第二十一話
投稿遅れてすみません。(´・ω・`)
最近空気気味の主人公がいよいよ活躍し始めます。
たぶん(ノ∀`)
初めてのダンジョンから戻った高志だったが、結局のところ、荷物持ちくらいにしか役に立てなかったことで悔しい思いをしていた。
帰った直後は凹んではいたものの、今ではかえってやる気を漲らせていた。
(・・・まぁ、まずは剣の扱いは多少上達したし、いい経験にはなった。それに軍資金とするべきお金も多少だけど手に入った。あとはこれを元手にもう一手欲しいな。)
ダンジョンで手に入れた貴金属類、ドラゴンの牙、魔昌石を売って、それなりの金額が手に入ったのだ。
魔昌石の一部は、サリーとシェリアが持っておくことになったが、手に入った量がかなり多かったので、全体的にみれば売値にはさほど影響はなかった。
4人で行ったため、4等分することになったが、それでも一人当たり金貨30枚くらいの収入になった。
高志の計算では、金貨30枚を地球価格にすると、おおよそ300万円くらいと踏んでいる。
約1週間の命がけの冒険をして300万円と考えると安いような気もするが、高志の場合は命がけと呼べるようなものはないので、これはおいしかったと考えることにした。
(・・・さて、気を取り直して今後の事を考えよう。最終目標はこの世界のインフラを制することだ。その為にはまだまだ資金も知識も足りない。)
そう、高志の目標はインフラを制することにあった。つまり、地球で言うところの電気・ガス・水道はもちろん、交通機関・病院・学校等の公共施設のことだ。
高志はこの世界のインフラレベルはかなり低いとみている。
だからこそ、入り込む余地があると思えたし、生活レベルの充実を図ることで人々の役にも立てると思っている。
ヒーローに出来るのは局所的な人助けだが、これなら多くの人々に対して長期的な助けとなることが出来る。
ただし、高志自身には発電機の仕組みや、水道のノウハウ等は無いに等しい。
天才が作り出したこのステムには、数々のデータベースが搭載されているが、それだけを元に素人が発電機等を作成し、運用していくことは不可能に近いだろう。
しかも、仮に地球での経験やノウハウがあったとしても、それがこの世界で通用し、運用していけるかどうかと言われれば、不可能だと考えている。
高志は、その最たる要因は、魔法にあると考えている。
魔法があることによって、科学ではなく魔法に依存してしまっている。
そしてそれが原因で科学の進歩が阻害されている要素となってしまっているのではないかとも考えていた。
今のままでは、仮に電力を供給するシステムを作ったところで、それを使う電化製品がないので無意味である。電力を普及させるには、まずは電化製品を世の中に普及させることが先決だ。
ただ、それが高志一人で出来るか?と言えば出来ないだろう。
したがって、電力と電化製品の普及は不可能に近い。だからといってエネルギーの供給なくして生活レベルの向上は難しい。
そこで目をつけたのが魔法だ。
地球では絶対にありえない要素だが、これを利用しない手はない。
高志は、魔法を利用することで火力発電や、原子力発電等よりもよっぽど安全で、エコロジーなエネルギーを供給できるのではないかと踏んでいる。
ただし、それを使いこなし、安定して運用していくにはまだまだ知識も資金も足りないと認識はしている。と、同時にそれは不可能ではないと考えている。
つまり、電力の代わりに魔法(魔力)を用いて、電化製品の代わりに魔具を利用する。
と、まぁ、理想は大きいのだが、まずは出来ることから手をつけることにした。
「よし、順調に出来てるな。」
そう、約一週間前に作り始めていた酵母菌が完成していた。
「たかが菌と馬鹿にしてはいけない。菌を制するものは金を制するのだ!」
と、独り言を呟きながらも、更なる増殖をさせるために酵母菌を専用の培養機に入れる。
「あたしんちはパン屋さん」には酵母菌を培養するための装置も入っていた。無論増やすためには更なるフルーツ等の材料が必要となるが、それも事前に買っておいた。
目指せ大量生産である。と言っても、この装置だけではそれほど一度に大量に作ることはできないが。
酵母菌の一部は取り出して早速パンを作るのに利用することにした。
パン材料は、全てがこの世界で手に入るものだ。
バターも手作りしたかったが時間が掛かるので、今回は出来合いのものを使うことにした。
高志がパン生地をこねていると、サリーやミンク達が見学にきた。
「何を作っているのだ?」
特にミンクは興味津々だった。
「パンを作ってるんですよ。」
「ほぇ~、パンを作ってるところなんて初めてみたのだ。」
「ミンちゃんは食べる専門だからね。」
シェリアが茶々を入れる。
