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臆病ウサギに躾と虐待

一話目を投稿した後に布団に潜ったら、鼻血が溢れ出してきたサバです。

その鼻血のお蔭で睡眠時間が約三十分程削られてしまい、起きたらなんと午後二時でした。

呪いですね。

 パーティを僕が提案して、僕の驕りで行ったのが昨日、金曜日。そして今日は勿論土曜日なのだが、文科系の部活にしては珍しく、文芸部は何故か土曜日も日曜日もある。そして、羽織先輩と木々からは先程僕の携帯に休むというメールが届いていた。つまり、今日は僕と兎鎖木ちゃんの二人だけということになる。

 しかし、僕ももう高校二年生。そして一応、部長なのだ。後輩の女の子と二人きりだからといって、恋愛小説みたいな展開になるのではないだろうか? なんて思う程子供じゃないという所を、兎鎖木ちゃんにアピールしておかなければ。まぁ、万が一兎鎖木ちゃんが僕に愛の告白をして来たら、あんなことやこんなことも、多少は致し方ないだろう。僕だってこれでも思春期の男子なのだ。

 と、僕が自分に言い訳をしながら自動販売機で買ったミネラルウォーターを飲んでいると突然部室のドアが開いて、いつも通り怯えながら兎鎖木ちゃんが入ってきた。

「こ、こんにちは……」

「──あ、あぁ、こんにちは、兎鎖木ちゃん」

 我ながら名演技だったと思う。不意打ちなのにここまで反応を無くせたのだから、自分を褒め称えたい位である。勿論、殆ど条件反射みたいにこのハプニングを受け流していた自分に、嫌悪感を抱かない訳ではないけれど、それが僕であり、僕が今まで生きてきた十余年で編み出した処世術であり、僕の生き方なのだ。誰にも文句は言わせるつもりも、嫌悪感こそ抱いても、恥らうつもりは更々ない。

 兎鎖木ちゃんの白く細い、触れれば壊れてしまいそうな首に、恐らく成人男性の物であろう両手の手形がくっきりと刻まれていた。けれどその無骨な手形は兎鎖木ちゃんの細い首と何処かアンバランスで、何故かミスマッチで、滑稽に見えた。そう、例えるならば、着せ替え人形の首から上がロボットになっているような、そんな感覚。一見滑稽だけれど、良く見れば何処か不気味な感覚。そんな気持ち悪い感覚は、現実から目を逸らした後でも僕の全身に粘り着いて、僕は吐きそうになりながら、震える手でミネラルウォーターの入ったペットボトルを掴み、中身を一気に流し込む。そして中身が空になる頃には幾分か吐き気も消えていて、手の震えも無くなっていた。けれど、僕はここで見ていない演技をする訳にはいかないのだ。

 確かに、今日と明日僕が目を逸らしていれば、月曜日には痕も消えているだろう。だって、今でもかなり薄いのだ。ならば、月曜日になる頃には消えているはずである。万が一消えていなかった場合はかなり大事になるが、僕がここで無視していたら、今回の件には無関係でいられる。何と魅力的なチャンスだろう。願ってもいない幸運だ。僕は現実から目を背ける。それだけで良いのだ。それだけで、恐らくハッピーエンドになる。何なら、今からでも家に帰ればいいのだ。どうせ強制ではないのだから、明日も休んだら良い。たかだかそれだけの行為で、僕は無関係になれる。

 だが、僕はやっぱり、羽織先輩に推薦された部長として、羽織先輩の顔に泥を塗る真似だけは出来なくて、訊いてしまった。

「ね、ねぇ、兎鎖木ちゃん……」

 僕は、何故か羽織先輩の席にちょこんと腰を下ろしている兎鎖木ちゃんに話し掛けた。いつもならば完全にテンションが上がっているこのシチュエーションも、今はどきどきしない。精々、近くて話し難いな。と思う位である。

「は、はいっ」

 ぴくり。と、特に何かをする訳でもなく、ちらちらと僕の書きかけの小説を見たりしていた兎鎖木ちゃんは、軽く驚いたように僕を見た。

「な、何ですか?」

 怯懦な性格の兎鎖木ちゃんにしては珍しく、若干嬉しそうだった。無論僕と二人きりだからという訳ではないのだろうが、どの道僕の質問で全てが台無しになるのだ。

 僕は息を大きく吸い込むと、覚悟を決めた。

「凄く失礼なことを聞くかも知れないけれど……良いかな」

「は、はい、大丈夫です」

 僕は、震える指で兎鎖木ちゃんの首を指した。

「その首の手形──何?」

 この、もしかしたら辛い記憶をもう一度呼び覚ましてしまうのではないか。と僕が危惧していた質問は、しかし返ってきた兎鎖木ちゃんの返事は凄くあっさりとしていた。僕が一瞬質問を間違えたかと思った位だ。

