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臆病ウサギとガレキの山

サブ タイトルはリズムの良さを重視しているのですが、今回は自分の中では七十点位です。というかそれより、第一章の最後の話でようやく主人公がサブタイトルに出るとはこれいかに。

 すまんね、瓦礫くん。



昨日、つまり土曜日に羽織先輩にはまるで主人公のような格好いい台詞を吐いたものの、いざこうして兎鎖木ちゃんと、それも日曜日の静かな部室で二人っきりとなると、なかなか緊張する、というか、普通に話し掛けるのが恥ずかしい。そしてそれは兎鎖木ちゃんもなのか、時折気不味そうに小さく咳払いをしたり、スカートの裾を弄ったり。しかし、この二人っきりの状況は、兎鎖木ちゃんから色々と訊き出す最高のチャンスでもある。だから訊くなら今しかないのだが……いや、悩んでいる時間なんて無い。

 僕は覚悟を決めると、パソコンをおもむろに閉じた。そして、依然として俯いてもじもじしている兎鎖木ちゃんに、声を掛ける。

「……兎鎖木ちゃん」

「は、はい!?」

 まるで僕が兎鎖木ちゃんを大声で驚かしたような反応をされた。そのような反応をされるのはかなり心外なのだが、しかし今はそんなことを言及している暇も、兎鎖木ちゃんを苛める趣味もない。

「な、何か私に用ですか? もしかして私、何か、しましたか……? ごめんなさい」

 名前を呼んだだけでこの始末である。

「い、いや、何もしていないよ。……少し気になったんだけどさ。六時まで部活をすること自体は、パパに怒られないの?」

「え……ええ。しかし、門限は六時半です……いつもなら六時半、までには家に到着するのですが、この前は、それに加えてパパが異常に早く帰っていたので……」

「あ……ごめん。この前のは、完全に僕一人の責任だ。僕があの時、あんなことを言い出さなければ……」

 この前、というのは、兎鎖木ちゃんが入部した時のパーティの事だろう。

「い、いえいえ、私、責めるつもりじゃ……ご、ごめんなさい」

 兎鎖木ちゃんも、僕に頭を下げる。どうやら、兎鎖木ちゃんは人に謝られる事に慣れていないようだ。しかしだからといって、僕も悪いのに謝らない訳にもいかない。

 僕は取り敢えず最後に一度だけ、ごめん。と言ってから、兎鎖木ちゃんの目を見る。

「兎鎖木ちゃん、少し、聞きたいことがあるんだけれど――良いかな?」

「き、訊きたい事、ですか?」

 訊きたい事、なんていう優しい言い方でも、これから僕が問うのは、兎鎖木ちゃんの私生活。そしてその私生活の中のトラブルについてなのだが、そんな事を知る由もない兎鎖木ちゃんは、小首を傾げる。

「うん、訊きたいのは、兎鎖木ちゃんとパパについて。……良いかな?」

 僕は、もう一度許可を申請する。しかし兎鎖木ちゃんも流石に自分の家庭の事となるとなかなか話辛いようで、うーん、と唸りながら、頭を抱えて考えている。しかし、兎鎖木ちゃんは渋々といった感じで首を縦に振るのに、時間はそこまで掛からなかった。恐らく、人格は別でも一人の身体。梨澄辺の意思が上手い具合に作用しているのだろう。

 もしも、何でですか? 等と訊かれていたら少し困ったが、訊かれなくて良かった。

「わ、分かりました。話します……」

「ありがとう、兎鎖木ちゃん。じゃあさっそく、一つ目の質問だけれど、兎鎖木ちゃんのパパは何時くらいに帰って来るの? それによって僕も、切り上げる時間が変わってくるからさ」