「私も作ったことがありますけど、随分いい香りがしますね。」
と、サリーも興味深げだった。
「フルーツから作った酵母菌を使ってパンを作ると、フルーツのほのかな香りと、甘みがあって美味しくできるんです。」
「「コウボキン?」」
サリーとミンクには何のことだか分からず、顔を見合わせる。
シェリアだけはなぜか知っているような感じで、黙っていた。
「酵母菌があると、パン生地が発酵して焼きあがったときにフワフワになるんですよ。まぁ、詳しくは食べてみてのお楽しみってことで。」
「よく分からないですけど、パンが美味しくなる調味料のようなものでしょうか?」
「まぁ、そんなもんです。」
(・・・見えないくらい小さい虫みたいな生き物です、とは言えないよなぁ・・・。)
サリーの質問に曖昧に答える高志だった。
その後、火を入れた暖炉の近くに放置して発酵させた。
乾燥しすぎないように、大きめの壷の中に入れて蓋をしておいた。
そして、その間にかまどの準備をしておき、ちょうどパン生地が発酵してきたところでかまどに入れて焼き始めた。
しばらくすると、パンが焼ける良い匂いがしてきた。
「良い匂いなのだ。そろそろ焼けてる気がするのだ。」
と、ミンクは早くも我慢の限界になりつつあった。
「いやいや、まだまだだから。今のうちにサンドウィッチの具でも作っておこう。」
今回高志が作っているのは、いわゆる極普通の食パンというやつだ。
そして今回サンドウィッチの具に選んだのは、卵。つまり、たまごサンドだ。
ゆで卵を潰し、マヨネーズと混ぜ、塩コショウで味付けをする。
高志はマヨネーズも手作りでとも思ったが、今回はこれも出来合いのものを使った。
この世界、少なくともこの街ではマヨネーズやバターは売っていなかった。
(・・・このあたりの2次加工品が市販されるようになれば、食文化も大きく前進すると思うんだけどなぁ。まぁ、逆に言えば商売のチャンスか。)
しばらくして、かまどからパンを出して完全に焼きあがったのを確認した。
そして、適当な大きさでパンを切っていく。
「ちょっと味見してみて。」
と、いってサリー達に一切れずつ渡す。
「おいしい!!」
「ふわふわしてて食べやすい!」
と、非常に好評だった。
その後、パンを切って、具を挟んで、たまごサンドを作っていった。
「今度はこの『たまごサンド』を食べてみて。」
と言って3人に勧めたところ、これも大好評だった。
落ち着いたところでシェリアが高志に話しかけてる。
「実は、これと同じようなパンを以前、他国で一度だけ食べたことがある。これは簡単に作れるものなのか?簡単に作れるなら、これを売ってみないか?」
と、要はこれを売り物にしてみてはどうかと聞いてきた。
「まぁ、割と簡単に出来ることは出来ますね。ただ、大量に作れるかというと、一人ではかなり厳しいです。今回はたまたま持っていた材料を使ったので比較的楽に作れましたが。全ての材料を露天で手に入る物から作るとなると、かなり大変です。」
(・・・そうなんだよなぁ。特に一番のネックはバターだろうなぁ。雑菌が繁殖する可能性はあるけど酵母菌は装置を使わなくても作ろうと思えば作れる。その点、バターはどうやっても"動力"が必要だ。ペットボトルに生乳を入れて振りまくるって方法じゃ大量生産には向かないしなぁ。)
「ふむ。手伝えることがあれば手伝うが、一番大変そうなのはどの作業なのかな?」
「やっぱりバターを作るところでしょうね。簡単に言えば牛乳が固まるまでひたすらかき混ぜたりするんです。」
「なるほど、バターか。確かにあれは作るのが大変だな。だが取りあえずは人を雇ってやらせてみたらどうだ?」
「まぁ、確かにそれでもいいかもしれませんね。」
(・・・うーん、確かにそれでもいいんだけど、出来ればもっと効率良くしたい。かといって機械を使うってなると、自分が常にここにいる必要がある。少なくとも充電したり場合によっては修理したりする必要があるからなぁ。太陽光発電を使うか?いやいや、それにしても、曇った日は使えないし、バッテリーなんて消耗品を使うわけにもいかない。もっと長期的で、だれでも運用できるものが欲しい。となるとやはり・・・。)
と考えた後で、高志はシェリアに尋ねた。
「シェリアさん、魔具を作ることって出来ますか?」
「簡単なものなら出来ないことはないが、当然のごとく本職には劣るし、時間が掛かるよ。」
「時間は掛かってもいいので、長期間使えるものが欲しいんです。で、作って欲しいものっていうのは・・・。」
こうして、高志は野望?の一歩を踏み出し始めるのであった。
今のご時勢、インフラを握る人間に良いイメージはないかもしれませんが(´・ω・`)
だからこそ、正義の味方をヽ(`Д´)ノなんて希望も。