第一話
続編の投稿方法の確認の意味でサクっと1話目を掲載。(´・∀・`)
雲ひとつない空。
そんななかで、地上1メールほどの場所に、突如黒い空間が現れる。
中からは人らしきものが出てきて、落ちてゆく。
衝撃で高志が目を覚ますと、そこは草むらの中だった。
遠くには山や、川のようなものが見える。
(・・・うーん、ここはどこの田舎だ)
高志が知っている限り、このように自然が丸々残されている所など、少なくとも日本にはないはずだった。
(・・・取りあえず、地球には帰ってこれたのかな?)
ホッと胸をなでおろし、辺りを見回す。
辺りに見覚えはなく、近くの植物もみたことがないものだった。
まずは位置を確認しようと、視界のメニューから地図を表示させる。
『--- 現在位置情報取得エラー ---』
(・・・なんだこりゃ、さっきの事故で故障したのかな?)
そこで高志は空中から、近くの町へ行こうと考えた。
(・・・えーっと、空を飛ぶにはどうすればいいのかな?)
マニュアルを検索すると、どうやら、変身後の状態で色々なオプションパーツを付与することができることがわかった。
それらのオプションパーツはユニットというものらしく、一つの機能しかないものもあれば、複数の機能がついたマルチタイプのユニットもあった。
そのオプションの中に「飛行機能を持ったマルチタイプのユニット」も存在した。
早速、そのユニットを召喚した。
すると翼のような装置が現れ、自動的に背中に装着された。
横に広がると2mくらいのサイズで、ボディーと同じ黒い金属でできていた。
また、翼自体も武器となっており、レーザー光線を出すことも可能となっているようだった。
(・・・黒の翼って感じで、堕天使って感じだなぁ)
早速飛び立ち、雲の辺りまで上昇すると、町を探す為に辺りを散策することにした。
のんびりと飛んでいると、前方に大きな鳥が見えた。
(・・・随分デカい鳥だなぁ)
しかし、段々近づいてくるにつれて異常さがわかってきた。
その鳥は全長10メートルはあろうかという巨大な恐竜のような鳥だった。
高志は、ゲームに出てくるドラゴンの亜種「ワイバーン」を連想した。
「これは、ナノマシンが見せてる幻なのか、それとも夢なのか・・・」
呟きながら戸惑っていると、ワイバーンらしきものが噛み付いてきた。
バシッ
ワイバーンの牙は、エネルギーフィールドに弾かれる。
そこでどうやら現実らしいと認識した高志は急いで行動にでる。
さっそく、飛行ユニットのレーザーを使おうとした。
『 安全の為、まずは照準の調整を行います。周囲に人がいない場所に移動してください。また照準調整用ターゲットを召喚し、正面100メートルの場所に設置してください。』
どうやらかなりの安全設計らしい。
「あほかっ!この状況でそんなことできるか!」
叫んだ高志は、この調子では、他の射撃タイプの武器はすぐにはつかえないだろうと判断した。
(・・・えーと、すぐに使えそうな接近戦用の武器はないのか、武器武器・・・っと)
視界に接近戦用武器のリストが表示される。
その中で剣らしきものを選択した。
ブラズマブレードと表示されていた剣を召喚すると、手に柄が握られていた。
メニューには「プラズマブレードのスイッチのON/OFFと出力バーが表示されている」
すぐにONを選択すると、剣の柄から、1mほどの光の刀身が現れた。
次に、出力バーを若干上昇させ刀身を2mほどにする。
「よし、これならいけそうだ!」
それを目にしたワイバーンが咆える。
一瞬たじろぐ高志。
しかし、エネルギーフィールドがあり、それが有効だと再認識し、冷静になる。
プラズマブレードを上段に構え、一気にワイバーンに近寄る。
衝突するすれすれで一気にプラズマブレードを振りかぶり、ワイバーンの首を一刀両断した。
ワイバーンは悲鳴すら上げれずに、落ちていく。
肉が焦げる臭いと、ワイバーンを両断した際の感触が、これが現実だということと、襲われたとはいえ、命を奪ってしまったことを実感させる。
身勝手なもので、小さな虫程度であれば、さほど気にならないが、これだけ大きな生物を殺すと多少は罪悪感を感じるのであった。
(・・・うーん、ちょっと罪悪感を感じるなぁ。まぁ正当防衛ってやつだ、悪く思うなよ)
武器を手にしてちょっとした興奮状態から、一気に醒めた感じだ。
(・・・ともあれ、現状を分析しないとな)
まず、ここが地球ではない可能性を考慮する。
確かに、人類は宇宙に進出し、居住可能な惑星も少ないが発見している。
そんなところに、あのときの事故で偶然この惑星にテレポートしたのではないかと推測した。
試しに地球にテレポートしてみようとしたが、まったく反応がなかった。
調べてみると、テレポートは現在地からの相対的な位置が分からないと出来ないことがマニュアルに記載されていた。
元々最初にテレポート出来たのは、太陽系内の情報が入力されていたからであった。
(・・・まさか、無人の惑星にきてしまったってことか?)
