プロローグ
突如現れた魔王と名乗る異界の者とその配下達が人間が平和に過ごす世界を侵略した。
世界の4分の3まで支配した魔王に一人の人間が立ち向かった。
その人間は勇者と呼ばれ魔王の軍勢に立ち向かった。
その強さは最早人を通り越し神の域まで達し、次々と魔王が占拠した領土を奪還していく勇者。
そして、この砦を任されている三騎士達のもとに勇者はやってきた。
「・・・つ、強すぎる・・・」
「・・・む、無念・・・」
「たった一人の人間に我等三人が負けるなど・・・」
砦に攻め入った勇者は疾風のように魔王の手下を倒していきここを任されている三騎士をも一瞬で倒した。
「まだ向かってくるか?向かってくるならその命取らせてもらう」
勇者は床に倒れているモンスターに剣を向ける。
「・・・・・・・・・」
三騎士の内2人はすでに意識を失い動けないでいるが黒き鎧を纏った騎士だけは意識があった。だが起き上がる事も話すことも出来ない状態ですでに瀕死。しかし、最後の抵抗か殺意の込めた瞳で睨み付けた。
「・・・死ね」
勇者は問答無用で剣を振りかざした。
砦を制圧した勇者次の場所へ向かうためいなくなっていた。
残されているのは死体の山だけ・・・。
のはずだが、
「・・・・・・おい生きてるか」
胸を貫かれて絶命したはずの黒騎士がゆっくりと起き上がり床に転がっている二人に声をかける。
「・・・・・・いきてまーす・・・。あ~・・・本当に死ぬかと思ったよ・・・イテテ・・・」
魔道士も杖を支えに起き上がり自身に回復魔法を唱え怪我した箇所と体力を回復した。
「あ、そうだロイも回復いる?」
黒騎士の事をロイと呼び杖を向ける。
「いらん。というよりもそれをやられると本当に死ぬから止めろ。命のないこの体が昇天する・・・」
「でも、傷開いてるし痛そうだよ」
貫かれた鎧から黒い血がたれ流れている。
「時期に塞がる。それに痛みなんてこの体になってからとうの昔になくなってる」
「へぇ~便利でいいね。アンデットは」
「羨ましいのか?なら俺が魂をとってやってもいいが・・・」
「遠慮しとく。僕は今のままが気に入ってるから。いいもんだよ混沌の魔道士は使い勝手がいいから。・・・それよりもほら、いつまで寝てるんだいリヴァ」
「そうだぞ。早く起きろ」
二人は床にまだ倒れている動く魔法生物のゴーレムのリヴァに声をかける。
「・・・・・・・・・・・・起きれない・・・」
床にキスをしたまま話すリヴァ。
「・・・・・・・・・・・・起こして・・・」
『・・・・・・』
二人は顔を見合わせ溜息をつくもののリヴァの腕を片方づつ掴み
『せ~~~の!!』
同時のタイミングで引っ張った。
すると徐々に体が浮き上がり始め、立てるようになった。
「・・・・・・ありがとう・・・」
「それでこれからどうする?」
「どうするってそりゃあ・・・ねぇ?」
「・・・・・・魔王様に報告」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
沈黙の中、三人は互いに見つめあった。重く冷たい空気が荒れ果てた室内とよく馴染んでいた。
「テトお前が報告しろ」
しかし、最初の沈黙を破ったのはロイだった。ロイは魔道士のテトに命令をするとロイは声を荒げて言った。
「エーーー!嫌だよ!!ロイがやればいいでしょ。指揮官なんだしさ」
「・・・・・・ここの指揮官だからね」
「・・・・・・これは指揮官命令だ」
「うっわずる!こんな時に権限使うなんて最低だね。人望ゼロの最低のクズ野郎」
「人ではないからOKだ。さぁ早くやれよ」
「・・・いつか回復魔法をお見舞いしてやる」
テトは渋々と魔王様へと報告するべくコンタクトを開始した。
『・・・・・・どうした?』
低い声色を聞くだけで三人から冷たい汗が流れる。
「魔王様・・・ご報告があります・・・」
『・・・・・・・・・』
「・・・・・・勇者に砦を突破されました」
『・・・・・・・・・・・・』
「申し訳ありません。次は必ず勇者をこの手で倒して見せますのでどうかもう一度チャンスを!」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「あ、あの。魔王様・・・?」
『貴様らはもういらん』
「・・・・・・え?」
『私の軍に弱者はいらん』
「そんな!!もう一度だけチャンスを・・・」
そう言った直後上空から一つの雷が三人の前に落ちた。
「ヒッ!!」
『消えろ』
魔王はコンタクトを切った。
『・・・・・・・・・・・・』
三人は呆然とその場で立ち尽くした。
「・・・クビになってしまった・・・」
「・・・・・・そうだね」
「・・・・・・・・・」
三人は砦を出て歩き始めた。当てのない勇者と魔王が戦う世界へと・・・。