「あ、あぁ、これですか? き、昨日、帰って来るのが遅いって、パパに躾けられた時の痕ですよ? えへへ、恥ずかしいなぁ……」

「し、躾?」

 僕が訊き返すと兎鎖木ちゃんは恥ずかしそうに微笑みながら、まるで親と共にお風呂に入っていることが露呈した時のような、兄妹で仲良く手を繋いで晩御飯の食材を買っているのを知人に見られてしまった時のような顔で、口調で、答えた。

「は、はい、躾ですよ」

「じゃ、じゃあ、その傷はパパに躾けられた時の痕なの?」

「え、えぇ……。どうかしましたか、顔色が悪いですよ?」

 僕は、兎鎖木ちゃんがはにかみながら言った、『躾』という言葉が頭から離れずにいた。

つまり、兎鎖木ちゃんは躾と称してパパに首を絞められていたようだ。それも、僕が提案したパーティで帰宅が遅れたから。まぁ、簡単に言えば僕の所為だ。

 無論、夢オチではないのだろう。

「兎鎖木ちゃん、詳しく話して貰って──良いかな?」

「わ、わかりました……」

 そういって、兎鎖木ちゃんは服を脱ぎ始めた──はぁああああ!?

 待て待て! 落ち着け僕!

あの兎鎖木ちゃんに限って、僕をこの密室で誘惑する筈ない!

ていうか、何でいきなり脱衣!?

 僕は咄嗟に兎鎖木ちゃんから身体ごと目を逸らし、呼吸を整える。

 落ち着け、僕から命令したわけじゃない。だから、犯罪にはならないだろう。それに僕は兎鎖木ちゃんの裸を見た訳じゃない。唯一見たのだって兎鎖木ちゃんがスカートのファスナーを下ろしたときに少しだけ、ほんの少しだけ兎鎖木ちゃんの薄水色のショーツが見えただけだ。

 そんな醜い言い訳を僕が心の中でしている間にも兎鎖木ちゃんの方から布が擦れる音は絶える事無く、五分程続いた。

「も、もう、良いですよ……?」

 そして五分後、兎鎖木ちゃんのもう良いと言う声が訊こえてきた訳だ。しかし、その声は羞恥というよりも、どちらかといえば申し訳ないというような雰囲気を感じた。

 兎鎖木ちゃんが良くても、僕は良くない。

「……ねぇ、兎鎖木ちゃん、服、着た?」

「ふぇ? き、着ていません……。説明しないといけないから」

「──あ、うん、そうだったね」

 何ですとぉおおおお!? 

 お、落ち着け、瓦礫。もしかしたら兎鎖木ちゃんは実は真剣な話をする時は裸にならないと出来ないとか、そういう体質なのかもしれないだろ? なら、そこを突っ込むのは失礼だ。

 危ない危ない、僕としたことが兎鎖木ちゃんを傷付ける所だったぜ。ここは兎鎖木ちゃんの意思を尊重しないとな。

僕は、数回深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、一気に兎鎖木ちゃんの方を向いた。

しかし、僕は直ぐに言葉を失うことになる。

「……う、兎鎖木ちゃん……、それ、何……?」

 まぁ、確かに兎鎖木ちゃんは僕の予想通り裸だった。下着すら着けていない。しかし、そこからエロチシズムを感じ取ることは出来なかった。

 傷。傷。傷。

 痣。痣。痣。

 切り傷、刺し傷、蚯蚓腫れ、火傷、擦過傷、瘡蓋、殴打痕、靴痕、引掻き傷、裂傷、咬傷。それらが、横腹、首、両手首、下腹部、大腿部、局部、胸部、鳩尾に満遍なく付いていた。そして兎鎖木ちゃんはネグレクトも受けているようで、肋骨が浮き出る程に痩せていて、リストカット痕のある両手首は折れそうだ。

