第二話
今回も短めかもしれません。
なかなか区切りがいいところまでだと、いい感じの長さにできないものですね。(´・ω・`)
泊めてもらう為に、クエスト?を受けた高志は、早速、見回りにいくことになった。
畑荒らしと聞いて、夜中に見回りをするのかと思い込んでいたが、話を聞いてみると、被害は夜よりも昼の方が多いのだという。
そして荒らされるのはサツマイモ畑だけだという。
(・・・しっかし、何で獣が野菜を狙うんだろなぁ。特に狼なんて肉しか食わないような気がするんだけどなぁ。地球の狼とは違うのかもしれんなー。
まぁでも、引き受けた以上は、やらないとな。ゲームのクエスト感覚でやってみるかー。)
小さいとはいえ、流石に素人だけで野生の獣をどうにかするのは無理だろうということで、村で狩人をしているダンという人物と会うことになった。
サリーに案内されて、ダンが見回りをしている畑に着くと、さっそくそれらしき人物が見つかった。
年の頃は30代後半だろうか。
短髪で、小麦色の肌をしていて、引き締まった体は筋肉美に溢れていた。
腰には短剣らしきものと、背中には弓矢を背負っていた。
「こんにちは、ダンさん」
と、サリーが気軽に声を掛ける。
「よう、サリー。そいつは?」
「こちらは、旅芸人のタカシさんです。」
紹介されて、あわてて自己紹介する高志。
「はじめまして、旅芸人の高志と申します。」
「随分変わった格好してると思ったが、旅芸人か。旅芸人がこんなところに何のようだ?」
狩人のダンとしては、畑に旅芸人がくるのが疑問なのだろう。
「実は、村長の家に泊めてもらう代わりに、こちらで畑荒らしを捕まえる為の手伝いをすることになりまして」
「ふむ。まぁ、そういう事なら手伝ってもらうか。なぁに、基本的にはオレが獲物を仕留めるから、見つけたら教えてくれればいい」
「分かりました。出来そうであれば、私の方で捕まえるなり、退治するなりしても良いですか?」
高志としては、狼くらいなら何とか出来るだろうと踏んでの答えであった。
「ほぉ、少しは腕に覚えがあるのか?まぁ、野生の獣ってのは見た目よりも遥かに手強いから気をつけろよ。無理そうなら遠慮なく助けを呼べばいい」
しかし、ダンとしては、血気盛んな若者には良くある恐れ知らずか、功名心だろうと思っていた。ダン自身も昔はそんなタイプの若者だったのだ。
「無理そうであれば、すぐに助けを呼ぶので大丈夫だと思います。その場合逃げられてしまうかもしれませんが」
(・・・問題は、そうそう簡単に見つかるかどうかだなぁ)
そう答えると、ダンは納得したようだった。
「それでは、私はこれで失礼しますね。タカシさん、頑張ってくださいね。」
と言って、サリーは家に帰っていく。
(・・・ああ、やっぱり帰っちゃうのね)
内心しょげる高志であった。
「よし、それじゃあ、早速始めるか。タカシはあっちの小屋の辺りから監視していてくれ。」
ダンが指した先、100メートルほど先には、ほんとうに小さい小屋があった。恐らくは農具を入れておいたりするものであろう。
「分かりました。ちなみに、いつごろまで見張ってればいいのでしょうか?」
(・・・時計とかあるんだろうか?)
「日が沈むまでやる必要はないが、夕方の鐘がなるまででいい。鐘の音が聞こえたら、ここに戻ってきてくれ。」
「では、その頃に。」
(・・・やっぱり、時計ってものは無いかもしれないな。この村では、鐘の音で大体の時間がわかるようになっているのかもしれない。時間自体を調べるのは日時計か何かあるんだろう。)
高志は、言われた小屋に辿り着くと、早速、生体レーダーを起動した。
(・・・さてさて、小動物で検索してみるか)
すると、近くの森に数十件の反応があった。
(・・・多すぎて、これじゃあ、使い物にならないなぁ。獣が増えすぎて畑のを狙ってきてるかもしれないなぁ。
食べれる獣とかいるんだろうか? 捕まえれば調理してくれるかなぁ。
さすがに自分で解体するのは、キツいしなぁ。)
などと暢気に考えていると、遠くに獣らしき姿が見えた。
どうやら、噂の狼のようである。
小さいといっても、それなりの大きさはあり、毛並みは見たこともない濃い青であった。
「ワォーン!」
一声吼えたあとに、狼は森の茂みに逃げ込んだ。
ダンがそれを見つけ、追いかけていく。
高志も、慌てて後を追うようについていく。
高志も追いかけているが、なんとか視界にダンの姿が見える程度の距離だ。
ダンの方も走りながら弓を撃つことはなかなかできないようだった。
狼は時折、吼えてから、森の奥へ奥へと進んでいく。
(・・・ん? 何かおかしくないか? 何でわざわざ発見されるように吼えたんだ? しかも、振り切るつもりもなさそうな? ・・・誘っているのか?)
と、疑問に思った高志は、一瞬考え込んだ後、生体レーダーを確認した後、急いで畑に戻った。
(・・・やっぱり)
畑に戻ると、そこに見えたのは、小さな猪達だった。
どうみてもまだ子供で、数匹の猪達が仲良く芋掘り?をしていた。
どうやら、こちらには気づいていないらしい。
(・・・なるほど、狼は囮でこっちが本命かぁ。そりゃあ、そうだよなぁ、あの狼は畑になんもしてなかったし、動きが誘っているよう感じだったし。にしても、狼と猪って仲が良いのか?)
