第二十七話
今回は、新しい展開の序章、みたいな感じです(´・∀・`)
教会襲撃事件があった夜。
高志は今後の計画について考えていた。
(・・・果たしてどうやって進めたもんか。このままじゃ、人気飲食店の店長で終わってしまう。インフラ系の事業をやるにしても莫大な費用が必要だし。今のペースじゃ何年後になるかわかったもんじゃない。)
結局その日は名案が浮かぶ訳でもなく、そのまま翌日になってしまうのだった。
そして、運命の神に導かれるかのごとく、徐々に新たな展開をみせる。
その日はアレス邸でいつものように朝食をとった後、一人の来客があった。
騎士のような格好をし、凛々しい姿でありながら、まだまだ幼さが残っている。それでありながら、だれが見ても美形と思うだろう顔だった。
「おや、ここはアレス殿のお宅だったはずだが・・・。」
来客者の若い騎士のような格好した人物は戸惑ったように告げる。
「そうなのだ。ここはアレスじーちゃんちなのだ。」
出迎えたミンクが答える。
「では、アレス殿に取り次ぎをお願いしたいのだが。」
「アレスじーちゃんは引っ越したから、ここにはいないのだ。」
「なっ、どうしてもアレス殿にお会いしたいのだが、何とかならないだろうか?」
「そう言われても困るのだ。」
「せめて引越し先を教えて頂けないだろうか?」
「引越し先までは知らないのだ。」
と、ミンクと来客者が困っているところに、入り口の様子を見に来たが高志が声を掛ける。
「ん?どうかしましたか?って、確か、リース・・・さんでしたっけ?お久しぶりです。」
来客者の正体は、王都グリゴールにきてから、就職する際に知り合った貴族の新米騎士、リースであった。
「ああ、確か、メスレク神殿のところで一緒だった・・・。」
リースは神殿に向かう際に少し話しただけだったので、高志の名前までは覚えていなかったようだ。
一方、高志のほうはその後、変身した状態だったがトラブルの仲裁?に入っていた事もあり何とか記憶に残っていた。
「タカシです。今日はどのような用件でこちらに?」
「ああ、そうだった、失礼した。実は、アレス殿に頼みたいことがあったのだが、どうやら既に引っ越されたらしくて難儀していたところだ。何とか連絡を取れないだろうか?」
(・・・そういや、アレス爺さんが貴族が訪ねてきたら助けになってやってくれとかなんとか言ってたなぁ。あれってリースの事だったのか。)
「それなら、アレス爺さんから伝言というか、代わりに力になるように言われてるから、相談に乗るよ。」
高志がそう答えると、リースはしばらく悩んだあと答えた。
「そうか、それではお願いする。」
その後、高志はリースを居間まで案内した。
サリーと、シェリアも様子を伺いにきたついでに会話に参加することになったので、居間には5人が集まることになった。
それぞれを簡単に紹介したところで、高志が声を発する。
「それで、相談というのは?」
「実は、あるダンジョン、と言っても墓なのだが、そこに一緒に行って欲しい。」
「なるほど。でも、それならアレス爺さんでなくても、適当に冒険者ギルドとかで人を雇ったりしてもいいのでは?」
高志が尋ねる。
「普通のダンジョンなら、それでもいいのだが、ちょっと事情があってな。信頼できる者ではないと連れて行くわけにはいかないのだ。それに墓には仕掛け等があるらしく、出来れば経験豊富な人が望ましい。魔物も出る恐れがあるので当然戦力も欲しい。そう言った意味で、全てを兼ね備えているアレス殿が最適だったのだが・・・。」
「なるほど、事情は大体わかりました。」
話しているうちにリースの”上流階級のお人”という雰囲気のせいか、高志の応対も段々と丁寧になっていた。
「経験豊富って意味なら、シェリちゃがいれば大丈夫なのだ。何といっても長生「ミンちゃん」」
ミンクは相手が貴族であっても変わらないようだった。
恒例の高齢行事はおいといて、高志は話を進める。
「シェリアさんは冒険者としては経験豊富ですし、戦力ならシェリアさんは勿論、ミンクさんも頼りになりますよ。信頼という点では、アレス爺さんに託されたという意味で信頼してもらうしかありませんが。」
そう答えると、リースはしばらく悩んだ後、答える。
「そうか・・・。それなら手伝って貰えるだろうか?」
「もちろん!家賃代わりみたいなもだしって、シェリアさんも、ミンクさんもいいかな?」
勝手に話を進めてしまっていたので、一応シェリアとミンクにも確認する。
「問題ない。」
「大丈夫なのだ。」
この時、サリーはどことなく気落ちした感じであった。
それをみた高志は、自分の台詞にサリーが含まれていないことに気づいて慌ててフォローする。
「サリー。悪いけど、留守にしている間、お店のほうをお願いしたい。昨日みたいなことがまた何か起こるかもしれないし。何かあったら例のものを使ってくれ。」
例のものとは、以前サリーに渡した防犯ブザーだ。
「うん。それじゃあ、そろそろお店のほうにいくね。」
サリーはそう言うと、そそくさとその場を逃げるように去っていった。
(・・・うーん、なんか失敗したかなぁ。サリーもダンジョンに誘うべきだったか。でも、店と子供達の方も心配だし。サリー自身もまだそれほどLVが高いわけでもないし、これが最善の選択だったはずだよな?)
