第十四話
すみません、2話分は無理でした(ノ∀`)
元英雄?のアレス爺さんの新居で一晩過ごした高志達。
「さて、じゃあ、王都に戻るとしますか。」
朝食を終え、高志が呟く。
「おお、そうじゃ、王都に戻るときについでに頼まれてくれんか?」
「はい、なんでしょう?」
「実はな、元の家がまだ売れていないのじゃよ。買い手が見つかるまでは、あの家で暮らしてそれなりに草むしりや、掃除やらをしておいて欲しいのじゃ。報酬は家の家賃と引き換えでどうじゃ?」
「それはつまり、家を綺麗にしておけばタダで家を貸して貰えるってことですか?」
「まぁ、そういうことじゃ。どうじゃ?悪くない話じゃろ?」
「そうですね、悪くないどころか、凄くありがたい話だと思います。サリーはどう思う?」
(・・・宿代が何気に痛いから凄く助かるなぁ。でも結構大きい家だから掃除も大変そうだ。)
「私は、同感です。それに私、掃除とか家事は得意ですから。」
と言って、やる気の笑顔を見せるサリー。
「じゃあ、決まりかな?」
「そうかそうか。家の鍵を渡しておこう。それとあの家で暮らすなら水や炎の魔法が使えると便利なはずじゃ。早速教えてやろう。」
「魔法ってそんなに簡単に使えるようになるんですか?」
(・・・おお、ついに魔法が使えるときがくるのか!Lvも一応上がってるし、魔力も上がってるはずだ。簡単な魔法くらいなら使えるだろう、と信じたい。)
「もちろん、魔法によるが、簡単な魔法なら簡単に使えるようになるぞい。」
「あ、じゃあ、私も教えて頂いてよろしいでしょうか?」
サリーも興味津々だった。
「んむ、では早速特訓といくかのぉ。」
~~~2時間後~~~
「ダメだ・・・。」
そこには、打ちひしがれる高志の姿があった。
「おぬし、ほんとに魔力がないんじゃな。」
「確かに以前にも魔力がないとは言われましたが、Lvが上がっても魔力はあがらないもんなんでしょうか?」
「そんなことはないはずじゃが・・・。いや、まて、確かに極稀にそういった者がおるという噂は聞いたことがあるな。」
「そ、そうですか・・・。」
「まぁ、仕方あるまい。サリーの譲ちゃんが使えるようになったんじゃ、まぁ大丈夫じゃろう。」
高志と違い、サリーはアッサリと魔法を覚えてしまった。
サリーの職業は魔法使いだったというのもあるが、簡単に使えるようになったので、アレスも驚いたほどだ。
サリーが新たに覚えた魔法は二つ。
火の玉を出す魔法と、水を生み出す魔法だった。
「魔法は私が担当しますから、タカシは力仕事をお願いしますね。」
と、サリーが慰め?を掛けてくれる。
「ありがとう。魔法はサリーに任せるよ。」
(・・・うぅ、なんとも情けない。この世界の住人じゃないと魔法は使えないってことなのかなぁ。)
「じゃあ、そろそろ、王都に戻りましょうか。帰りは歩きですから時間が掛かると思いますし。」
「そう・・・だね。」
(・・・もう、帰りはテレポートか、飛んで戻りたい気分だ。)
「家が売れたら知らせを出そう。それまではよろしく頼んだぞい。あと忘れずに今回の依頼達成の証をもっていくがよい。」
アレス爺さんは、そう言って依頼用のカードにサインをして渡してくれる。
「それじゃあ、そろそろ私達は王都の方に戻ります。」
「んむ、気をつけて帰るんじゃぞい。おお、そうだ、タカシよ。ついでに頼まれて欲しいことがもう一つある。恐らく、若い貴族がワシを尋ねてくるはずじゃ。すまんが力になってやってくれ。」
「よく分かりませんが、力になる範囲でなら。」
「なぁに、お主ならきっと大丈夫じゃ、頼んだぞい。」
こうして、高志とサリーは王都に戻ることになった。
