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ファンタジーに未来兵器を  作者: インゼリ
13/34

第十二話

2話分・・・とまではいかなかったですがいつもよりは割と長めです(ノ∀`)


貴族は揉め事のあと、自分の屋敷に戻っていた。

「ええい!ワケのわからん輩に、いいようにやられるとは!この無駄飯食(むだめしぐ)らいが!」


貴族は自分の陶器のカップを召使いに向けて投げていた。

要は召使いに八つ当たりをしていた。



「このままでは、腹の虫が収まらんわっ! おい!、『掃除』にいくぞ、準備しろ!」

召使いの一人にそう言い放つと、不気味な笑みを浮かべた。



一方その頃、高志は変身を解除した後、買い物の続きをしていた。

(・・・さて、腹ごしらえと、食後の軽い運動も済ませたことだし、本格的に散策するかな。まずは武器防具の店だろう! さすがに普段からプラズマブレードとかを使う訳にはいかないしな。そんな目立つもん使ったら一発でヒーローの正体がバレちゃうだろうし。そう、カモフラージュの意味もあるし、武器防具を揃えよう!)

やはりゲーム好きにとっては、リアルな武器防具は是非とも手に入れたい一品だった。


そんなこんなで街を歩いていると、それらしき店が見つかった。

そこは主に武器を売っているようで、様々な武器が置かれていた。


(・・・おー、なかなか良い感じだ。いかにもファンタジーの武器屋って感じだなぁ。)


さっそく武器を物色してみると、一番最初に感じたことは、『予想以上に重い』だった。

全く鍛えられていない体では、これらの武器を使いこなすのはかなりの困難が予想された。

(・・・まずい、これじゃあ、ほとんど使えない。うーん、今の筋力じゃ、弓とかレイピアとかしか使えないんじゃなかろうか。ああ、社会人になってから全然鍛えてなかったからなぁ。筋力トレーニングでもするか、英雄のLvが上がってくれば多少は使えるようになるかなぁ。)

そんな中、一振りの剣を見つけた。

その剣は、見た目は普通の剣だが、持ってみると予想以上に軽かった。


「お、兄さん、剣を買うのは初めてかい?」

威勢のいい店員さんが声を掛けてきた。


「え、ええ。でもどれも重くて・・・。」


「それなら、その武器はお勧めだよ。軽量化の魔法が掛かっているから大した筋力がなくても扱えるんだ。まぁ、その分、威力は若干落ちるけどね。」


「なるほど。ちなみにお値段はどれくらいでしょうか?」

その剣には値札が貼られていなかった。


「へへっ、実はその剣、オレっちが練習で作った剣なんだ。だから、あんまり質の方は期待しないでくれ。すぐにポッキリ折れるかもしれねー。」

といってバツが悪そうにする。

「まぁ、その分安くしとくよ。銀貨2枚でどうだい?」


辺りを見渡して他の剣の相場をさりげなくチェックした。

(・・・普通の剣が大体銀貨3枚くらいか。安くて扱い易いなら買いか?威力が必要になるようなこともそうそうないだろう。ちゃんとしたのは、もうちょっと筋力がついてから買えばいっか。)


「じゃあ、コレ下さい。」


「まいどあり!オマケで(さや)もつけておくよ。」


「ありがとうございます。」


「その代わり、またウチに来た時に使い心地を聞かせてくれ。武器を作るときの参考にしたいんだ。」


「わかりました。」

(・・・もしかして、こうやってリピーターを獲得する商法なのかな。だとしたら、まんまと引っ掛かっちゃったな。まぁ考えすぎか。)


剣を鞘にしまうと、鞘自体はベルトにつけるタイプのものだったので、そのままベルトにつけることにした。

(・・・剣は腰にさげるか、背中に背負うかだけど、片手剣なら腰だよね。)


こうして武器を買った後、防具を探そうと思ったが、その店はほぼ武器専門で、防具については、別の店を探すことにした。

といっても、探すというほどではなく、すぐ近くに防具専門の店があった。

武器と防具の店はお互いに近いほうが何かと都合がよいのだろう。

早速、その防具屋に入って物色を始めた。


(・・・うーん、やっぱり金属製の防具は厳しいのかなぁ。軽量化の魔法が掛かってるやつを探してみるか。無ければ皮製の鎧にするしか・・・いや!やっぱり鎧は金属じゃないと!!)

