紅い紅い花
少女が花壇の前にしゃがんで如雨露を置いた。
花壇の中には、白くて綺麗な花が一輪咲いていた。
少女は何やら困った様な怒った様な表情を浮かべる。
「わたしは、ちゃんとお世話をしたはずよ」
少女は小さな指で花の茎を突いた。
「こんなにか弱い体じゃ、風で折れてしまうわ。育て方が悪かったのかしら」
腕を組んで、どこが悪かったのかを考える。
「わかったわ!」
閃いて、大きな目を更に見開いた。
そして花の透けているかの様な白い花弁を見つめる。
「きっと血が足りないのね!顔色も悪いし、そう、貧血よ」
原因は分かったけれど、貧血を治す方法を知らない。
「人はお肉を食べたりするわ。でも、お花に口はないのよね」
そこで少女は、図書館に向かった。
図書館に行って、貧血を治す本を読みたいと司書に伝えた。
医学関連の本が並ぶ棚に案内されて、それらしい本を見付けてもらった。
「そう、輸血すればいいのね」
勿論、花が貧血であるとは言わなかった。
司書も人の貧血の話であると思った。
少女は輸血をする為に、家の鶏の血を如雨露に入れて花にかけた。
でも、何も変わらない。
翌日、今度は猫の血をかけた。
それも駄目だった。
その次の日には、犬の血を。
やっぱり花はか弱いまま。
更に翌日、家に友達を呼んだ。
花に元気がないから助けてほしいと言って呼んだ。
「どうすれば、お花が元気になるのかなぁ?」
首を傾げる友達に、少女は笑いかける。
「方法はもうわかっているの。あなたには、このお花の栄養になってほしいのよ」
園芸用の鋏を突き立てた。
噴水の様に溢れる紅い雫を如雨露で受け止める。
動物に比べて量が多かった。
それから数日、友達を呼んだ。
毎日たくさんの輸血をした。
花は紅く紅く染まったけれど、それでもか弱いままだった。
「一体、何がいけないの?」
ある日、花が枯れていた。
紅い紅い花弁を落として枯れてしまった。
「どうして?何がいけなかったっていうの?」
家族の様に大切にしていたのに。
何が足りなかったのかさっぱり分からなかった。
「家族に大切なものって何?」
少女は母に尋ねることにした。
母に尋ねる。
困った様な顔をして、少し考えた後に母は答えた。
「血が繋がっていること…?」
勿論、花のことなど言わなかった。
母も人の家族の話であると思った。
次の日、少女が花壇で見つかった。
首には園芸用の鋏が突き立てられていた。
花壇は紅い海の様だった。
それでも少女は、まるで母親の様に笑っていた。
それから花壇には、紅い紅い花が咲くようになった。
(終)




