第十五話
魔法再び(´・∀・`)
新居?生活二日目。
昨日は帰りが遅かった為、ギルドへの報告にいけなかったので、今日は朝からギルドへ依頼達成の報告にいくことにした。
「それじゃあ、ギルドにいってくるよ。ついでに良い依頼があったら受けてくるかもしれないから、帰りは遅くなるかも。」
「わかりました、いってらっしゃい。」
(・・・ここで、いってらっしゃいのキスがあったり!するわけないか。)
と、朝から虚しい妄想をしつつ、ギルドに向かう高志であった。
朝一だったが、ギルドはそれなりに人が多かった。
(・・・朝っぱら結構人いるなぁ。冒険者=夜中まで酒飲んで昼間で寝てる的なイメージがあるけど。)
早速、昨日の依頼報告を済ませて報酬を受け取る。
ちなみに報酬は銀貨5枚だった。
(・・・これが多いのか少ないのか、引越し作業の相場が分からないな。銀貨5枚なら日本円で5万円くらいかなぁ。だとすると多いような気もしないでもない。)
ついでに受けられそうな依頼がないかどうかを確認するが、今回は特に目を引く依頼はなかった。
(・・・うーん、取りあえず、今日は家の改善を第一にするかなぁ。宿に泊まるのもいいんだけど、やっぱり家で落ち着きたいってのもある。)
悩みつつも結局は、今日のところは依頼を受けないことに決めた。
そしてギルドを出ようとしたところで、声を掛けられた。
「あ、やっほー。」
声がしたほうをみると、王都に来る際に護衛をしていたミンクだった。
隣には以前と同じようにエルフのシェリアの姿もあった。
「あ、ども。これから依頼ですか?」
「ううん。依頼報告が終わって、これから一息つくところー。」
「そうですか。私も依頼の報告が終わって家に戻るところです。」
「あれ?王都に家があるの?この前、王都は初めてって言ってたような?」
と、ミンクは首をかしげる。
「ええ、まぁ、色々あってしばらくの間、家をタダで借りられることになったんです。良かったら見に来ますか?」
「いくいく!シェリちゃもいくよねー?」
と、隣のシェリアに話を振る。
「まぁ、特に予定もないし、行ってみよう。」
と、3人で家に向かうことになった。
家に向かう途中、今までの経緯を簡単に説明した。
「へー、じゃあ、その家が売れるまでは、本当にタダ同然で借りれるんだねぇ。いいなぁ。」
と、羨ましそうに見上げてくるミンク。
「宿代も馬鹿にならないんで、とても助かりました。あ、そろそろ見えてくる頃です。」
と、新居?が見えてきた。
「あの家です。」
と新居?を指さす高志だった。
「え?もしかして、アレスじいちゃんち?」
ミンクはアレスを知っているようだった。
「あれ?お知り合いでした?」
「うん、前はたまにパーティ組んでたりしたからねー。」
「へー、世の中案外狭いもんですねぇ。」
事実、日本の都心に比べれば、この王都ですら狭い世の中だろうが。
と、言うわけで、今はテーブルに4人が座っている。
もちろん、サリー、ミンク、シェリア、高志の4人だ。
「で、魔法は結局使えなかったんだよね。」
と、過去の悲劇を語る。
「ふーん。魔力がないのって珍しいねぇ。私はそんな人初めてみたよ。」
「私は一人知ってるがな。」
と、シェリアが答える。
「さすが、シェリちゃ、長生きしてるだけの「ミンちゃん?」」
ミンクの台詞は笑顔シェリアによって遮られる。
ただし、目は笑っていなかったが。
「まぁ、かなり昔の話だがな。」
と、普通の顔に戻って話を続ける。
「へー。やっぱり魔力のない人って珍しいんですね。」
「んむ。まぁ、別に問題はないだろう。魔法が使えないわけじゃないし。」
「そうですよねぇ・・・って! ええ!? 魔法って魔力が無くても使えるんですか!?」
と、高志は慌てて問いただす。
「そりゃあ、黒魔法は無理だけどね。あれは体内の魔力を使って魔法を発現させるものだから。だけど、精霊魔法や、神聖魔法なら、魔力がなくても使える。」
あっけらからんと、シェリアは説明する。
「な、な、なんだってー!」
(・・・そういや、サリーの以前の説明で黒魔法は魔力を使うって言ってたけど、それ以外は特に言ってなかったな。ゲームじゃ、魔法使う=魔力必須みたいなイメージがあったから盲点だった。)
「精霊魔法は、精霊と契約出来ればいい。ただし、精霊にも種類や相性がある。どんな精霊と契約できるかはやってみないとわからない。それと神聖魔法は、神への信仰心が元になるから、神を信仰している力が元になる・・・と、言われている。」
「な、なるほど。じゃあ、魔力がなかったって人も魔法は使えたんですね?」
「もちろん。それどころか魔法に関してはかなりの才能があったと言ってもいい。4種の上位精霊と契約して戦場を駆け巡って圧倒していたこともある。」
「よくわからないけど、凄そうですね。」
(・・・ひょっとすると、オレと同じく地球から飛ばされてきた人間で、オレにも同じ才能があるかもしれないな。となると、精霊魔法が使えるかも?)
