第二十八話
なかなか時間が取れず更新が遅れています(´・ω・`)
今回、予約投稿なるものを試してみます(`・ω・´)
貴族のお出迎えということで、豪華な馬車でも来るのかと思っていた高志だったが、リースは徒歩できた。
(・・・ああ、徒歩か、トホホ・・・。)
「それじゃあ、早速向かうとしよう。ここから歩いて2時間も掛からないと思う。」
リースはそう告げると早速歩き出した。
「それにしても、随分急ぐんですね。何か理由でもあるんですか?」
高志が疑問を口にするとリースは、ややあって答えた。
「まぁ、本当ならばもっと早く行くべきだっというか、いや、行かないで済むならそれに越したことはないんだが・・・。」
リースの答えはよくわからず、沈黙していると、リースは続けた。
「いや、すまん。何を言ってるかわからないだろうな。つまりだ、本当は行くつもりはなかったが、行かないと打つ手が無いと分かった。それに少しくらい急いだ所で、そんなに意味はないのも分かっている。だが、急がないわけにはいかない、使命感のようなものがある。」
まだ、うまく伝えられていないかと唸るリースだったが、高志が答えた。
「まぁ、言いにくいこともあるだろうけど、要は出来れば行きたくなかったけど、行かざるをえない状況になったってことかな?」
「・・・そう、そんなところだ。まぁ、秘密にしておいても、もしかすると意味がないかもしれんがな。」
と、リースはまた謎めいたこと口にした。
(・・・まぁ、良く分からないけど、色々と大変なんだろう。)
そして、しばらくすると、目的地らしきものが見えてきた。
そこは専用の墓地であるらしく、入り口には兵士が2名見張りについていた。
近くに見張り小屋のようなものもあり、そこにも数名いるような気配がある。
リースが先頭になって進むと、兵士は黙って敬礼のようなポーズをして出迎える。
(・・・おお、なんかいいな。VIP待遇って感じだ。)
そんな中、さも当然のようにリースは奥へと突き進んでいく。
高志達も遅れないようについていくと、そこには小さい崖に洞窟がぽっかりと口をあけていた。
「なんか、墓地ってよりは、本当にダンジョンっていうか、洞窟って感じですね。」
口にしてからちょっと失礼だったか?と思う高志だったが、リースは気にせず答える。
「まぁそうだろうな。元々、この洞窟にあった巨大な魔具で力を得た先祖が、この場所を気に入ってそのまま墓にしたらしい。」
「へぇ。もしかして、その巨大な魔具に要があるのかな?」
「まぁ、端的に言えばそうなるな。巨大な魔具らしく、持ち出すこともできないので、そのままにされている。そしてそれを使える人間も限られているらしい。」
「うーむ。どうにも、この洞窟は見覚えがあるような、ないような・・・。」
シェリアがうなっていた。
「忘れるような所なら大したことないのだ。」
ミンクの言葉にリースは反応した。
「一応、うちの祖先の墓になっているのだが・・・。」
「じゃあ、大したことあるからシェリちゃがボケて「思い出した!」」
ミンクの台詞はシェリアの言葉で遮られた。
「随分前に来たことがある。もっとも、そのときは墓になんてなってなかったし、王都もまだまだ村みたいな規模だった頃の話だ。」
「それじゃあ、数百年前とかってことですかね?」
「んむ。そういえば、何かがあったような気がするんだけど、何だったかな・・・。」
「まぁ、既に来たことがあるなら心強い、今は覚えていなくとも、何かあれば思い出す切欠になるだろう。」
「リースちゃんも意外と能天気なのだ。」
ミンクがちゃかす。
「気にしてもしかたあるまい。どのみち行くしかないのだから。」
リースは覚悟を決めて先に歩き出した。
~~~~~
その夜、サリーは悪夢を見た。
高志達が何者かに捕らわる夢だった。
そして、目が覚めると夢であったことに安堵した。
だが、胸騒ぎは消えなかった。
「ただの夢なんだから気にする必要もないよね。でも、もしも、この夢が何かを暗示しているのだとしたら・・・。」
たかが夢と割り切ることもできずに悶々としていた。
しかし、予定通り店にいき開店の準備をしていたとき、声が聞こえたような気がした。
『急いで』
最初は気のせいかとも思ったが次第にその声ははっきりと聞こえるようになった。
いよいよただ事ではないと感じて、サリーは店を飛び出した。
不思議なことにどこに向かえばいいのか分かる気がした。
そして半ば操られるように走り出した。
~~~~~
高志達は、リースについていくように歩いていた。
「そんなに深いダンジョンではないはずだから、そろそろ目的地が見えてきてもいいと思うのだが・・・。」
「でも、魔物とかは全然出てこなかったですね。なんか拍子抜けのような。」
「確かに。私が聞いていた話では、多少魔物も出没するという話だったが。」
リースも何か納得がいっていないようだった。
「それなんだが、どうも最近だれかがこのダンジョンに入った形跡があるようだが。その者が退治していったのではないだろうか?」
シェリアがそう言うとリースが驚くように言う。
「なんだって? そんなはずはない、ここは誰でも入れるような場所ではない。我が一族以外の者は基本的に立ち入り禁止にしている。」
「じゃあ、きっとリースちゃんの家族の誰かがきたのだ。」
ミンクがいうと、リースはさらに否定する。
「いや、普通の墓参りとは訳が違う。うちの者が来るとは思えない。行くならそれなりに一言私にもあるはずなのだが。」
(・・・なんだか嫌な予感がするなぁ。貴族のお家騒動に巻き込まれてたりしないよなぁ。)
高志は嫌な予感を振り払いつつもリースに続いていく。
しばらくすると、洞窟の壁が土から岩に変わりだした。