「パパが帰って来る時間、ですか? だいたい、十一時ですかね。……でも、私、ご飯作ったり、お洗濯したりしないといけないので……」

 凄く心配そうに僕の顔を覗き込んでくる兎鎖木ちゃん。

「はっはっは、別にそんな遅くまで残さないって。門限は、六時半だろ? 今は一時だから――うん、心配しなくても大丈夫だよ」

「あ、えと、ごめんなさい……」

 自分の発言が早く帰りたいと主張しているようだと感じたのか、すかさず謝る兎鎖木ちゃん。しかしどうやら帰りたいのは本音のようなので、僕も手短に話すとしよう。もしも今日長引かせて嫌われ、明日から情報が入手出来なくなると――間違いなく、詰む。

 将棋なら完全に投了である。

 そうなる位なら今日の内に土台となる、非常家のルールや、兎鎖木ちゃんの苦労。そして、パパの事を少し聞いておくとしよう。最低限それだけあれば、今夜にでも作戦を練られる。

 そうと決まれば早速、兎鎖木ちゃんに質問していくとしよう。そう思い、僕は口を開いた。

「ってことは、兎鎖木ちゃんってもしかして、お弁当なんかも自分で作っているの?」

 僕が訊くと、兎鎖木ちゃんは恥ずかしそうに頷いた。

「おあ、おあまり上手くありませんが、自分で作っています……」

「へえ、凄いじゃん。僕なんか、いつもコンビニ弁当でさ。僕もお弁当、作ってみようかなー」

 なんて。

 そんなつまらない会話に発展しかけた所で、横に長い机を挟んで向こう側にいる兎鎖木ちゃんの頭が、まるでナルコレプシーのように意識を失い、そのままおでこから机に倒れた。……ここで一つ、僕の尊厳に関わる事なので言わせて貰うと、別に僕は意識を失って机におでこからぶつかりかけた兎鎖木ちゃんを見殺しにしたわけではない。むしろ、僕はだから寸前で自分の右手を兎鎖木ちゃんのおでこと机の間に滑り込ませた。無論、滑り込ませた手の爪や指で兎鎖木ちゃんの可愛い顔に傷をつけるわけにはいかないので、手の甲を兎鎖木ちゃんのおでこに、手の平を机に向けた。

 結果、兎鎖木ちゃんの頭と固い机にサンドされた僕の右手になかなかの激痛が迸り、僕は柄にもなく、悲鳴を上げてしまった。

「い、いってええええええええ!」

「……ん、何だ瓦礫、お前、おでこフェチのマゾヒストかよ。どこまで濃厚な変態なんだよ……」

「お、お前なあ……!」

 まるで僕が変態と言いたげな目で睨みつつ、苦笑する梨澄。その性格が悪そうに歪んだ顔面をパンチしかけたが、この身体は兎鎖木ちゃんの物なので殴れないことを思い出し、寸前で止める。そしてどうやら梨澄もそのことが分かっているらしく、ニヤリといやらしく嗤う。