「んむ。そのまま国を造るくらいだからな。それは凄いだろう。」
「へー、国までって、えええっ!?」
驚いてばかりの高志だった。
「そして、この国を作ったのは、その魔力がないと言われていた人間だ。」
「ええっ!!?」
この発言には、サリーやミンクも驚いた。
「なんだ、知らなかったのか。当時は結構有名な話だったのに。」
「そんなの知るわけないのだ!そんな何百年も前の話知ってるのはエルフくらいなのだ!」
ミンクの反論ももっともだった。
(・・・何百年前の話しを、当時はって・・・、さすがファンタジーの王道エルフ、寿命も半端じゃないのか。見た目は10代って言っても通用しそうなのに、一体何歳なんだ。)
「ふふふっ。まぁ、そうかもしれない。凄いだろう。」
シェリアは誇らしげだ。
「じゃあ、ついでにもう一つ教えてあげよう。この王が使えたのは精霊魔法だけじゃなかった。特殊魔法が使えたんだ。精霊魔法も確かに凄かったが、本当に凄かったのはこの特殊魔法だったという声もあった。」
「へー、どんな魔法だったんですか?」
「実はそれが何なのかはわからない。」
「へ?だって、凄かったんですよね?」
「本当にわからないんだ。私も何度かみたけど、肉体強化の魔法のようなこともあったし、物に干渉するようなこともあった。結局何の魔法かは明かされなかった。ただ、その魔法に関する秘密は今も王の墓にあると言われている。」
「なるほど、秘密の魔法ですか。魔力がなくても使える特殊魔法があるのか。何か希望が沸いてきたなぁ。」
高志は昨日までと違い、魔法に対するコンプレックスを幾分解消できたようだった。
「いや、それはちょっと違う。」
「え?」
「その特殊魔法には魔力が必要だ。」
「えええええっ!じゃあ、ダメかぁ・・・。」
再び失意のどん底に落とされる。
「多分、君にも同じ魔力があるのかもしれない。」
「え? いや、魔力ないって言われてるし、実際、黒魔法は使えなかったんですけど・・・。」
「ふむ。しかし、君からは魔力を感じるがな。我々エルフは魔法に関しては人間よりも扱いに長けていると思う。その理由の一つに魔力を感じることが出来るというのがある。人間は魔力の有無を魔法によって確認しているようだが、それでは一部の魔力しか検知できていないのだと思う。」
「つまり、魔力には種類があるってことですか?」
「恐らく、な。そして君からは魔力を感じるが、魔力検知の魔法で魔力は検知されず、実際に黒魔法も使えない。つまり黒魔法で必要な種類の魔力はないが、特殊魔法で必要な魔力を持っているということだろう。これは、この国を作ったニンゲンと同じだ。」
「おおっ、つまり特殊魔法用の魔力はあるってことか、なんか希望がみえてきた!」
再び希望が満ちてきた。
「それにしても凄いですね。この国を作った国王様をみたことがあるなんて。」
サリーにしてみれば、自分の国の建国の王など、御伽噺の英雄的な存在だ。そんな人物に会ったことがあるというのは、とても羨ましいことなのだろう。
「さすが、シェリちゃ、伊達に長生きしてないの「ミンちゃん?」」
またミンクの台詞は中断された。シェリアの笑顔によって。
「まぁ、君がニンゲンと同じかどうかは分からないがな。まぁ試してみる価値はあるだろう。」
「ニンゲン?一応、人間ですけど・・・。」
(・・・あれ?オレって人間に見られてない?)
「む?この国を作った王の名前だ。確かそんなような名前だったはずだが。」
「あれ?そうでしたっけ?さすがに人間でニンゲンって名前は無いような気もしますが・・・。」
サリーもどうやら知らないらしい。
「言われてみれば違うような気もする。まぁ、何百年も前の話だ。忘れててもしかたあるまい。それより、折角だから、精霊魔法を覚えてみる?手伝えると思うよ。」
「おおおお!是非お願いします。」
(・・・ついに魔法が!)
「ここじゃ上位精霊は無理だから、まずは下位精霊からだな。上位精霊と契約するには、その精霊が住みやすいところにいかないといけない。例えば、水なら川や海。土なら洞窟の中とかね。」
「なるほど。じゃあ、上位精霊を使う魔法は場所が限られちゃうんですか?」
「いや、一度契約に成功すれば、呼び出すことが出来るから、その心配はないよ。まぁ、確かに水中で火の精霊を呼び出しても、効果は落ちるかもしれないけど。」
「でもまぁ、使えないわけじゃないならいっか。」
「それじゃあ、早速、下位精霊から始めてみようか。」
「はいっ!」
これが高志が魔法を手に入れる切欠となるのだった。
まぁ、バレバレかな(ノ∀`)