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ファンタジーに未来兵器を  作者: インゼリ
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第二十三話

遅れてすみません(´・ω・`)

時はほんの少し遡る。

高志達がケーキを販売し始めた当日のこと。


修道女である一人の女性が、買い物に出かけていた。

その女性はモニカといって、孤児院で働いていた。

働くといっても、ほとんど無給の奉仕であった。

孤児院も以前は国からの支援があり、それなりに運営できていたのだが、国王が変わってからは支援金も減り、孤児も徐々に増えている為、金銭面での苦労は絶えなかった。

それでも何とかなっているのは、成長し、独立して働きだした孤児達が支援している為だ。



「今日はこのくらいでいいかしら。」

と、モニカが買い物を一通り終えて帰路についたとき、偶然にもケーキの試食が始まった。


「本日より、新発売!甘くて美味しいケーキです。お一人様一切れのみ無料です。是非お試しください。」

という声を聞いて、モニカも試食してみることにした。

甘くて美味しいというフレーズで、値段と味によっては、子供達に買って帰ろうと思っていたのだ。

早速、両手一杯の買い物の荷物を降ろして、試食用ケーキを食べるモニカ。


「まぁ、なんて美味しいのでしょう!」


流石に年頃の女性とあってか、甘い食べ物は大好物だった。

しかも、今までに食べたこと無いような味で、感動したこともあり、早速購入しようとした。


「すみません、この大きいのは一つおいくらでしょうか?」

モニカが目をつけたのは、所謂(いわゆる)イチゴショートの丸いホールタイプだ。


「そちらでしたら、お一つ銅貨3枚です。」

売り子のサリーが答える。


しかし、値段を聞いたモニカは一気にさめてしまう。

確かに1つ2つくらいであれば、買うことも出来るだろう。

ただし、モニカがいる孤児院には現在30人を超える孤児達が暮らしている。

そこでこのケーキを一つ買っていったところで、一人当たりが食べれる量は試食用のケーキよりも小さいだろう。かといって、ホールケーキを8等分するとしても4台以上必要になる計算だ。

仕方なく諦めることにした。

「そうですか・・・。」

と、モニカはシュンッとなってしまった。


その様子を見ていた高志は焦った。

(・・・あれ?この値段設定は失敗だったのかな?それとも大きすぎたのか?切り分けたタイプじゃだめだったのか? 初日で、しかも最初の客でコケるのは縁起が悪い!仕方ない、()くなる上は!)


「よし、最初のお客さんだからサービスだ!お姉さん美人だし、特別に半額で売っちゃう!」

若干、サリーの冷たい目線を受けつつも言い切ってしまった高志であった。

最初とは別の原因で焦る高志とは対称に、モニカは満面の笑みだった。


「それじゃあ、4つください!」


「ありがとうございます。あ、でも、持てなさそうですが大丈夫ですか?」

高志への冷たい笑顔からすぐに普通の笑顔に切り替えたサリーがそう心配したように、モニカは既に買い物の荷物が一杯でとてもではないが、ホールケーキ4台を運べそうには見えなかった。


「まぁ、どうしましょう。一旦荷物を置いてから取りにきます。」


「あ、じゃあ、あとでお届けしますよ。お代もその時でいいですから、どこにお届けしましょうか?」

(・・・食糧空間の冷蔵タイプのところに入れておけば多少時間が経っても大丈夫だろうし。)


