第二十五話
またまた遅れました(´・ω・`)
というか、土日が不規則な生活に(ノ∀`)
とあるお屋敷の中。
「ええいっ!この役立たずめ!ガキを脅すこともできんとは!」
裕福な格好をした男が、部下をしかりつけていた。
「も、もうしわけございません、グリディー様。邪魔者が入りまして・・・。」
「もういいわっ!貴様の代わりなどいくらでもいるのだ、もう引っ込んでおれ!」
そう怒鳴られると男の部下はすごすごと退散していく。
「しかし、あの者もそれなりには腕の立つ者です。相手はあなどれないかと。」
グリディーの傍らにいた男が言った。
「ふんっ、まぁ、そうそう何度も邪魔されることはあるまい。クラークよ、もう一度奴にやらせろ。念のために腕の立つ者を数人つけておけ。」
クラークと呼ばれた男が答える。
「わかりました。では、今度は私も行って参りましょう。これ以上売り上げをあのクーシアとかいう新参の店に取られているようでは我らがグリディー商会としても示しがつきません。」
「ふむ。たかが飲食店の一つや二つどうってことはない。が、確かに示しがつかんな。この王都で商売を仕切るのは我が商会であると見せ付けねばならぬ。今度は確実にやれよ。場合によっては殺しても構わん。最悪、レシピが手に入らんでも作る人間がいなくなれば、奴らもどうしようもあるまい。そうなれば必然的に客足は元通りだ。」
グリディーが薄ら笑いを浮かべている中、クラークは部屋を後にした。
「ふんっ、無能な奴め、あれほど人を集めることができる料理のレシピの価値もわからんとは。そしてそれを複数も有しているとなると、必ず何かあるはずだ。それにしても、そろそろ奴も用済みか。」
人知れず呟くクラークであった。
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子供達が襲撃を受けてから次の日、高志は子供達が怯えているのではないかと思い、教会にまで出向いていた。
(・・・場合によっては、しばらくは休ませてあげないといけないし、最悪の場合は別の労働力を考えないといけないな。)
しかし、いざ教会についてみると、その心配は杞憂に終わることになる。
「ふははははっ!ヒーローにかなうもんか!」
「ちくしょー!おぼえてろー!」
見ると、子供達が何やらはしゃいで遊んでいた。
所謂ヒーローごっこだ。
「今度は、僕がヒーローやる番だ!」
「駄目駄目、いまのはちょっと失敗だったからもう一回!」
「えー、ズルい!」
といった感じで子供達が遊んでいる。
さすがにヒーローごっこで遊んでいるのは子供達の中でも低年齢層だけのようだったが。
「こら!ちゃんと順番にやりなさい。」
年長者の一人であるミネルヴァはしかりつけていた。
(・・・どうやら心配は杞憂に終わったようだけど、自分が元ネタだと思うとちょっと恥ずかしいな・・・これは。)
「あ、タカシさん、すみません。これから準備してクーシアに行こうと思ってたところです。」
ミネルヴァが高志に気づいて声を掛けてくる。
「あ、いや、ちょっと寄り道してきただけだから、慌てなくていいよ。それより、あれは・・・?」
と、子供達が遊んでいる方を指す。
「あ、実は、昨日変な人たちに襲われそうになったんですけど、助けてくれた人がいて、その話をしたら、ああなっちゃって。」
「そ、そうか。まぁ、無事でなによりだね。」
「まぁ、オレが追っ払おうと思ってたんだけどな。」
いつも間にかもう一人の年長者のマルスが現れて付け足した。
今年で15になる二人は、この教会の子供達の中では中心的な存在だ。
中でもマルスは負けず嫌いで暴走気味なところがある、いわゆる典型的なガキ大将タイプだった。
それに対してミネルヴァは、暴走するマルスを抑えるちょっと気の強いお姉さんタイプであった。
(・・・そいや、昨日の連中は子供達の帰宅ルートを知っていたってことはこの教会も知られているんだろうな。となるとここを襲われると厳しいな。)
その後、心配しつつも高志は子供達と共にクーシアへ向かった。
再度襲撃があるかもしれないと心配していたが、出勤の時は特に何事も起こることはなかった。
そして店も閉店し、日も落ちた頃、子供達は店の後片付けをしていた。
その頃、高志はレーダーに昨日の襲撃犯の行動経路を確認していた。
(・・・さて、昨日の奴らの根城はあの辺りか。確か大きなお屋敷があった場所だと思ったけど、黒幕は貴族か金持ちの商人かな?)