「きゃはは、ある意味最強だな。……まあ、いきなり殴り掛かりに来たのは少し焦ったがな」

 まるでアメリカンコメディーの如く大袈裟に肩を竦める梨澄。やれやれ、とんだ暴力野郎だぜ。とでも言いたげな顔である。

「……つーか、梨澄。お前、前回からかなり性格悪くなってねえか? 前回はもう少し良心的っつーか、今程イライラする奴じゃなかった気がするんだけれど」

「え、そうか? 俺はただ瓦礫を苛めたいだけなんだが……」

「やっぱり性根が前より腐ってるよ。今はもう完全に嫌な奴だもん」

 僕がどれだけムカついているか、分かりやすく言えば、語尾が、だもん。になる位だといえば分るだろうか。

「んー、なんでだろうな。俺の身体には別段変化はないぜ。相変わらず、瓦礫が怒っている時の顔は見ていて気持ち良いし」

「おいこら真面目に怒るぞ」

 真面目に、というのなら僕は初めから真面目なのだが、梨澄はそれでも相変わらずニヤニヤと嗤う。

「真面目、と言えばさ、真面目に作業をしてる人間の作業が一瞬で無駄になるような条件を提示した時の快感は、ヤバいよな。分かりやすく言うなら、絶頂?」

 どうやら僕の周りの人間は老若男女総じて、定期的に雑談とエロい単語を挟まなければ死んでしまう病気に掛かっているようだ。

「……いや、まあ、病気かあ」

 と、そこで梨澄は突然真剣な顔になった。まるで、病気という単語に何か心当たりでもあるかのような反応である。……よもや、兎鎖木ちゃんの身体に何か病気があるかのような物言いである。よもやそんなご都合主義があるわけではあるまいとは思うが、というかただでさえ解離性同一性障害を直してくれと頼まれているのに、あまつさえ病弱設定だったり、余命が少なかったり、そんな設定まであったら完全に一高校生の僕の出張る幕ではなくなる。

「一高校生? きゃはは、お前ってなかなか面白い事を言うんだな」

「百歩譲って僕が異常な人間だったとして、せめて瓦礫って呼んでくれよ。女の子にお前呼ばわりとか、普通に凹むから」

「……いや、俺は一応男なんだが」

「身体は女じゃん?」

 僕は別にその発言に他意はなく、ただただ純粋にありのままの事実を喋っただけなのだが、梨澄は何故か時間差で、爆笑し始めた。

「きゃはははは、何か今の、エロ同人で女体化した主人公を犯す友人の台詞みたいだな!」

「きゃはははは、じゃねえよボケ」

 しかし梨澄は僕のエロ同人的発言がツボに嵌ったらしく、手でバンバンと机を叩きながら爆笑している。しかし今思ったのだが、僕が悲鳴を上げても、梨澄が机をバンバンと叩いても全く誰も様子を見に来ないとは、文芸部部長として恥じるべき事態なのではないだろうか。そう思わない程僕も一般人の枠から離れていない――つもりなのだが、この事態を鑑みる限り、僕が一般人という考えは今日限りで改めなければならないだろう。

 というか、悲鳴を上げても生徒はおろか、先生も来ないというのは、学校の治安的に大丈夫なのか? 万が一この部室に変質者が入ってきたらどうするのだろうか。

 と、そうして僕が物思いに耽っている間に梨澄は復活したらしく、息を切らし、涙目になりながら咳をしていた。

 梨澄のエロ発言に逐一突っ込んでいる僕が言うと説得力が欠片もなくなるのだが、何か、凄く色っぽかった。特に涙目で咳き込んでいると、色々煩悩が擽られるというか、何というか……。