 しかし、僕が一番驚いたのは、服を着ている時は絶対に見えないような位置にしか、傷が無いことだ。

 僕は、もう一度兎鎖木ちゃんを見る。

 兎鎖木ちゃんの顔は、羞恥よりもやっぱり申し訳なさそうな雰囲気があった。

「ご、ごめんなさい……。き、き、汚いですよね」

 局部も胸部も手で隠す事無く、かといって椅子の上に綺麗に畳まれた制服と下着を着ようともせず、兎鎖木ちゃんはその場で項垂れた。

「そ、そんなこと無いよ!?」

 これは本心だ。

確かに初め見た時はびっくりしたし、今だって何があったのかが気になる。けれど、汚いなんて思ったことは一度も無い。

しかし、そんな台詞を言える訳も無く、僕は否定しか出来なかった。でも兎鎖木ちゃんは少しだけ嬉しそうに笑ってくれた。

 その後僕は詳しく──とは言っても兎鎖木ちゃんもロボットではないので、五年間、兎鎖木ちゃんの母親が亡くなってから今まで間に受けてきた虐待を全て記憶してはいなかったが、それでも分かった事が幾つかある。

 まず一つ目。兎鎖木ちゃんの父親は、僕が思っていたような、娘にちゃんと『躾』をしているような父親ではなく、娘に敬語を無理矢理、それこそ癖になるまで使わせて、自分の気に食わないことがあればそれが兎鎖木ちゃんの所為だろうが無かろうが、関係なく暴力を振るう最低な人間だということだ。しかし、僕はこういう、兎鎖木ちゃんの父親を馬鹿にするような真似は二度としないと誓った。というか、思わず約束してしまうような状況だったのだ。

「じゃあ、その傷はパパにやられたの……?」

「は、はい」

「なんだよ、それ……。そんな、糞野郎──」

「パ、パパを馬鹿にするな!!」

その時は本当に、心肺停止になるのではないだろうかと思うほどびっくりしたので記憶が曖昧だが、兎鎖木ちゃんのこの怒声だけは一字一句違わない自信がある。

簡単に言えば、いつも何かに怯えている兎鎖木ちゃんが突然、僕の台詞に被せて声を張り上げ、僕の制服の胸倉を掴んで激昂したのだ。勿論この時は裸ではない。もしもまだ裸だったら、相当滑稽である。無論、笑えないけれど。

そうしてこの後僕は、先述の通りに約束をしたのだ。余談だが、約束をする際に兎鎖木ちゃんは小指を出して来た。その姿に不覚にも萌えたのは、シリアスな雰囲気ぶち壊しかねないので言わなかったけれど。

 二つ目は、兎鎖木ちゃんが完全に父親に対して一方的に依存しているということだ。

 僕が首の痕を指摘した時もそうだったが、兎鎖木ちゃんの中ではパパからの理不尽な暴力を、パパが言う通りに躾だと思い込み、その躾に感謝すらしている。僕が兎鎖木ちゃんに躾をどう思っているのか訊いた時だって、

「も、勿論痛いですよ。で、でも、でも、私が悪いから、仕方ないです」

と言っていたし、やはり兎鎖木ちゃんは父親からの肉体的虐待によって洗脳され、自分が悪いからと思ってやり切っているようだ。

 三つ目は、正直言って良いのか分からないけれど、と言うか僕は話すのが物凄く気が引けるのだけれど、話そう。

 兎鎖木ちゃんは、父親から二日に一回の割合で強姦されていた。そして、それ以外にも色々な猥褻行為もされているらしい。しかし兎鎖木ちゃんは、私をパパが愛してくれている証拠です。とか、私も同意の上です。とか、そんな風に必死にパパを庇っていたけれど、その台詞は何処と無く兎鎖木ちゃんっぽくないというか、兎鎖木ちゃんらしくないというか、とにかくそんな感じだったので、恐らくパパに、万が一その事が露呈したらこう言え。と言った具合に脅されているのだろう。

 四つ目。これで最後だが、これを最後に持ってきたのは、僕がこれを訊いた時に、一番引いたからだ。

「兎鎖木ちゃん……話は変わるけれど、ご飯って一日何回食べてる?」

 僕が嫌な予感を胸中に抱きつつ訊くと、兎鎖木ちゃんは至って普通だと言わんばかりに、きょとんとして、

「え……? 勿論、一日一回ですよ?」

と言った。

 勿論、らしい。

「い、一日一回!? そんなの、お腹空かないの? てか、ネグレクトじゃ……」

「あ、はい、確かに初めの頃はお腹空きましたけれど、もう慣れました」

 暴力と一緒です。と、兎鎖木ちゃん。やはり深層心理では躾ではなく暴力と思っているらしかったが、それよりも僕はネグレクトが言い方からして今に始まったことではないと言う事実に驚いていた。しかし、次の言葉で僕は本当に絶句した。

「ペットフードも、食べられなくも無いですし」

「………………」

 ペットフード?