高志がその屋敷に向かうと否応無くその大きな屋敷が目に入ってきた。
(・・・さて、どうするか。いきなり乗り込んで脅しを掛けるか?とはいっても、ここのトップが誰か分からないし、そのトップが命令したことかどうかもわからないしなぁ。こんなことなら盗聴器も付けとけばよかった、失敗したなぁ。)
屋敷を遠巻きに見ていると高志のほうがむしろ怪しい犯罪者のようだった。
だが、そこで悩んでいるうちに屋敷の方に動きがあった。
数人の男達が裏口から出て行った。
(・・・ん?何だ、昨日の奴が裏口から出て行ったみたいだ。どうやら数人でどこかにいくらしいな。)
生体レーダーを起動し、昨日の男とその他に数人がどこかに向かおうとしているのが確認できた。
高志は早速”変身”し、ステルスモードに切り替え空から男達をつけることにした。
今日のような夜であれば、地上の人間がいくら目を凝らしても見つけることはかなり難しいだろう。幸いにもその日は曇りで星が見えないような夜空だったのだ。
男達は武装しているようで、10名ほどの者がまっすぐにある場所を目指していた。
それは子供達が寝泊りしている教会だった。
「よし、先に教会に残っているガキ共を人質にして、戻ってきた奴らを脅してレシピを吐かせろ。」
クラークは男達に指示を出す。
「わかりやした。しかし、やりすぎじゃねぇですかい?流石に二日も連続で邪魔が入るとは思えやせんが。しかも今度は偶然人が通りがかるような街中じゃなくて教会ですぜ?」
「馬鹿が。常に最悪の事態を想定して動け。そんなことだから単純な任務すら失敗するのだ。」
「す、すいやせん。」
クラークの叱咤に部下の男はうなだれる。
部下の数名はいそぎ教会の中へ押し入ろうとしていた。
(・・・まずいな。教会にいる子供達を人質に取られるのは厳しいし、一気にここで片付けるか?)
高志が降下して男達を片付けようとしたところで、クラークが叫んだ。
「いつまでコソコソついてきているつもりだ!さっさと降りてきたらどうだ!」
(・・・なっ、なんでこっちが分かるんだ?)
クラークの視線はまっすぐに高志に向いていた。
高志はステルスモードを解除して、降下した。
内心慌てていても、教会と男達の間に立ちふさがるようにするのは忘れない。
「まさか姿を隠す魔法だけではなく、空を飛ぶ魔法まで使えるとはな。」
「なぜ、気づいた?」
(・・・あれ?なんかこっちが悪人みたいな台詞だ。)
「ふんっ。手の内は見せない主義でな。そうか、貴様が昨日うちの部下を邪魔した奴か。」
「そうだ。悪いがお前達に勝ち目はない。大人しく引き返せ。そして二度と子供達に手を出すな。」
高志は威圧するようにプラズマブレードを出し、そう言い放つ。
「見たことも無いような魔法に光の剣か。なるほど。確かにお前は強そうだ。まともに戦えば我らに勝ち目はあるまい。だが、人質を前にどれほど戦えるかな?」
「人質を取らせるほど甘くはないぞ。」
「残念だったな。俺達の前に既に教会に入り込んでいる人間がいる。おいっ、出てこい!」
クラークがそう叫ぶと、人質となった女の子が一人とローブをまとった大人がナイフを突きつけながらでてきた。
「俺は何事も慎重主義でな。常に二重三重の罠を張ることにしている。」
クラークが勝ち誇ったように告げる。
「くっ。」
「さて、通りすがりのヒーローさんにはご退場願おうか?」
既にクラークと男達は勝利を確信しているようだ。
「待ってくれ、その前に教えてくれ、お前達は何者だ?何の為に子供達を襲う?」
高志はクラークに問いかける。
するとクラークではなく、部下の男が答えた。
「へっ、てめぇらは目障りなんだよ!グリディー商会の縄張りで好き放題商売しやがって!この王都じゃグリディー様の許可なく商売したら痛い目にあうって決まってんだよ!」