「それじゃあ、お願いします。場所は・・・」


こうして、ケーキはあとで届けにいくことになった。

ケーキの販売自体は高志の想定通り、順調で瞬く間に全て売り切れとなった。

ただ、販売が終わったあとに高志がサリーにお説教されるのは想定外の出来事であったが。




「さて、片付けも終わりましたし、そろそろ行きましょうか。」

サリーは露天の片づけを終えて高志に声を掛ける。


「そうしようか。さっきの話だと、届け先は教会っぽいけど、やっぱり神官さんなのかなぁ。」


「さぁ、どうでしょう。タカシは綺麗なお姉さんに会いにいけて嬉しそうですね!」

サリーの怒りはまだ収まっていなかったようだった。


「いやー、あれは何というか商売の基本というか、ああやってお客さんのご機嫌を取るんだよ、現に買ってくれたじゃない?」

と、苦しい言い訳をすると。


「へぇ~、そうですか。でも、半額にすることはなかったと思いますけどね。」


「そ、それは、その、ちょっと価格設定が悪かったかなぁと弱気になったからであって、決してお客さんが美人だったからというわけじゃないよ。」


「ヘー、ソウデスカ。」

サリーの返事は冷たい。

なかなか機嫌を直してもらうのは時間が掛かりそうだった。


そんな問答があった中しばらくすると目標の教会が見えてきた。

教会は住宅街と、スラム街の境目にあった。


教会が見えてくるにつれて、子供の姿が多くみえるようになった。


「随分と子供が多いな。教会ってのは子供が多いもんなのかな?」


「たぶん、あの子達は孤児なのかもしれませんね。教会では身寄りの無い子供達を預かったりしているそうですから。」


(・・・なるほど。教会兼、孤児院って感じか。ってことは、ケーキは子供達の為に買ったのかな?)


教会の入り口までいくと、ちょうどモニカが子供達の世話をしているのが目に入った。


「あ、先ほどはどうも、ケーキをお届けにあがりました。」

高志がモニカに声を掛けると、モニカと近くの子供達が一斉に高志のほうを向く。


「あら、わざわざすみませんね。」


「いえ、こちらこそ、お待たせしてしまって申し訳ありません。」


「それじゃあ、ちょうどおやつの時間ですし、お茶にしましょう。さぁ、どうぞこちらに。」

モニカはそう言うと、高志とサリーを教会の離れの建物に案内した。

その際に、近くの子供に「おやつにするから、みんなを呼んできてちょうだい。」と声を掛けていた。そして、高志にはケーキの代金を渡していた。

案内された先は、ちょっとした食堂のようになっていて、子供なら20人くらいは食事が取れるくらいの机と椅子があった。


「それでは、ちょっと失礼して、お茶を入れてきますね。」

モニカはそう言って厨房に向かった。

その間に、高志はケーキを食糧空間から、取り出し、テーブルの上に乗せる。

それを見ていた子供達が

「スゲー!」

「どうやったの?」

「もう一回やって!」

等と言って興奮していた。


「あははは、ちょっとした手品だよ。」と言って、誤魔化しておく。


(・・・まぁ、別にそういう魔具があるって言ってもいいかもしれないけど、子供相手なら手品ってことにしておけば、それだけでも楽しんでもらえるだろう。)


そして、子供達の興味はすぐにそのケーキに向けられた。

美味しそうな匂いが微かに漂い始め、子供達はみたことのない食べ物に興味津々といった感じで、あれやこれやと推測でケーキについて話していた。

そうしている間に、子供達は増えてきて、モニカがお茶を入れて戻ってきた。


「さぁ、みんな、それじゃあ、早速おやつにしましょう。今日はこのケーキをみんなで頂きましょう。」

そう言うと、慣れた手つきでケーキをナイフで切り分けていった。

うまい具合に均等に切り分けていく。恐らく普段から均等に分けていくことに慣れているのだろう。子供達の食べ物に大小偏りがあればそれだけで喧嘩の要因になりかねない。その為、モニカは自然と均等に切り分ける能力がついていた。


