第三十一話
夏休みなのに誘惑に負けてあんまり掛けなかった(ノ∀`)
新作を書きたくなって、書いてたらこっちが疎かにーヽ(`Д´)ノ
新作のほうはもう少し書き溜めてから公開したいと思います(`・ω・´)
「一体どうなっているのですか!」
リースがトレス国王に詰め寄る。
「お前の予想通り、内部に裏切り者がいるようだ。陥落した砦は全て無条件降伏したそうだ。」
「そ、そんな・・・。」
リースは信じられないといった感じで、一瞬固まってしまう。
それに対してトレス国王は優しく諭すように言う。
「この王都にたどり着くのは時間の問題だ。だが、この王都を戦場にするわけにはいかん。主力部隊を王都の外に配置している。」
「しかし、なぜ民を避難させて、城壁を利用しないのです!」
「今のこの国で、これ以上民に負担を掛けるのは難しい。と、言うのもあるが、実は街の壁は既に一部破壊されているとの知らせがあった。しかも壁の内側に罠まで仕掛けられていたそうだ。恐らく相当前から用意していたのだろう。」
「そ、それでも、多少は役に立つはずです!」
「いや、それでも大して違いはなかろう。下手に篭城すれば王都は致命的な打撃を受ける。もしも街中まで戦火が広がるようであれば降伏も考えておる。お前も覚悟だけはしておいてくれ。」
「なっ、何を考えているのですか!そんなことでは「姫!」」
リースが言いかけたところで、トレス国王の傍にいる男が割り込んできた。
「よいですか、シーリンス姫。今のこの国の戦力では、ドラグレイス帝国の進行を食い止めることは出来ませぬ。民の為を思うならば、降伏するのが一番です。」
「臆したか!バルトレイ!」
リースは、その男を睨みつける。
「落ち着けシーリンス、バルトレイも好きで言っているわけではない。このような状態になるまで手を打てなかったワシの責任だ。許せ。」
トレスの国王とは思えないほどの小さく見える姿に、リースは唖然とするばかりだった。
「くっ、ならば私が何とかします!」
リースはそう言い放つと、すぐに王の間を出て行った。
仕方なく、高志達もそれについていく。
歩きながら高志はリースに聞いた。
「リース、何か策はあるのか?」
(・・・シーリンス様とか、姫とか呼んだ方が良かったのかなぁ。)
「ある!と、言いたい所だが、さすがにここまで敵の動きが早いと・・・。」
高志の問いにリースは言いよどんでしまう。
「もう少し、時間があれば対策も打てたはずなんだがな。だが、仕方あるまい。タカシ。君に頼みがある。アレス殿に連絡を取って、何とか王都防衛に参加してもらえないか頼んでみてくれないだろうか?」
「分かった。リース、君はどうするんだ?」
「ミラン将軍に会いにいく。彼は数少ない信頼出来る人間の一人だ。もっとも、この状況では前線に出ているだろうから、そこに向かうことになるかな。」
(・・・これはかなりまずい状況だな。ってか、降伏しちゃ駄目なんだろうか?犠牲がないなら降伏して、どこかの国が統一しちゃえばいいんじゃないのかな?)