「まぁ、そういうことだ。グリディー様がお怒りでな。悪いがお前達には消えて貰う。ああ、レシピを渡してくれれば命だけは助けてやってもいいぞ、その代わり死ぬまで働いて貰うことになるがな。」
また別の男がそう補足するように告げた。
「子供達を犠牲にしてまで・・・そんなにお金が大切なのか!」
高志が叫ぶ。
「金の問題ではない。秩序の問題だ。この国は国王が変わり、今滅びに向かっているといってもいい。だからこそ立て直す為に新しい秩序が必要なのだ。それが出来るのはグリディー商会だけだ。」
クラークがそう語る。
「そんなことで本当に国が立て直せると思っているのか?」
「出来るかどうかはわからんが、やるしかない。言っておくが、そうしなければこの国は崩壊し、もっと多くの子供達が犠牲になるぞ?それでもいいのか?」
「いや、そんなことはさせない!オレ達が必ずこの国を立て直して見せる!そして平和で豊かな国に作り変えてみせる!」
高志が叫ぶ。
「ふんっ。出来るものか。お前にその力があるとでも?」
「ああ、ある!少なくともお前の秩序が支配する国よりも、もっと平和でみんなが笑って生きていけるような国にしてみせる。」
「この俺に人質を取られていいようにされている貴様にそんな力量はあるまい?」
クラークが侮蔑したような目を向ける。
「いいや、人質なんてここにはいない。」
この状況から見ればどうみても強がりのように見えた。
「馬鹿がっ、おい、そのガキを見せしめにいたぶってやれ!」
クラークが子供を人質に取ったローブを着た人物に叫ぶ。
「ん?わかった。そーれ。」
すると、ローブを着た人物は人質のわき腹をくすぐり始めた。
「ぎゃははははっ、や、やめるのだっ、ひっ、ひぃーくすぐったいのだー!」
その異様な光景でようやくクラーク達は異変に気づき始めた。
「ま、まさか・・・。」
「さっき前に物騒な男がきたから、ロープで縛って教会の奥に転がしてあるが・・・。」
と、ローブを着たシェリアがそう淡々と言う。
「あはっははっ、も、もう、やめるのだ、あひゃああああ。」
人質の子供、いや、ミンクはまだくすぐられていた。
「まぁ、前回は人気の無い場所で邪魔が入ったわけだから、次に直接教会にくる可能性は高いだろうなとは予想してたからね、こちらも手を打たせて貰ったよ。いやー、人間自分が有利になると口が軽くなるもんだね。一芝居うった価値があったかな。」
と、今度は高志が勝ち誇ったようにクラークに告げる。
「ちっ!」
「くそっ、どうしやす、クラーク様」
クラークの部下達は慌ててクラークに指示を仰ぐ。
「クッ、ククククッ、ハッハッハッハー!」
クラークは突然笑いだした。
部下達は気でも狂ったのかと思ったがどうやらそうではないらしい。
「なるほど、確かに、なかなかやるようだ。分かった、今回はこちらの負けだ。大人しく引き下がろう。今後もお前達には手を出さないと約束しよう。」
どうやらクラークは負けを認めたようだった。
「い、いいんですかい?グリディー様の許可もなく・・・。」
部下達が心配する中、クラークは無視して先を続けた。
「お前が相当のやり手だということは分かった。そしてお前が本当にこの国を立て直せるかどうか、俺はみているぞ。そしてもし、お前にその力がないと判断したなら、更に力をつけて俺は再びお前の前に立ちふさがるだろう。」
そう言い放つとクラークはそのまま引き返していった。
部下達もあっけに取られた後、すぐにクラークについていくのだった。
(・・・ふぅ、何とかなったか。だけど、とんでもない約束をしちゃったなぁ。国を立て直すって・・・どうしよう。)
「あひゃああああ、も、もう、むりなのだ、もうやめるのだ!」
と、ミンクの叫びで神妙な空気は木っ端微塵に壊されるのであった。
~~~数日後~~~
グリディー商会のトップである、グリディーは何者かに暗殺され、実質No.2であったクラークが後を継ぐことになった。そして商会の名前もクラーク商会に変わるのだった。