「さぁ、みんな、行き渡ったわね?それじゃあ、頂ましょう。」


「「「「頂きます。」」」」


と、頂きますの大合唱の後、子供達はケーキを食べ始めた。

子供達の中でもより幼い子供達は、椅子に座って、大きい子供達は床に座ったり、立ったままケーキを食べている。


「おいしい!!」

「さいこー!」

「なにこれー!」

と、子供達には大好評だった。


実はモニカは今後のお財布事情を考えて軽く頭を悩ませていた。

今回無理してケーキを買ったことで、当分は節制の生活になるだろう。

ケーキを買わずに、ちゃんとした食事を買った方がよかったのではないだろうか?そんな風に悩んでいた。

それでも、今のこの子供達の笑顔をみていると、この判断で良かったのだと思えてくる。


そして、子供達の様子を見ていた高志はモニカに質問をしてみた。

「ところで、不躾な質問ですが、この食費等はどうやって手に入れてるんですか?」


「一応、王国から支援金が毎月送られてくるので、そのお金でやりくりしています。他にも独り立ちして教会を出て行った子達からの支援もあります。それでも最近はギリギリですけどね。」

と、モニカは顔を曇らせる。


「最近は?」


「ええ、国王様が変わってから、支援金は減って、孤児の子供達は徐々に増えています。この国の未来を支えるのは、この子供達だというのに。とはいっても、この国自体が貧しくなりつつあるので仕方が無いのかもしれませんが。」


「なるほど。」

(・・・国の経済が傾けば、それだけ貧困層は増えて、孤児も増えるってことか。)


その後も軽く雑談をした後、高志とサリーは教会を後にする。

その帰り道に高志は考え込んだ。

(・・・何とかしてあげれれないだろうか?このまま経済が悪化すれば、弱い立場の孤児達は簡単に切り捨てられるだろう。とはいっても、オレの今の収入で援助できる額なんてたかが知れている。とても数十人の子供を養っていくだけの資金力はない。となると、あとは・・・。)


高志が家に帰り着くと、サリー達に相談した。

「今後のお店のことで相談があるんだけど。このお店を子供達に任せたいと思うんだけどどうだろう?」

サリーはそれを聞いてもさほど驚いた様子はなかったが、シェリアとミンクは何でそうなるのか分からないといった感じだった。

そこで高志は教会でのことをシェリアとミンクに説明した。


「で、労働力不足は、子供達に補って貰って、代わりに利益のほとんどを教会、と言うか、子供達に還元する。もちろん、働いて貰うのは、それなりに大きい子供達だけだ。」

高志は自分の考えた案を簡単に説明する。


「なるほど。確かにそれならお互いにメリットがあるだろう。その働いている子供達が育ってくれば、任せられる仕事も増えるだろうし、大人になってもそのまま働けば職に困ることはないだろう。」

シェリアは割とすぐに内容を察して、賛成してくれた。


「でも、子供達にバター作りはつらいと思うのだ。」

と、ミンクは指摘する。


「そうだね。そこで以前のアレの出番なわけだけど、シェリアさん、どんな感じかな?」


「ふむ、実はそれなりに使えそうなものが出来きつつあるのだが、まだちょっと時間が掛かりそうだ。」


「じゃあ、何とか実用化出来そうってことですかね?どのみち、まだ店舗を借りたり、色々準備もあるからすぐにって訳じゃないですけどね。早めに出来ればそれに越したことはないんで、急いで貰えると助かります。」


「分かった。あとで試作品を持ってくるように頼んでおこう。」


「お願いします。」

(・・・本当は子供達に労働させるようなことはしたくないけど、仕方ないよなぁ。まぁ、家の手伝い程度にやってもらうだけならいいだろう。それに、地球でだって大昔は子供の頃から働いてたりしたみたいだし。なるべく早く子供達が子供らしく過ごせる世の中にしたい、いや、しなくちゃならない!)


「あとは、モニカさんや、子供達が納得してくれるかどうかですね。私がちょっと話しにいってみます。」

サリーは交渉役に立候補した。


「よろしく頼むよ。いくら準備ができても、モニカさんや、子供達が乗り気じゃなければ成立しないからね。」


こうして高志達はゆっくりとではあるが、着実に準備を進めるのであった。



思ったより全然進まなかった(ノ∀`)

ヒーローの活躍は次回以降になりそうです。


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