 兎鎖木ちゃん、今、ペットフードって言ったか?

「……う、嘘だよな?」

「え、本当ですよ?」

「そ、そんな、ペットみたいな──」

「え、えぇ、だから……だから、私は、ペットなんです」

 と、兎鎖木ちゃんは悲しそうに俯いた。

「私、私、パパのこと、好きなのに……パパは、パパは、私のことを、ペットだって……。私、パパのこと、愛してるのに……」

 じわり。と、兎鎖木ちゃんの目尻に一粒の水晶みたいに綺麗に透き通った涙が浮かんだ。それは後から後から出てきて、遂に一滴、流れ落ちた。しかし、僕は完全に引いていた。

 この時、僕は確かに兎鎖木ちゃんに対して気持ち悪いと感じていた。

 僕は、ここで絶対に言うべきだったのだ。

 そんなの、愛じゃないって。

 しかし、それを言えないまま、今に至ると言うわけだ。

 今、つまりそれは僕の家で木々が僕のベッドに腰掛け、僕はカーペットの上で正座で座っている十三時三分二十一秒を指すのだろうが、僕は分かった四つの情報を木々に教えていた。この行動は良く言えば情報の共有だが、悪く言えば巻き添え、道連れ、お手上げ、等々で、今に至る訳だ。なんて格好付けて言ってみても、やっていることはびっくりする位情けなかったりするのだが、気にしない。

もしもこれが僕だけの問題ならば是が非でも、一人で、独りで、孤独に解決するのだが、これは違う。

今回は、格好付ける場面ではない。

「……だからって、この仕打ちは如何なものだろうか、神よ仏よ」

「何か言いましたか、燃えないゴミ」

「せめて燃やして」

 ベッドに足を組んで腰掛け、正座で座っている僕の太腿をぐりぐりと踏み躙る木々の姿がそこにはあった。

 いや、初めは僕だって胡坐だった。けれど、兎鎖木ちゃんのパパを冒涜したら兎鎖木ちゃんに思い切り怒鳴られたことを報告した瞬間、木々が突然平坦な口調で一言、

「そこに正座しろゴミ」

と言って、その気迫に押されて思わず正座をしたら、そこからひたすらぐりぐりと踏み躙られている訳だ。

 どういう訳だよ。

「なるほどなるほど、大体の事は理解しました。つまり、時標さんは後輩の女の子を裸にしたのですね。あまつさえ部室で? はっ、この変質者が。帰れ」

「い、いや、ここ僕の家だし、それに兎鎖木ちゃんが勝手に脱ぎ始めたんだよ?」

「そういうプレイですか」

「プレイとかじゃねぇよ!」

 どんなプレイだよ。

「……はぁ、燃えないゴミの所為で真剣な話が出来ませんね」

「元凶はお前だがな!」

「……つまり、時標さんは非常さんをどうしたいのですか。いやらしいことですか、いやらしいことですね。この変態が」

 相も変わらず僕の太腿をぐりぐりしつつ、木々は訊く。しかし、その質問は疑問をぶつけたのではなく、むしろ再確認に近かった。

「無論、兎鎖木ちゃんがパパから虐待されないようにしたいんだよ」

だから僕は、言い切る。曖昧でいい加減な生き方しかしていない僕にしては珍しく。

「ふむ、ですが、兎鎖木ちゃんは父親に依存しているのでしょう? なら、それは少々難しくありませんか?」

 しかし、兎鎖木ちゃんはまるで意地悪な面接官のように聞き返す。いや面接官に太腿踏まれながら意地悪な質問はされたことがないけれど。……当たり前か。

「それなんだよなぁ……。確かに、木々の言うとおり兎鎖木ちゃんは依存している。でも、たまに、ほんのたまに、まるで多重人格みたいになるんだよ。僕が思うに、それはつまり兎鎖木ちゃんの深層心理ではパパに依存なんかしていなくて、ただ依存している振りをしている方が楽だからそうしているような……」