と高志が悩んでいる間にも話は進行していく。
「それじゃあ、すまないが、早速話を進めさせてくれ。」
リースが話を進めた。
「出発の日時は、これからすぐ。と、言いたいところだが、そちらにも準備があるだろう。だが、出来るだけ急ぎたい。明日の朝一番でどうだろうか?」
「分かりました。シェリアさんと、ミンクさんもいいかな?」
高志が念のために確認を取ると、二人も頷く。
「じゃあ、それで頼む。あと、ダンジョンといっても墓であることに変わりないし、目的地までの距離はそんなに遠くない。恐らくは日帰りできるだろう。キャンプの用意は必要ない。」
「ちなみに、目的地までと、そのダンジョンではどんな魔物がでてくるんでしょうか?」
「目的地までは魔物に会うこともそうそうないだろう、すぐ近くだしな。それと言い忘れていたが、その場所は他言無用だ。」
「わかりました。」
(・・・まぁ、貴族の墓とかなら金目の物も一緒に埋葬されてるかもしれないから、そういうもんなのかもしれないな。)
シェリアとミンクも頷く。
「ダンジョン内では、恐らくアンデット系の魔物がでるはずだ。出来れば神父や、武器に魔力を付与出来る魔法が使えるといいのだが・・・。」
リースがそこで期待の篭った視線をシェリアに向けると、シェリアが答えた。
「魔力付与なら出来る。効果時間はそれほど長くはないから、戦闘の度に掛けなおす必要があると思うが。」
「そうか、助かる。一応メンバーはこの4人でいくことになるだろう。そのつもりでいてくれ。」
そう言ったリースはなんとなくバツが悪そうな顔だった。
(・・・お偉いさんの貴族なら、凄腕の執事とかいたりしないのかな。いや、それはさすがに漫画の世界か。)
「出来ればもう少し早く行きたかったのだが、なかなかそうもいかない事情もあったのでな。それじゃあ、今日のところはこれで失礼する。明日は私がここにくるので準備をして待っていてくれ。」
そう言うと、リースはすぐに帰っていった。
「なんだか忙しそうな人だったのだ。」
リースが去ったあとミンクは呟く。
「うーん、何かどこかで会った事があるような、似た雰囲気の人を見たことがあるような気がするんだが・・・。だれだったかな。」
シェリアが思い出そうとしていると、ミンクが割り込んできた。
「シェリちゃ、もうボケてきた「ミンちゃん!」」
ミンクの台詞は、どこと無くいつもより鋭いシェリアの声で中断された。
「まぁ、それにしても、貴族で、騎士であのカッコよさ、女の子にモテモテだろうな。」
と、羨ましそうに高志は呟いた。
「何を言ってるのだ。リースちゃんは女の子なのだ。」
ミンクは不思議そうに言う。
「え!?本当に!?」
高志はてっきり、リースは男だと思い込んでいたのだ。
(・・・いや、まぁ、言われてみればそんな感じもするか。)
「でも、どうして分かったんですか?」
「女の勘が告げているのだ!」
ミンクが自信満々に言い切ると、高志は噴出した。
”女の勘”という言葉とは遠い位置に存在していそうなミンクが言うと非常に違和感があったのだ。
「まぁ、ミンちゃんの根拠なんてそんなもんだよ。でも、意外と当たるんだよね、ミンちゃんの勘は。」
とシェリアが補足すると、ミンクは更に自信ありげな顔で続けた。
「そうなのだ、勘を馬鹿にしちゃいけないのだ。ついでに、リースちゃんは他にも何か大きな隠し事をしてるのだ。」
「まぁ、それはなんとなく分かるけど。それが何なのかは勘で分からないの?」
と、高志が聞くと、ミンクはしばらく考え込んでから答えた。
「・・・きっと、美味しいものを隠してるのだ!間違いないのだ!」
「それはミンクさんの願望なんじゃ・・・。」
次の日、リースは約束通り朝一でやってきた。
そして一行はダンジョンへと向かうのだった。
次回で物語が一気に進む・・・と、いいなぁ(;・∀・)