そう思った高志はつい聞いてしまった。
「ちなみに、降伏した場合ってどうなるの?」
気まずい瞬間の後、リースは答えてくれた。
「恐らく、敗戦国の民として、いや違うな奴隷として扱われる。そして、私のような王族や貴族は皆殺しにされるだろう。今攻めてきているドラグレイス帝国とはそういう国だ。」
「そもそも、国が違えば思想や文化が違う。どこかの国が統一したところで、すぐにみんな仲良しというわけにはいかない。」
と、シェリアが補足してくれた。
(・・・そういや、地球でも合衆国内の人種差別とか根強く残ったらしいし、単純にはいかないのか。)
この辺りの思考は平和ボケしていると言わざるを得ないが、暮らしていた環境にはそういった問題が無かったので実感までは出来なかった。
「なるほど、色々とあるんだな。」
「むしろ、みんながタカシのような思考であれば、国の垣根はなくなるのかもしれないな。」
と、リースは寂しそうに言う。
(・・・ああ、やっぱ俺って平和ボケしてるのかなぁ。残念な人を見る目で見られてるのだろうか。うーん。)
しばらくの沈黙のあと、高志は意を決して声を上げる。
「よし、それじゃあ、早速行動しよう。俺がアレスの爺さんを呼びに行ってくるから、その間、みんなはリースの護衛をしててくれ。」
そう言うと、高志は恥ずかしさを隠す為、その場から走り出した。
(・・・さて、このまま馬鹿正直にアレス爺さんのところにいってもいいが、爺さん一人がきて好転するような状況じゃなさそうだな。まずは状況をみにいくか。)
高志は人気のない場所に駆け込むと、変身しステルスモードへ切り替える。
その後、上空にワープして、敵軍がいるであろう場所に向かうことにした。
(・・・さて、敵の場所はっと。まぁ、自軍の配置を見れは一目瞭然か。)
王都グリゴールの西側には騎士団と傭兵らしき人々が大勢集まっていた。
恐らく敵軍は西側から来るのだろうと容易に推測できた。
そして、高志は更に西側に向かって飛んでいくと、敵軍らしき姿を確認できた。
(・・・ん、あれか。)
しばらく進んだところで、まずは敵軍の騎兵部隊と思しき部隊が眼に入った。
その騎兵部隊に若干遅れるようにして歩兵部隊が行軍しており、更にその後には補給部隊と思われる荷馬車の行列が出来ていた。
だが、その総数は高志が予想していたものよりもかなり少なかった。
高志は、トレス国王とリースの口ぶりから察するに王都防衛の数を凌駕していると予測していたが、見てみると明らかに同等かそれ以下の規模だった。
(・・・これくらいの数なら、なんとか防げるんじゃないのかな。まぁ、いきなり降伏するわけじゃないみたいだし、そんなもんか。)
そう判断すると、高志は次にアレスのところに向かうことにした。
実際には、高志が見たのは本隊ではなく、ただの先行していた尖兵だったのだが、それを知るのはもう少し後になる。
せめて高志が戦争に詳しければ、その辺りも予想できたかもしれないが。
高志はひとまず安堵し、アレスの元へ向かうことにした。
アレスの引越し先の村の上空へ瞬間移動し、人気のないところへと降りる。
そして、変身を解除し、アレスの家へと向かった。
「アレス爺さーん、いますかー?」
そう言いながらアレスの家の扉をノックする。
「なんじゃ、タカシか。鍵はかかっとらんから入って来い。」
中からアレスの声が聞こえたので、高志はそのまま扉を開き入る。
そしてアレスに今の状況を説明した。
「ふむ。なるほどのぉ。しかし、ワシが行ったところでどうにか出来る状況ではなさそうじゃがのぉ。」
どこかアレスは他人事のように言う。
「敵の数もそんなに多くないみたいだし、爺さんがいればむしろ優位に立てるんじゃない?」
「どうかのぉ。それに本当にドラグレイス軍の規模は小さいのか?あの帝国の軍備は相当なものだったはずじゃがのぉ。」
「でも、ちゃんと見てきたから間違いないと思うけど・・・。」
「ほぉ。お主偵察してきたのか。ちゃんと対象が本隊かどうか確かめたのか?」
「え?まぁ、それなりに多かったから本隊なんじゃないかな?」
(・・・あれ?違った?まさかあれだけの規模で偵察ってことはないよね?)