行きの馬車と違い、帰りは二人で徒歩の為かなり時間が掛かることになる。
その為、まだ昼前だったが二人は出発していた。
(・・・一人なら簡単に帰れるんだけどなぁ。いや、もうサリーには色々とバラしておくべきかなぁ。その方が今後も色々やりやすくなるような気はするけど。これから同じ家で暮らすわけだし・・・って、何気に凄い状況じゃないか!まてまて普通、いい年した男が、美少女と二人で一つ屋根の下で暮らすなんてありえない・・・いやまぁ、イニシオ村の村長の家でもそうだったけど、今度は二人っきりだ。まずい、なんか緊張してきた・・・。)
魔法が使えなかったことに打ちひしがれてテンションが下がっていたが、既にそんなことは頭から消えて、妙なテンションになってしまった。
心なしか、道中の二人の会話も少なくなっていた。
そんなとき、前方から騒がしい音が聞こえてきた。
「何だろう?何かあったのかな?」
良く目を凝らしてみたところ、前方に馬車があり、そこに人が群がっているように見えた。
「もしかしたら、あの馬車、襲われているのかも。」
サリーが呟く。
「だとしたら大変だ、急いで応援にいこう。」
「でも、大丈夫でしょうか?Lvの低い私達二人だけで。」
サリーは不安そうだ。
「そ、それもそうだね・・・。オレはともかく、サリーは危険か。仕方ない、サリーはこの辺りに隠れてて、ちょっと一人でいってくる。」
そう言うと、高志は駆け出した。
「あっ」
と、サリーは何か言いかけたが、途中でやめた。
本当は危ないと思ったが、元々ワイバーンを倒せるくらいの実力があるのだから、ちょっとやそっとでは危険はないだろうと思い直した。
むしろ自分がいると足手まといになりかねないと思い、大人しく近くの草むらに身を隠した。
高志が急いで襲撃現場に駆けつけると、馬車を守ろうと戦っている人と、それを襲撃しているゴブリン達がいた。
状況は僅かにゴブリンが有利のようだった。
襲撃しているゴブリンはざっと20匹ほどで、既に5匹ほど地に伏している。
対する馬車の護衛は3人だったが、いずれも満身創痍だ。
高志が駆け寄ると、ゴブリンの一体が気づいて、応戦しようと構える。
(・・・いよいよ、新装備のお披露目だ!)
と高志は張り切っていた。
高志は走りざま剣を上段に構えて、そのまま一気に力任せにゴブリンに叩きつけようとする。
動きばバレバレだったので、ゴブリンもそれを受け止めようと剣を構える。
高志はそのまま剣を叩き付けたが、初撃は当然の如くゴブリンに防がれた。
防がれたが、すぐに今度は横に剣を振るう。
ゴブリンは初撃の攻撃を受けて手が痺れているのか、反応が遅れた為、今度はまともに喰らってしまう。
ゴブリンが絶叫する。
その隙に止めを刺すべく、今度は首を目掛けて剣を振るう。
その時もう一匹のゴブリンが高志の横から攻撃してきたが、高志はそれに構わず剣を振るう。
結果、ゴブリン一匹の首を撥ねることに成功した。
横からの攻撃は当然そのまま受けることになるが、エネルギーフィールドで防ぐ。
(・・・くっ、なんか新装備意味がない気がするが、まぁ、仕方ないか。)
その後もなんとか2匹目を倒すと、不利を悟ったのか、残っていたゴブリン達は一斉に逃げ出した。結果、勝利を収めることに成功した。
「ありがとう、助かったよ。代表して礼を言う。」
馬車を守っていた一人が声を掛けてきた。
「いえ、無事でなによりです。」
(・・・いやー、変身しないで人助けしたのは初めてだなぁ。とは言え、ゴブリン相手にギリギリ・・・ってかエネルギーフィールドが無かったら逆にやられてたな。)
なんとか勝てたはしたものの、胸中は複雑だった。