 しかしいつまでも梨澄を凝視していると更に変態のレッテルを張られそうなので、僕は急いで目を逸らす。

「はあ、はあ……。ふう、かなり笑わせて貰ったぜ、瓦礫」

「僕は全く笑っていなかったがな?」

「まあまあ、いいじゃねえか。俺の息が切れた姿見て興奮してたんだし」

 バレてるじゃねえかよ。

「な、何の事かね、梨澄君。一体何の根拠があってそのような事を言っているのだね?」

「その動揺っぷりが完全に証拠だが――まあ良いさ。俺も瓦礫も、同じ変態という名の紳士だったという訳だな」

「違う、僕と梨澄を同じ変態として並べるな」

「え、それはつまり、この俺よりもエロい、バイセクシャルだと言いたいのか……?」

「いや、おかしい。僕はそんな事、一言も言っていないぞ。つーか、誰がバイセクシャルだ。僕はお前に欲情していたんじゃなくて、兎鎖木ちゃんの身体に欲情していたんだよ」

「きゃはは、その発言が証拠になったということにいい加減気付けよ、瓦礫君」

「なっ……!」

「ふふふ、問うに落ちず、語るに落ちる、とは正にこの事だな! きゃはははは!」

 閑話休題。

 とんでもなく時間の無駄にしかならない茶番を経て、僕と梨澄は取り敢えず、部室に無断で置いてある給湯器で、これまた無断で置いてあるコーヒー用の使い捨てコップにインスタントコーヒーの粉を入れ、インスタントコーヒーを梨澄に振舞っていた。どうやら梨澄はインスタントコーヒーを美味しそうに飲んでいるので、嫌いではないらしい。しかし給湯器の温度設定謝って百度にしてしまったのに梨澄は、平気そうに啜っていた。対する僕はといえば、涙目で少しづつ、およそ一回に一ミリリットル位しか飲めていなかった。しかし僕が猫舌という訳では無い。梨澄が、あまりにも熱い物に慣れ過ぎているのだ。まるで、日常的に凄く熱い物を飲まされているかのような。……深読みし過ぎだろうか? いや、そんなことはないだろう。何てったって、日常的に虐待されていて、あまつさえ性的虐待も受けているのだ。熱くても文句を言わないように躾けられていても、何ら不思議ではない。……しかし。無論、そんなことが許されるわけではない。

 自分の娘を虐待するなど、許される行為でではないのだ。

「……瓦礫?」

 と。

 またもや物思いに耽っていると、梨澄が果たして不審に思ったのか、僕の顔を覗き込んでいた。

「な、何か怒らせるような事、した?」

 そう言われて初めて、自分が怒りの形相をしていることに気付いた。

「……ああ、別に何でもないよ。少し、ね」

 何故か口調がいつもの生意気でボーイッシュな口調から、まるで怯えているような口調になっている梨澄に少し笑いかけたが、それをなんとか我慢する。すると僕の発言に安心したのか。梨澄は安堵した笑みを浮かべ、いつもの口調に戻る。

「そ、そうか。なら良かった!」

 にっこりと笑う梨澄を思わず可愛いと感じてしまった。そのことを悟られてまた挑発されたらかなり恥ずかしいので絶対に口にはしないが。

「時に瓦礫。どんだけ兎鎖木が好きなんだよ。笑顔が可愛いとか」

 案の常バレていた。

「つーか、ナチュラルに心読んでんじゃねえよ。どこの魔術師だ」

「いやいや、魔術だなんて非科学的な。単なる読心術だぜ?」

「単なる読心術って……」

 読心術を単なるの一言で済ませる梨澄にはただただ脱帽するが、しかし魔術を否定するのは、頂けない。

「魔術、か。まあ、確かに非科学的ではあるよな。科学と魔術は根本的に相容れない存在だから」

「きゃはは、なんだよ瓦礫。意外に瓦礫って、ロマンチストなんだな」

「ロマンチスト、ね。笑っちまうぜ」

 この科学で全ての物事が説明し尽され、魔術なんて今や、すっかり息を潜めた、と。梨澄もそう思っているのだろう。いや、僕もつい最近まで、オカルトや魔術などの非科学的なものは全て鼻で笑うような、そんな人間だった。しかし、魔術は確かに、この世界の裏側で、息をしている。

 少なくとも、目の前で魔術を堂々と使われて、それでもなお信じない程、僕も石頭じゃない。

 今日から金曜日までの五日間はテストの期間でして、私はその内、火曜日と水曜日がテストでして、つまり月曜日、木曜日、金曜日は丸一日時間が取れるのです。なのでそれを利用してMinecraftと執筆をしていたのですが、勉強をしていないことに今気づきました。……まあ、気にしません。

 そんなことより、とうとう一章が終わりましたね。いやはや、今現在眠気を堪え、欠伸を堪えたお蔭で今、思いっきり画面の前でむせ返りました。ああ、驚いた。という訳で、これまでとこれからの解説、それからNG集をSS(ショートストーリーの略称。気になる人は、googleまたはyahoo!で調べてください。それ以外の検索エンジンで出るかどうかはわかりませんが、この二つの大御所のエンジンなら恐らく出ます)のような形で執筆していきたいと思います。

 それでは、私はこれから解説をするキャラクター二人を決めてくるので、さようなら。


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