小さい猪くらいなら、簡単に捕まえられるだろうと思い、こっそり近づいて捕まえることにした。
(・・・さて、殺すのも可哀想だし、何か生け捕りにするアイテムはないかなぁ)
と、捕獲用アイテムの検索をしていると、背後から突然何かに襲われた。
当然、襲ってきたソレは、エネルギーフィールドに弾かれた。
そして、距離を置いて唸り声を上げる。
「ガルルルゥ!」
どうやら、狼が戻ってきたようだった。
「戻ってきちゃったかー」
と、高志が呟いている間に、猪達は芋を咥えながら逃げていく。
「フン、魔法か、多少はやるようだな」
「・・・え?」
(・・・まさか、狼が喋った? いやいや、いくらなんでもそれはないだろ)
「まさか、お前が喋ったのか?」
そういって、目の前の狼を指差す高志。
「愚弄するな、人間よ。我はただの狼などではない!高貴なフェンリルの一族。貴様ら人間にどうにかできると思うなよ?」
「ただの狼じゃなかったんだなー」
言った途端、怒ったようにフェンリルが襲ってくる。
今度は体当たりではなく、牙で噛み付いてきた。
バシッ
それでも結果は変わらず、エネルギーフィールドで弾かれる。
「いやいや、学習能力ないのか、お前は」
「おのれ、小ざかしい真似を!」
悔しがるフェンリル。
「だから、なんもしてないだろ!」
見た目は、大型犬のサイズだが、言動からすると、子供のようなイメージを受ける。
ちょっと可笑しくなってきた高志は、話してみることにした。
「というかだな、なんでその誇り高きフェンリル様が、畑荒らしの手伝いなんてしてるんだ?」
「フンッ。・・・まぁ、いい、教えてやろう。我が一族は、何百年も前からずっと、この森を守護してきた。だが、最近この森に忌々しいワイバーン共がやってきたのだ。」
(・・・あのワイバーンか、それに『共』ってことは複数いるってことなのか)
「無論、よそ者に好き勝手させる我が一族ではない。だが奴らには空を飛ぶことが出来る翼がある。そのせいで、森の者が襲われても我等が駆けつけたときには、既に空の上というわけだ。」
「そりゃあ、空飛べる相手にはそうなるわなぁ。ってか、仮に間に合ったとしても、勝てるのか?」
正直、高志としては、このフェンリルがワイバーンに勝てるとは思えない。
「我も多少は魔法が使えるが、ワイバーンには・・・無理かもしぬが、父上ならば倒せるだろう。」
ちょっと言い淀みながら答える。
「魔法ねぇ? まぁ、お前には荷が重いだろうな。ははぁん、そーゆーことか。」
なんとなく事情を察した高志。
この時、高志は魔法なんてあるわけがない、子供の虚勢というか妄想だろうと、あまり気にかけていなかった。
「それで、お前じゃワイバーンは倒せないから、代わりに森の動物達の為に、こうやって囮役をやってるわけだ。」
そう言って、ニヤニヤしながら、フェンリルを見つめる高志。
「だ、黙れっ!人間め! この役割もとても重要なのだ、パパもそう言っていた!」
慌ててパパといってしまうあたり、どうやら図星だったらしい。
「そ、それにあの子達は、親をワイバーンに殺されている!あまり森の中をうろうろするのは危険なのだ!だから早く食べ物を手に入れて巣穴に帰らなければならないのだ!」
その後もゴニョゴニョと言い訳をしている。
(・・・うーん、なんとか解決できそうなだなぁ。要は、あのワイバーン達を倒すなり、追い払えばいいんじゃないかなぁ?)
人語を話すフェンリルと、小さい猪達をみてしまった後では、ワイバーンを何とかする方を選んでしまうのは人情だろう。
「よし、わかった。それじゃあ、ワイバーンはなんとかしてやる。だから、もう村の畑には手を出すな。」
「ほざけっ! 多少魔法が使えるようだが、その程度で人間がワイバーンに勝てるものかっ!」
当然、フェンリルとしても人間、それもこんな貧弱そうな若者一人が、ワイバーンに勝てるわけがないと思っている。
(・・・ん~、いや、実は既に一匹倒してるんだけどなぁ。まぁ、言ったところで普通は信じないよなぁ。)
「わかった、わかった。じゃあ、こうしよう。3日だけ待ってくれ。その間にワイバーンはなんとかするから。」
「む、長い、1日でなんとかしろ! 3日も経てばあの子達が飢え死にする!」
偉そうにフェンリルが答えた。
(・・・なんで、コイツが偉そうなんだ。まぁ、確かに3日も食料がないと厳しいだろうなぁ。)
「わかった、わかった。じゃあ、明日またここに来いよ。ワイバーンを倒したのを確認したら、約束は守れよ?」
「フンッ、承知した。まぁ、無理だとは思うがな!」
やはり、偉そうなフェンリルであった。
そしてフェンリルも森へ消えていってしまった。
(・・・さてさて、難易度が格段に上がった気がするのは気のせいだろうか。)