そして、更に進むと岩のタイルで出来ている通路となった。
先には部屋の入り口らしきものが見えた。
「おそらく、あそこが目的地だ。」
リースはそう言うと入り口に向かって進んだ。
入り口には何か意味深げな仕掛けがあった。
リースはそれを分かっていたかのように触り始める。
「ここは特殊な仕掛けになっていてな。決められた方法で操作しないと罠が発動するようになっている。」
しばらくリースが操作しているとカチッという音が響いた。
「これで開いたはずだ。」
そして、入り口の扉を押すとあっさりと開いた。
4人は中に入っていった。
そしてそれを見ている男がいた。
「悪く思うなよ。」
そう呟くと男は静かな足取りで入り口にたどり着くと、仕掛けを操作した。
すると、扉は閉まった。
「しまった!」
リースが気づいて叫んだが、無常にもその罠が発動してしまった。
その罠は一度発動すると部屋の内部の時間が止まってしまう。
いかなる屈強な力をもっていようと、空間転移の能力があろうと、一度閉じ込められた者は決して自力で外にでることはできない。
さすがの未来兵器も時間を止められては無力だった。
罠の発動を確認した男は、すぐにダンジョンの入り口まで戻った。
そこで入り口の警備兵と軽く話してから、男達は更に入り口付近に仕掛けを施しに掛かった。
「ここまでする必要があるんですかね。」
警備兵の一人がぼやいた。
「念には念を入れろとのお達しだ。入り口をふさいでしまえば、だれも中に入ることもないだろう。」
男は答える。
「しっかし、いいんですかね。ここって王家の墓ですよね。そこを破壊しちゃって。」
「なぁに、破壊するのは入り口だけ。墓の本体は洞窟の奥だし、無事だろう。気にすることはない、ただ洞窟の入り口をふさぐだけだ。」
「よし、そろそろいいだろう、発動させるから入り口から離れろ。」
そのとき、男と警備兵達が入り口から離れたところで、一人の少女が洞窟の中へ走りこんだ。
あまりのことに男達は動けなかった。
「あれ?」
警備兵の一人が間の抜けた声を上げた。
「誰か入っていったけど・・・。」
「まぁ、構わぬ、どうせ女一人が入っていったところで何もできまい。中の仕掛けもわからぬだろうし、この入り口も塞いでしまえば終わりだ。」
本来であれば、追いかけて始末するべきだったのだろう。
だが、この時、男は手を抜いた。
「よし、発動するぞ。」
そして数秒後、大きな爆発音とともに、入り口は崩れ塞がってしまった。
洞窟に走りこんで入っていったのはサリーだった。
突然の爆発音に驚き、入り口のほうへ引き返してみると、既に崩れており、出られる状態ではないことを察した。
サリーは意を決して洞窟の奥へと進んでいった。
しばらく進むと、扉の仕掛けがある場所までたどり着いた。
そして、仕掛けを操作した。
なぜかどこをどうすれば良いのか声が聞こえたのだ。
しばらくすると、カチッという音が響いた。
恐る恐る扉を開くと、そこにはリースが中から扉に向かって走りだしているところで、二人はあわや激突するところだった。
「キャッ」
「うわっ」
二人はかろうじて激突を避けた。
「あれ?サリーどうしてここに?」
当然、高志もサリーに気づいた。
「いえ、何となく胸騒ぎがして、・・・きちゃいました。」
どことなく気まずそうに答えるサリー。
「いや、助かった。サリー、君がきてくれなかったら我々はここに永久に閉じ込められたかもしれない。」
そして、リースはこの部屋のトラップについて説明する。
要は扉が閉まると、部屋の中の時間が止まるのだという。
それを聞いた高志はゾッとした。
(・・・うわー、さすがに時間止められたら瞬間移動でも出れないし、お手上げだったな。)
「念のために扉が閉まらないようにしておこう。」
そう言って高志は適当にアイテムを召喚すると、扉が閉まらないように扉の隙間に詰めたりしていた。
「あ、それと、洞窟の入り口ですが、崩れて出れなくなってます。」
サリーが思い出したように言う。
「まぁ、それなら何とかなるだろう。それよりも、今はここに来た本来の目的を果たした方が良いのではないか?」
シェリアが言うと、リースはハッとしたように、急いで部屋の奥へ向かう。
奥には、巨大な何かが存在していた。
それはいかにも何かあると思わせるのに十分なものだった。
「これは我が祖先が力を手に入れる切欠となったものだと聞いている。もしもの時にこの魔具を使えば偉大な力が得られると伝えられているのだが、実際に手にしたのは極一部の人間だけだった。最近では、私の父がそうだったらしいが、その前は100年以上になるらしい。」
「なるほど。必ずしも手に入れられるわけではないということか。」
「あたしも試してみたいのだ。」
ミンクは興味津々だった。
「はははっ、まぁ、試すだけなら構わないさ。私も正直に言えば、まだ半信半疑だ。」
リースはそう言うと、魔具を発動させるべく準備を始めた。
しばらくするとリースは準備が終わったのか、一旦手を止めて言った。
「さて、これからいよいよ試してみるが、何が起こるかわからないから注意してくれ。」
そう言うと4人は緊張の面持ちでリースの後ろ姿を見つめる。
リースが何か呪文のような言葉を唱えてると、その巨大な魔具は発動した。
すると一人の老人が現れた。
そして老人は告げた。
「これを見ている者が我が子孫であること祈る。」
しかし、老人は薄く、幽霊のように透けていた。
リースはじっとその老人をみつめている。
「ワシの力の秘密をこの魔具に託す。もしも、才があればお主にもその力が使えよう。」
老人がそう言うと、魔具はよりいっそう光を増してリース達を包み込んだ。