自分の推理で、絶望感に襲われる。
さすがに無人の惑星で独り寂しく暮らしていくなんて、耐える自信がない。
しかし、無人惑星と決め付けるのはまだ早いな、もしかすると調査隊が来ているかもしれないし、原住民がいるかもしれないと、希望を新たに辺りの探索を始めることにした。
(・・・レーダーのような機能はないのかな?)
マニュアルをあさって見ると、それらしき機能をいくつか見つけた。
その中の生体レーダーを選び、対象を人間に限定してサーチをかけてみた。
すると、10km程先に数人の反応があった。
(・・・助かった、調査隊かもしれない)
もしかすると犯罪組織の拠点だったりするかもしれないと思い直し、こっそり近づくことにした。
そこでステルス機能がないかと確認したところ、一応それらしき機能があり、それを発動させて、近くまで飛んでいった。
目視出来る距離まで近づいたところで、徒歩でこっそり近づくつもりだったが、目にした光景をみて方針を変えることにした。
どうみても、村であった。
(・・・これは調査隊とか、犯罪組織の隠しアジトとかじゃないな・・・。まぁ、無人惑星じゃないだけ救いか)
高志は、村の近くに下りて、武装をすべて解除した。
そして、歩いて村に向かうことにした。
村の見た目的に、文化レベルは地球のそれとは雲泥の差があることは一目瞭然だった。
そこへ、人が飛んで現れたら、悪魔か、モンスター扱いされるのがオチだろうと思い、普通の格好で近づくことにした。
(・・・とはいっても、言葉は通じないだろうし、服装自体もきっと全然違うんだろうなぁ・・・。まぁ、異国の旅芸人ってことにしておけば、なんとかなるだろう)
今のうちに、ここでの自分の立場設定を考えておく。
この辺りは理論的な人間といったところか。ただし、楽観視しすぎている感が否めないが。
そうこうしている間に村にたどり着く。
途中、農作業をしていた村人が怪訝な眼差しを何度か向けてきたが、特に話し掛けられることもなかったので、そのまま堂々と村に入った。
「宿屋とかあるのかなぁ・・・。」
と、高志が呟くと、近くにいた村人が話しかけてくる。
「アンタ、旅人かい?」
いかにも近所のオバちゃんといった感じの女性だった。
何で日本語?と内心では驚きの声を上げる。
「ええ、旅芸人をしているものです。上杉高志と申します」
どうやら言葉は通じるらしい。
すぐに自分の仮設定を「異国の旅芸人」から、「ただの旅芸人」に変更する。
なぜ日本語が通じるのか釈然としないものを感じるが、気にせず続ける。
「どこか良い宿があれば紹介頂きたいのですが」
「ああ、それなら村長の家に泊めてもらうといいさね。この村には宿はないけど、村の外から来た人のために、村長の家で寝泊りしてもらっているからね」
旅芸人ときいて、最初の怪訝な表情が若干緩和されたようだった。
「そうですが、差し支えなければ、場所を教えて頂きたいのですが」
「ほら、あっちにみえる、一番大きな家だよ」
指を指された方向をみると、確かに他の家よりも一回り大きく、立派な家が目に入った。
「ありがとうございます。早速伺ってみます」
「ああ、村長は気さくないい人だから、あんまり遠慮しなくても大丈夫さね。アンタ若いのに随分しっかりしてるねぇ」
おばちゃんに手を振られ、その場を後に、村長の家に向かった。
歩きながら高志は考えていた。
(・・・それにしても、なぜ日本語が通じるんだろうか。
それに、今きづいたけど、あのワイバーンといい、この建物の感じどこかでみたことがあるんだよなぁ)
数分考え込む高志。
(・・・あっ、そうだ。ヒーローテールⅠだ!
