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ファンタジーに未来兵器を  作者: インゼリ
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第二十四話

すみません、またまた遅れました(´・ω・`)



お店の開店に向けて忙しい日々が続いていた。

店舗の契約、改築、新しいレシピの開発、子供達の教育、そして、新兵器(?)の開発。



「イマイチ長持ちしませんね。」

怪しげな物体を見ながら険しい顔を浮かべる高志。


「今度は風の精霊を使ってやってみようか。」

そう言うとシェリアは風の精霊を召喚する。

風の精霊はシェリアの命令に従い、筒の中に風を吹かせる。

すると中にある複数の風車が回り、その下に付けられている歯車達が動き出す。

いくつかの歯車と棒軸によって備え付けられている入れ物が揺れる。

入れ物の中は凹凸がある構造になっており、そこに入れられた生乳が振られバターが作られるという仕組みだ。

魔具として動作させる際は、魔昌石を魔力のバッテリーのようにして使うが、精霊を使役する場合は、魔昌石は不要で、精霊の力のみで稼動させることができる。


「強さは風の精霊の方が強いですね。」


「上位精霊ならもっと強い風を起こせるが、強すぎて装置自体を壊してしまうのが難点だが。」


しばらくすると、風は止んでしまったのか、歯車も止まってしまった。


「どうやら飽きたらしい。」

と、シェリアは風の精霊の代弁をする。


「本当に長持ちしませんね・・・。精霊を使うのが難しいとなると、やっぱり魔昌石の魔力を使うしかないですね。それでも恐ろしく燃費が悪いですが。となると構造とかを改良するしかないか。」


「これ以上軽量化の魔法を付与することも難しいし、しても効果ほとんどないだろうな。」

既に装置のあらゆる箇所に軽量化の魔法を付与しており、ほとんど重さが障害になることはなかった。


(・・・魔法で起こす風の仕組みがイマイチ良く分からない以上、改良しようにも限界があるなぁ。仕組みを解明するのはほぼ不可能だろうし、となると、トライ・アンド・エラー方式かな。)


「ちょっといくつか作ってもらいたいものがあるんですけど。」


こうしていくつかの試作品を作ってもらうことにした。


一方その頃、ミンクは子供達の教育を行っていた。


「こうやって作るのだ。」

もの凄い勢いで生クリームを作っていく。

そう、子供達に教えるという前提でミンクは生クリームを作っていた。


「すげー、ミンクねーちゃん!」

「ほわぁー。」

子供達はすっかりミンクに懐いており、既に姉貴的存在となっていた。

シェリア曰く、「知能レベルが近いから。」ということらしい。



そして借り店舗の方では、サリーが店内の改装を手伝っていた。

「あ、この飾りはそちらへお願いします。」


「へいっ!」

若い職人が応える。


「この辺りはどうしやしょう?値段は張りやすが、バーンッと大理石でもつかいやすか?」


「ここは木目が見えるような木材でお願いします。やさしい感じにしたいので。」

と、まぁ、こんな感じで店内の改装も進んでいた。




そして高志は、秘密兵器の開発打ち合わせの後、教会までの道のりを歩いて何度か往復していた。

(・・・まぁ、コレが役に立つことがないといいけど。)