「では、その部隊の中に馬以外の騎乗動物はおったか?」
「特にはいなかったと思うけど。騎馬部隊と、遅れて歩兵、補給部隊がいたくらいかな。」
「では、それは恐らく尖兵じゃろう。あそこの本隊はちと特殊でな。恐らく本隊のための下準備をするために先行されておるのじゃ。・・・うーむ、どうもお前に任せるのも不安になってきたのぉ。仕方ないワシも行くとするか。」
「まぁ、良く分からないけど、助かるよ爺さん。一応、リース・・・じゃなかった、シーリンス姫にも爺さんを連れてくるように言われてるし。」
こうして高志とアレスは王都に向かうことになった。
その頃、王都ではリース達に事件が起こっていた。
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「貴様ら、何者だ!」
リースの鋭い声にも襲撃者は応えない。
リース達は防衛隊の本隊に向かう途中、城内の人気のない場所で襲撃を受けていた。
襲撃者は全員フルフェイスの兜で顔は分からないが、騎士の鎧を纏っていた。
襲撃者が放った最初の一撃をミンクが野生の勘で防いでいなければ、一方的になっていたであろう。
それほど自然に白昼堂々と襲撃されたのだ。
リース達4人だけだったのに対して、襲撃者は10人以上いたが、なんとか持ちこたえている。
「どうして誰も騒ぎを聞きつけて駆けつけてこないんだ!」
リースが叫ぶ。
「おそらく結界が敷かれていて音が外部に漏れないようになっているんだろう。」
シェリアがすぐに答える。
「シェリちゃ、結界を何とかするのだ!」
「無茶言わないでくれ。」
いつもは余裕のあるシェリアも今回ばかりは必死になっていた。
前衛はリースとミンクの二人だけだが、思いのほかリースが善戦している。
これは襲撃者側も想定外だった。
Lv的には、サリーを除けばリースが圧倒的に低いのだが、要所要所で時間を操る魔法を使っており、襲撃者相手にも負けていない。
もっとも、シェリアの高Lv支援魔法のお陰もあるのだが。
この中でシェリアだけは圧倒的に高Lvなのだが、接近戦に関しては苦手な為、なかなか状況を変えられずにいる。
しかも、襲撃されすぐに行き止まりの通路に追い込まれた為、大規模な魔法を使うこともままならない。
下手に威力のある魔法を撃とうものなら壁や天井が崩れる恐れがある。
更に都合が悪いことにスペースもほとんどない為、サイズの大きい上位精霊も召喚できずにいる。
それでも強力な支援魔法と下位精霊を複数召喚することでかなりの戦力を補っている。
追い込まれた通路が狭い為、前衛をリースとミンクだけで事足りるのが不幸中の幸いだろうか。
だが、それも長くは続かなかった。
襲撃者は入れ代わり立ち代りで戦闘する者が交代するのでほとんど疲れ知らずだ。
多少の手傷を負わせても、後方に回復魔法が使える者がおり、いずれ前衛に復帰するといった感じだ。
魔力もそうだが、4人しかいないリース達は精神的にも追い詰められていた。
「このままではマズいな。」
リースが思わず弱音を漏らしてしまう。
「こうなったら、一か八か、威力のある魔法を使ってみるしかないか。生き埋めにならないことを祈ってくれ。」
シェリアが冗談交じりに応える。
「あっ、もしかしたら。」
サリーが思い出したように声を出す。
他の3人の意識が少しだけサリーに向けられる。
「うまくいけば、誰か助けに来てくれるかも。」
そう言ってサリーは高志に渡された防犯ブザーを取り出し、その紐を引いた。
突如、ものすごい大音量でブザーが鳴り響く。
サリーを除くその場にいる全員が、そのブザーの音に驚く。
襲撃者側も、何事かと慌てるが結界により音は外部に漏れないと知っている為、すぐに落着きを取り戻す。
「結界の範囲が狭いなら、もしかすると。」
そう言って、サリーは防犯ブザーを力いっぱい投げた。
だが、結界は予想よりも広い範囲に有効だったようで、無視された。
「ごめんなさい。駄目だったみたい。」
サリーが申し訳ないようにそう言う。
いよいよ、一か八かの賭けに出なくてはならない。そんな感じの雰囲気になった。
しばらくすると、防犯ブザーの音もやんでしまい、一気に暗い雰囲気になった。
「巻きこんでしまってすまない。」
と、リースが悔しさと申し訳なさで搾り出すように言った。
その時、襲撃者の後方が騒がしくなった。
