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恋愛初心者の恋愛事情  作者: 藤宮 蒼
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 何故こんなにもこの湖に惹かれるのか。

湖の深い青色を見ていると不思議に気持ちが落ち着いてくるのだ。

失恋なのか、そうでないのか。不安定な状態のまま今日も田沢湖に来てしまった。

 車の免許を取ってから、何か嫌なことがあると家から一時間くらいの田沢湖についきてしまう。休日出勤

でもないのにいつもと同じ出勤時刻に家を出た。

田植えも終わった新緑の季節。よく晴れた天気に髪がさらさらとなびくくらいの風が心地よい。

辰子像の土産屋の場所に車を停め、辰子姫が視界にちらりと入る場所から奥の対岸を見つめるのが好きだ。

 あのとき、生理でもなく素直に彼を受け止めていれば何かが変わっていたのだろうか。

しかしよくよく考えてみるとすでに意中の女性もいたようだったし、私が想いを伝えたことにより、抱けるとでも思ったのだろうか。一度だけ一緒に出掛けたとき、そんな雰囲気が流れたときがあった。

しかし生理二日目で、この年にもなってまだその行為をしたこともなかった私は踏ん切りがつかなかったのだ。

きちんと好きですと言葉にしたときも彼は待ってと言った。何に対しての待ってだったのだろう。

意中の女性からの答えを待っていたのか。

その女性がだめだったら私のところへでもくるつもりだったのか。

 結局その女性が色よい返事をしたのか、話しかけてはくるが、私の気持ちはないものになったかのような素振りだった。行き場のなくなった気持ちはとても不安定で、振り子のように規則的に胸を揺さぶっていた。職場ですれ違ったり、意味もなく話しかけられると、不覚にも胸が高鳴ってしまって馬鹿みたいだった。ここへ来てからふと考えてみるとどこを好きになったのか自分でもよく分からなかった。今の気持ちがどうにかなるわけではないが、深い青色の湖を見ているとすっと気持ちが落ち着いてくる。

そのときシャッター音が聞こえて佐和子ははっとして振り向いた。そこには一眼レフを持った、背の高い痩せた男が立っていた。

彼も最初は謎がありすぎて不思議な男だった。


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