座の巫女なの」

「……え?」


 ぼ……く……が?


 思わず漏れた声は他人のもののように聞こえた。

「ど……いう、こと……ですか?」

 問う声は僕の動揺を表すようにつっかえてしまっていた。けど、あの世界を維持するって……。

「……ミズガルズはね、星々の力を借りてこの世界を守る結界の役割を果たしているの。この星々の力を操る力を潜在的に持っているのが黄道十二星座の巫女なのよ」

 僕は頭を振り、白いツインテールを揺らしながら「……僕にそんな力……ありません」と言う。

 けれど響子さんは首を振った。

「力が無ければ、ヒルコに襲われる事もないわ。ヒルコはこの世へ帰還したがっているの。そして、それには巫女の力が必要らしいわ」

 その言葉に、僕は血の気が引く思いだった。

 あの化け物達が僕の体の中にある力を狙ってるって……。

「な、なんなんですかヒルコって……」

「……冥界から溢れた生命に執着する魂。そしてヒトに成り損なったモノ達よ」

 そう言って響子さんが説明を続ける。

「別の生き物へと転生しながらも、ヒトに戻りたいという妄念で凝り固まったモノ。それがヒルコ。今はミズガルズで押し留めている。けれど近年ミズガルズは不安定化している。……もしミズガルズが崩壊してしまったら、滅びの炎や冥界の死者と共にこの地上に溢れ出るでしょうね。そうなったら確実に人類は滅ぶ」

 響子さんは肩をすくめて嘆息した。

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