「振り、ですか?」

 木々は僕が言っていることが若干分からないらしく、糸が切れたマリオネットのようにがくんと首を傾げた。依然として、まるでそういう呪いにかかったかのように無表情なのも、マリオネットみたいだ。いや、口が裂けても木々には「マリオネットみたいだね」なんて言わないけれど。言って兎鎖木ちゃんみたいに激昂されたくない。本音を言えば、結構トラウマになっていたりするのだ、あれ。

「そう、振り。というか、多重人格かな、あれは? だって怯えたり、照れたり、怒ったり、まるで人格が一杯いるみたいだろ?」

「……解離性同一性症候群」

 その時、木々が何かをぼそっと呟いた。かいり……?

「ん? 何なんだよ、木々、いきなり。かいりせいなんとかってのは」

「え、あぁ、解離性同一性症候群、です。多重人格の正式名称ですよ? まさか、正式名称も知らないで使っていたのですか? 馬鹿ですね」

「い、いや、大半は知らないと思うんだが……というか、呼吸をする様に罵倒するな」

 大体僕もそんな長ったらしい病名、初耳だ。

「そんな訳無いでしょう? 貴方が馬鹿なだけですよ、燃えるゴミ」

「あ、燃やしてくれるんだ」

 被害者の要望に応える暴言って何。

「じゃあ、ちょっと待ってろよ、羽織先輩に電話で聞くから」

 そういって充電してあった携帯を取ろうとしたら、木々に思い切り太腿を踏まれた。

「いたたたたた! 痛いって!」

「何電話を掛けようとしているのですか、時標さんは本当に記憶力が悪いですね。もう忘れたのですか?」

「あ? 幾らなんでも馬鹿にし過ぎだぞ、木々──」

 と、そこで僕は思い出した。

 そうだった、そういえば羽織先輩、今は兎鎖木ちゃんの様子を見に行ってくれてたんだった。

 僕が羽織先輩にメールで簡単に説明してから僕の家に集まって欲しいと言ったら、羽織先輩が兎鎖木ちゃんの様子を見に行ってくれてたんだ。それならその監視を邪魔してはいけないだろう。

「やっと思い出したようですね、この燃えないゴミ」

「元に戻った!?」

 やはり燃やしてくれないようである。

 閑話休題。

 羽織先輩が一体どういう考えで兎鎖木ちゃんを監視しているのか僕は知らないが、何かしらの考えがあるのだろう。……流石に、この状況で兎鎖木ちゃんを愛でに行ってない筈だ。そう信じたい。

「で、その解離性同一性症候群──だっけ? それがどうしたってんだよ。まさか……兎鎖木ちゃんがそうだって言いたいのか?」

「そのまさか、です。第一、時標さんが始めに言っていたのですよ。解離性──おっと、『多重人格』でしたね。失礼しました」

 ……真似しやがって。ま、長ったらしいから良いんだけどさ。

「あ、そういえば僕が言ってたんっだっけ。……でも、自分で言っておいてなんだが、触れられたくないところに触れられたら誰だって怒るし、好きな人を馬鹿にされたら激昂しないか?」

「ですが、非常さんは父親から肉体的、性的に虐待されているのでしょう? ならばありえない話ではありませんよ。第一、多重人格が発症した人間は大抵親から虐待を受けているのです。そして、虐待を受けているのは自分じゃないと思い込み、自己暗示を掛け、そして人格が解離してしまうのです──無論、これは猿でも分かるように言っただけですので、詳しく知りたいのなら、書物を漁った方が良いですよ」

 私は全知全能ではないのですから。と、木々は自分を嘲るかのように言った。

「ふむ……それならありえない話じゃないのか。兎鎖木ちゃんが多重人格だって説も」

「そうなりますね。まぁ、この目で見なければ分からないですが」

「激昂している姿を? 止めておけ。あんなの見たら、多分引くぜ?」

「そういって仲間外れですか?」

「いや、そうじゃなくて……」

「放置プレイとか、興奮します」

「よし、仲間外れだ」

たかが二話投稿しただけで諦めが余りにも早いと思う方もいるかもしれませんが、流石に毎日五千字近く書くのはきついので、これからは長くても一週間の内には、一話完成させたいと思います。

よって、かなり変則的な投稿になると思いますが、ご容赦下さい。

後、鼻血はもう止まりました。

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