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プロローグ
彼は鉄を叩き、彼女はパンを焼く。
叩いた鉄からは剣や鎧が生まれ、焼かれたパンはそれらを身に纏う戦士の活力となる。
そして戦士たちは自分たちの平穏を脅かすものに対し力を行使する。
何年前、何十年前から決まっていることだ。
その世界は多種多様な生物が存在している。
足元の草むらからは子ネズミが、近くにある山々からは大熊が。
この世界は食物連鎖で成り立っていた。
世界は魔力で満ち満ちている。
そこらへんに生い茂る草木や、非力な人間の身を守る家屋にまで。
そして生物はその魔力をマナに変換し魔法を行使することができる。
マナにより通常では引き出すことのできないような筋力が、火種もないのに指先から炎が噴き出したり……。
世界は魔力に満ちている。