大分前にやったからかなりうろ覚えだけど、確かにこんな感じの建物が多かった気がする。
まさか、ここはゲームの中の世界ってオチか?
うーん、考えても分からんな)
そうこうしている間に、村長の家の前についてしまった。
レンガと木材を使ったような家で、2階建ての大きな家だった。
「すみませーん!どなたかいらっしゃいませんかー?」
取りあえず、叫んでみた。
すると中から一人の少女がでてきた。
黒髪のロングヘアで、10台後半であろう、一目で美少女とわかる程、整った顔立ちだ。
どちらかと言えば、可愛い系というよりも、美人系といったほうが正しいかもしれない。
高志が見とれていると、少女が話しかけてきた。
「どなたですか?父に何か御用でしょうか?」
おそらく、村長の娘なのだろう。
「すみません、旅の者ですが、一晩泊めていただけないかと思いまして。宿を探したのですが、こちらの村では、宿がないそうで・・・」
そこまで聞いて得心がいったのか、少女が答えた。
「では、どうぞおあがりください。」
その後、応接室らしき場所に案内された。
「父を呼んでまいりますので、しばらくこちらでお待ち下さい。」
と言って、少女は応接室らしき場所から、出て行ってしまった。
(・・・さてさて、お金とか取られるのかなぁ。夕飯どうしよう。さすがに無料でくれるってことはないだろうしなぁ。異空間に保存食とかあるのかなぁ)
そして、メニューから食料関係を検索すると、軍隊用の保存食らしきものと、なぜかお菓子が大量にあることがわかった。
(・・・保存食は分かるが、なぜ、お菓子が大量に。これはあれか、子供を救助したときにあげろということか?)
しばらくしていると、先ほどの少女と、威厳のありそうな、ナイスミドルなおじさんがやってきて、挨拶をした。
「こちらのライム村の村長を務めております、イザールと申します。こちらは娘のサリーです。」
紹介された先ほどの少女が頭を下げる。
「旅芸人をしております。上杉高志と申します。」
と、いって高志も頭を下げる。
「ウェスギタカシ様ですか?変わったお名前ですね。」
ちょっと発音が違うと思った高志だったが、気にせず答える。
「遠い国から、旅をしておりまして、この辺りではない名前かもしれませんね。言い辛いと思いますので、タカシと呼んでください。」
「なるほど、お若いのに遠い異国の地から旅をされているとは。さぞかし大変でしょう。何もありませんが、今日は我が家にお泊まりください。」
「ありがとうございます。あと、宿泊料はどれほどでしょうか?ちょっと今は持ち合わせがなくて、出来れば、何か働く事で代金とさせて頂きたいのですが・・・。」
ちょっと遠慮気味に聞いてみる高志。
すると、ちょっと悩んでから、イザールが答えた。
「そうですなぁ。では、最近、村の畑が野生の獣に荒らされているので、それを捕まえるのに、ご協力してもらえないでしょうか? 村の者で交代して見張っているのですが、なかなか捕まらなくて困っておったのです。なぁに、野生の獣といっても、小さい狼らしいので、そうそう負けることはないでしょう。」
「なるほど、そういうことであれば、是非ご協力させて頂きます。」
こうして、高志はこの世界で初のクエスト?を開始することになった。
ちょっと短めでしたが、本格的なのは次以降ということで(´・ω・`)