こうして4人は開店に向けて準備を進めていよいよ開店できる状態にまでこぎつけた。

残念ながらバター製造機は未だ完成していなかった。


「さて、とりあえずは店を始めよう。バターの製造はしばらくの間はミンクさんとオレで担当します。」


「任せるのだ!ついでに生クリームも任せるのだ。」


「「「それは駄目。」」」

一瞬で撃沈するミンク。


「さて、店の名前はどうしようか?四人の頭文字をとってタサシミ・・・語呂悪いな・・・。」


「みんみんショップがいいのだ!」


「「「それは駄目。」」」

またしても撃沈するミンク。


「逆に最後の一文字をとって、並び替えて・・・クーシアなんてどうだろか?」

と、シェリアが提案する。


「うーん、まぁ、他によさそうなのも思い浮かばないし、それでいいんじゃないかな?」


ということで店の名前は「クーシア」に決まった。



そしていよいよ開店の日。

これまでにレシピはいくつか追加されている。

パンとケーキの種類を増やした他、コーヒーや紅茶も店内で飲めるようにしている。

店内は木目を重視したデザインとなっており、やわらかい感じに仕上がっている。


「さぁ、いよいよ開店だ。みんな頑張っていこう!」

高志の掛け声とともに営業を開始した。


事前に宣伝を店の前で宣伝してはいたこともあり、客の入りは上々だった。

元々、パンとケーキを露天で売っていたときに知り合ったお客にも伝えていた為、露天の際の常連客と口コミで広がっていたのだろう。


「いらっしゃいませー。店内でお召し上がりですか?それともお持ち帰りですか?」

元気良くサリーが挨拶し、次々と注文をとっていく。

お客はカウンターで注文し、その後店内で食べる場合は空いてる席について食べるタイプの形式だ。所謂ファーストフード店と同じだ。


「持ち帰り専用の窓口はこちらです。希望する商品を選んでください。」

シェリアは慣れない接客業で悪戦苦闘していた。

実は露天の際もシェリアはほとんど接客をしていなかった。ほんとミンクに任せており、シェリアは商品の梱包や、会計をしていた。

しかし、なぜかそのシェリアの前にも行列ができていた。主に男性客ばかりだったが。

どうやらそのぎこちなさがウケているらしい。


子供達も厨房でせっせとパンやケーキを作る。

最年長の子供であるマルスと、ミネルヴァは接客をしている。といっても、サリーのように注文をとることはほとんどなく、出来上がりに時間が掛かる商品をお客の席に運んだり、コーヒーや紅茶のおかわりを運ぶ係りだ。



そして初日は大盛況のうちに終わった。

全員クタクタになっていたが。


「今日は後片付けが終わったら、もう帰ろう。流石に初日でみんな疲れたでしょう。」


「もうクタクタなのだ。」

さすがのミンクも疲れたようだ。


「それじゃあ、子供達を送ってから帰りましょう。」

そう言って、高志達は子供達を教会まで送り届けたあと、家に帰ってからは風呂に入りながら、店にもシャワー室をつけてもらえば良かったと後悔していた。

結局その日は泥のように眠った。



その後も店の営業は順調に進んでいた。

そしてある日、バター製造機の新しい試作品がいくつか届いた。


「これならなんとか実用化できそうですね。」


「んむ。しかし、よくこんな構造を思いついたな。」


「まぁ、ちょっと似たようなものをみたことがあったんですよ。」


その試作品は筒が輪になっており、風の勢いが余す事無く使える仕組みなっていた。

棒状の筒であった試作品を試している際に、結構な量の風が筒からでているのを感じてもったいないと思い、このような構造にしたのが功を奏したようだ。

更に、この筒には内部の動きを加速する魔法が付与されており、より強力で、省エネになっていたのだ。


「これでなんとかバター作りも楽にできそうだ。ちょっと仕組みを変えれば生クリームもできそうだな。」


「む、それは何なのだ?」

と、ミンクがその試作品をみつけて好奇心全開で話しかけてくる。


「ああ、これですか? これはバターを作るために作った装置です。」

そして高志はミンクにこれまでの経緯と装置の仕組みを教える。


「なるほどなのだ!あたしも作って欲しいのだ!」

こうして魔具の職人にミンクは自分の構想を語って聞かせることになった。



そして更に時は流れ、ほとんどの仕事を子供達に任せることが出来るまでになっており、店の状況も繁盛が続いており、特に店内で食べる客の割合が多く、店舗の拡張をしないとお客をさばけない状況になっていた。