「私達はこれから商品を仕入れにいくのだが、良ければ乗せていってあげたいが、駆けつけてくれた方から察するに王都に向かってるのかな?」
「はい、そうです。王都に帰る途中でした。」
「そうか、我々とは逆だな。まぁ、王都に滞在することも多いから、何かあれば遠慮なくいってくれ。」
そう言って王都での主な滞在先を教えて貰った。
ちょうどその頃サリーがやってきた。
「なんとか大丈夫だったみたいですね。」
走ってきたのか、少し息切れをしていながら話すサリー。
「うん、相手はゴブリンだったし、こちらの方々が奮戦していたから、割とすぐに勝負がついたよ。」
「いやいや、君が来てくれなかったら危ないところだったよ。我々もそれなりに場数を踏んでいるつもりだったが、あの数のゴブリンを相手に3人ではキツいところだった。前はゴブリンなんて出ても5匹程度だったんだが、最近はあいつらも大人数でいることが多いようだ。」
「まぁ、昔ほど騎士達の巡回も頻繁じゃなくなったしな。あいつらも繁殖しやすくなってるんだろう。ほんとに暮らしにくくなっていく一方だ。」
もう一人の男が嘆く。
「なるほど。やっぱり国王が変わってからは色々問題がでてるみたいですね。」
(・・・今の王様は無能なのかな。)
「まぁ、あんまり大っぴらに言えることじゃないがな。シテン様の時代が懐かしいぜ。」
と言って、男達は苦笑する。
その後、男達とは別れて、高志とサリーは再度、王都へ向かって歩きだした。
結局、王都についたのは、その日の夕方遅くになった。
時間も遅かった為、ギルドへの報告は明日にすることにした。
借りた鍵を使って、家の中に入る。
既に日も落ちかけており、暗かった為、サリーはたいまつに火を付けていく。
「さて、とりあえず、引越しのときに大体の家の構造はわかったから、部屋割りを決めようか。」
「そうですね。」
こうして、二人はそれぞれの部屋を決めて、夕飯の買出しにいくことになり、二人で今後の事を話しながら買い物をした。
基本的には、料理以外の家事はサリーが担当してくれることになり、代わりに高志は庭の手入れを担当することになった。
驚いたことに、この家には風呂がついていた。
ただし、使うには魔法が必須となっている構造だった。
水道があり、湯船もあるのだが、水を温めるのに火の魔法を使う必要があったからだ。
また、水道といっても、家の2階に水を溜めておくタンクがあり、それが1階の水道に繋がっているだけだった。タンクには魔法で水を入れておく必要があったので、それもサリーが入れておいてくれた。ただ、サリーのLvは低い為、すぐに魔力がきれてしまい、風呂を沸かすだけの魔力がなくなってしまった。
その為、高志は湯沸かし器を召喚して、風呂場に設置した。
ホースを2本、湯船につけて片方で水を汲み上げ、もう片方にお湯を出す仕組みのタイプだ。基本的には野外で使用するタイプだったのだが、問題ないだろう。
(・・・これで、サリーには水を生み出す魔法だけ使って貰えば今後もなんとかなるだろう。あとは充電する必要があるのがネックだなぁ。折角だから、明日辺りに庭にソーラーパネルでも設置して、自動的に充電するようにするか。確かあったはずだ・・・。)
「随分大きい魔具ですね。なにに使うんですか?」
「単に水をお湯に変えてくれるだけです。あ、一応、お湯を綺麗にする機能もついてるのかな?」
「へぇ~。本当に色々なものを持ってるんですね。」
とサリーは感心された。
その後、夕飯を終えて、高志はサリーよりも先に風呂にいくべきか、後に風呂にいくべきか葛藤したりすることもあったが、結局先に入って、寝た。
高志の職業カードのLvは4に上がっていた。
こうして新居生活?1日目が終わった。