「な、何だ!何故邪魔が!」
「くそっ、コイツなんなんだ!」
すぐにその原因が分かった。
黒い鎧を纏ったヒーローが現れたからだ。
(・・・やれやれ、城の中で堂々と姫様を襲撃するなんて、こりゃあ相当反対勢力が優勢なのかな。防犯ブザーを渡しておいて良かった。まぁ、いずれにしても俺の仲間を襲ったことは死ぬほど後悔してもらおうか。)
高志はプラズマブレードで襲撃者達を剣ごと、あるいは盾、鎧ごと斬っていく。
剣技の未熟さは時間を操ることでカバーし、圧倒的な防御力と攻撃力で襲撃者達を圧倒していく。
襲撃者達は逃げ出そうとしたが、高志と反対方向にミンクとリースがいるため、逃げ道は無かった。
「くそっ、剣を斬るなんてありかよっ!」
「しかも、こっちの剣は全部弾かれる。どうなってるんだコイツは!」
襲撃者達も、そのあまりの理不尽な強さに狼狽し、毒づく。
そして襲撃者達は次々と武器を壊されるか、倒されていく。
最後まで残っていた者も、状況をみて勝ち目もなく、逃げ切れないと悟って降伏した。
「助かった。これで貴方に助けて貰ったのは二度目か。」
リースは高志に向かって感謝の言葉を掛ける。
その表情はどことなく熱を帯びており、羨望と嫉妬を合わせたような感じで、その視線を向けられた高志は一瞬ドキッとした。
「いや、当然のことをしたまでだ。礼を言われるほどではない。」
多少うろたえながらも、そう応える。
(・・・こんなときになんだけど、リースってやっぱり女の子だったんだな。)
その後、高志達は襲撃者を捕らえ、城の衛兵に任せた。
高志はすぐにアレスの元に戻ることにした。
(・・・さて、何て言い訳するべきか。)
そう、高志は防犯ブザーからの信号を受け取ると、出かける準備をしていたアレスに一声掛けてそのまますぐに瞬間移動でサリーのもとへ駆けつけたのだ。
言い訳を考えながらアレスの家へと戻った。
「ごめん、アレス爺さん、待たせちゃって。」
そう言って準備を終えていたアレスに謝る。
「どうしたんじゃ一体?何か忘れ物であったのか。」
「いや、ちょっと、その急用で・・・。」
結局イマイチ良い言い訳が思いつかなかった。
「こんな時に、こんな所でか?まぁ、いい。今はそれどころではないじゃろ、さっさと行くぞい。」
と、あまり深く突っ込まれなかった。
(・・・よかった。こんなときにうまい言い訳ができるようにしておかないとな。まぁ、今後の課題ってことで。なんだか課題が溜まる一方の気がするなぁ。)
そして高志とアレスは馬車で王都に向かった。
移動中、高志は自分がどう対応すべきか悩んでいた。
(・・・さて、いよいよ戦争か。どうするべきなんだろうか。部外者の俺が関与していいものなんだろうか。もしも、知り合い全員を守るなら、変身して敵を皆殺しにでもするのか?いやいや、大量虐殺するほど度胸も覚悟もないしなぁ。となると、みんなを連れて逃げるか。)
「アレス爺さん、もしも大切な人を守るために敵対してる人を殺す必要があったら、殺すべきなのかな?」
悩みながらアレスに問いかける。
「ふむ、そうじゃのぉ。じゃが、それは最後の手段じゃろう。」
「まぁ、そりゃあそうかもしれないけど。」
「本当に憎むべき敵なんぞ、そうそうおらんもんじゃ。何か争いの原因があるならそれを解消するのが一番じゃ。」
「じゃあ、この戦争を終わらせるにはどうすればいいのかな?」
「そんなもんは知らん。」
「まぁ、そうですよね。」
「じゃが、知ろうとする努力すらしなければ、何も変えられんぞい。それに、確かに戦争の原因となっているものを何とかするのが王道じゃ。じゃが、戦争を止める方法はそれだけではないかもしれんぞ。」
「そうか、そうですよね。」
「なんじゃ、さっきから変な奴じゃのぉ。」
意を決したように高志はアレスに向かって言う。
「いや、俺なりにこの戦争を止める努力をしてみようかと。爺さん、爺さんの知ってる限りの情報でいいから、ドラグレイス軍のことを教えてくれ。」
そして、アレスの話を聞いた高志は一つの作戦を思いついた。
(・・・ま、これなら取り合えず戦争を止められそうかな。出来るだけ犠牲は減らしたいが、ゼロには出来ないだろうし、覚悟は必要だ。)
その後、王都についた高志とアレスはリースのもとへと向かった。
いよいよ、次回が山場に(`・ω・´)
・・・なる予定(ノ∀`)