そこで隣の店が開いていた為、そちらを飲食用スペースとして利用しようと計画していた。その準備のため、高志達は準備に追われていた。


店の営業時間も終わり、子供達が帰る時間となった。

最近は、高志達も忙しく、子供達が慣れたこともあって子供達だけで帰宅するようになっていた。

そんなある日、事件は起こった。



「よう、そこのおぼっちゃん、おじょうちゃん、良い物あげるからちょっとこっちにおいで。」

卑しい笑いを浮かべた中年男性が、子供達に声を掛けた。


「悪いけど、知らない人には何ももらわないことにしてるんだ。それじゃ。」

そう言って最年長のマルスは言い切って、無視して進もうとする。


「おおっと、つれないなぁ。だがこっちも仕事でなぁ。悪く思うなよ。」

そう言うと、男はミネルヴァの後ろに回りこみ、ナイフを首元に突きつける。


「ひっ。」

ミネルヴァは小さく悲鳴を上げる。


「大人しく全員こっちにきてもらおうか。なぁに簡単な用件だ。すぐに終わる。」


そして子供達は人気の無い裏路地に連れて行かれた。

そこには複数の男達が待ち構えており、気がつくと子供達は取り囲まれていた。


「一体、僕達に何のようだ?お金ならないぞ!」

マルスは気丈にも男に言い放つ。


「マルスやめましょう、ここは素直に言うことを聞きましょう?」

ミネルヴァは半分泣きながら小声でマルスに訴える。

他の子供達は震えていてる。


「おー、怖いね。なぁに、欲しいのはお金じゃない。お前達があの店で料理を作っているのは知っている。その作り方をオジサンに教えてくれればいいんだよ。」


「そんなもの知らない!」


「しらばっくれても無駄だぜ?お前達がシーミアで珍しい料理を作ってるのは有名だからな。その料理をちょーっとだけ俺達に教えてくれればいいんだよ。」

男は余裕の笑みでマルス達を脅す。



その時、空から声が聞こえてきた。

「それなら、珍しい料理を教えてやろう!」


そして黒い人影が空から落ちてきたかと思うと、子供達のすぐ近くにいた男は殴り飛ばされた。


「最も、料理されるのはお前達だがな。」

その黒い人影が言い放つ。



「な、なんだテメーはっ!」

「やっちまえ!」

男達は突然現れた黒い鎧の戦士を罵倒し、襲い掛かった。

しかし、その黒い鎧にはまったく歯が立たなかった。

全ての攻撃は弾き返され、一人また一人と男達は殴り倒されていく。

そして最後の一人が倒されると、黒い鎧の男は子供達に声を掛ける。



「大丈夫?怪我はないかい?」


子供達は呆気にとられていたが、いち早く正気を取り戻したミネルヴァが応える。

「大丈夫です。あ、あの、ありがとうございます。」


「ふんっ、あんな奴らオレ一人でなんとかできたんだ。それを邪魔しやがっ「コラ!」

マルスの台詞はミネルヴァの突っ込みで中断された。


「さぁ、君達はもう帰りなさい、あとのことは私が何とかしておこう。」

黒い鎧の戦士がそう言うと、子供達はいそいそと帰り始めた。


「あ、あの、お名前は?」

ミネルヴァが振り返り、尋ねる。


「名乗る程の者じゃない、通りすがりのヒーローだ。」


「・・・ヒーローさんですか、ありがとうございました!」

そう言って、駆けていった。


(・・・うーん、確実に『ヒーロー』って名前だと思われたな。この世界にも英語はあるけど、ほとんど普及してないみたいだし、仕方ないか。)

と、黒い鎧の戦士、高志は内心でしまったと思いつつ、変身時の名前を考えておこうと心に留めておいた。


「さて、お前達、何者だ?だれかに雇われたのか?」


「ケッ、うるせー!おい、撤収だ、逃げるぞ!」

男達の一人がそう言うと、一目散に逃げ出した。


(・・・さて、いくら下っ端を倒してもキリがないだろうしな。ちょっと可哀想だが。)

そう言うと、高志は小型の銃を召喚し、それを男達のリーダーと思しき男へ向けて発射した。

だが、男はそれで倒れるようなこともなく、そのまま逃げ出した。


高志が最後に撃ったのは、超小型の発信機だ。本来は貴重な野生動物等に向けて使用されるものだが、元の世界ではそれを重犯罪者にも適用し、居場所を特定できるようにしている。


(・・・やっぱり、情報は重要だからなぁ。今回は念のために手を打っておいてよかった。)

高志は事前に店と教会の間の道を何通りか散策し、人気の無い場所を重点的に監視装置をつけておいたのだ。



(・・・あとは発信機の位置を記憶しておけば、黒幕はおおよそ分かるだろう。子供達にまで手を出そうとしたんだ、それなりの報いは受けて貰わないとな。)

そう高志はあえて下っ端を逃がしたのだ、黒幕を見つけ出して叩き潰す為に。



次回でお店編は一応完了予定です(`・ω・´)


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