と、心の中で葛藤していると、店員のお姉さんに声を掛けられた。


「お客さん、魔術師かなにか?」


「え?いや、違いますけど。」


「あら失礼。見たこと無い服装だったし、やけに軽そうな服だったからてっきり魔術師関連の人かと思ったわ。」


「い、一応、剣も持ってるんですけど・・・。」

と、腰の剣を指して戦士っぽさを主張する。

(・・・あれ?そもそも英雄の加護ってどんな補正があるんだ?接近戦職向けじゃなかったりしたら剣にしたのは失敗だったかな。まぁ、今更言っても仕方ないか。英雄についての情報もあとで集めておこう。)


「あら、魔法剣士の人は軽装で剣を持ってたりするわよ。」


「あー、そういえばそんな職もありましたね。」

(・・・ゲームでは知ってるけど、この世界にもあるのか。)


「で、お客さんは、どんな防具をお探し?」


「えーっと、出来るだけ軽い防具があればいいんですけど、軽量化された金属製のブレストアーマーとかないでしょうか?」


「ないこともないけど、それなら皮製品の方がいいんじゃない?特殊な魔獣の皮で作ったものなら、防御力もそれなりにあるし、魔法耐性があったりするわよ。」


「そこはその、何と言いいますか、男の美学ってやつでして・・・。」


「ふぅ~ん、よく分からないけど、それならいくつか見繕ってあげるわ。他に何かご希望はあるかしら?」


「カ、カッコイイやつを・・・」

と、ちょっと照れながら答える高志であった。


「まかせといて!」

と、ウィンクをしてから鎧を選びにいってくれた。


(・・・さて、鎧は見繕ってもらうとして、あとはどうするかな。兜は蒸れそうだからやめておこう、うん。あとは、盾と下か。そもそもさっきの剣が片手で本当に扱えるかわからんし、盾はまだいいや。となると残るのは下か。靴は地球のがいいだろうな。ズボンはさすがに軍服のだと目立つし、鎧と合わないだろうから、こっちで適当に買おう。)


そんな感じで今後の装備計画を立てていると、さきほどのお姉さんが戻ってきた。


「これなんてどうかしら?」

そういいながら持ってきていたのは、白銀のブレストアーマーだった。細部には請った意匠が凝らしており、女性向けの鎧といっても問題ないレベルだ。また、簡単に持ってきているところから、相当軽いことが想像出来る。


「なかなか良さそうですね。ちょっと試着してみてもいいですか?」


「いいわよー。でも、その服は脱いだほうがいいかもしれないわねー。」

軍服は割としっかりした作りになっており、そのまま上に金属製の鎧を着るとかなり動きづらそうだった。そもそも、白銀のブレストアーマーとは見た目的にも合わないだろう。


「あー、確かに・・・。ちなみに鎧の下に着るような服とかってありますか?」


「うーん、ないこともないけど、鎧の下に着る専用のだから、鎧脱いだときはイマイチかっこよくないわよ?」


「まぁ、今の服よりはマシだと思うんで・・・。」


「じゃあ、よさそうなのを持ってくるわね。」


と、まぁ、そんなやりとりがあった後、なんとか鎧一式を購入した。

予想以上の出費だったが、なんとか一式揃えることが出来た。

上半身は、白銀のブレストアーマーに、厚手の青いシャツ、白銀の篭手。

下は、黒いズボンと、腰の両脇に金属の板がついてるタイプで、足は足首から膝の辺りまで覆うタイプの簡単なものだった。金属部分は全て白銀で統一されている。

なかなか様になっていて、違和感があるとしたら靴くらいだろう。



着ていた軍服はバッグにしまって、今は新装備一式を装着している。

一通り装備の買い物も終わったので、高志は一息ついていた。

ちょっとした飲食店で、椅子に座りながら果汁100%の何かのジュースを飲んでいた。

(・・・なんとか軽いタイプのもので一式揃えられたけど、お陰でお金が底をつきそうだ。地球のものを何か適当に売るか・・・いや、それは最後の手段だ。ここにもあるものなら大丈夫だろうけど、それじゃ高く売れないし、無いものを売ったらそれは色々と問題が出てきそうだ。それに将来のことを考えると、なんとかここで稼げるようにしないと。)


この時、考え事をしていて、バッグを地面に置きっぱなしだった。

突如男が近寄ってきて、バッグを持って走り去っていった。


「あっ!」


高志が気づいたときには、既に男はバッグを持って走っていた。

慌てて追いかけようとするが、まだ買ったばかりの装備に慣れておらず、走りにくかったこともあり、男に追いつくどころか離されていった。

それでもなんとか食いついていたが、結局男を見失ったしまった。


(・・・くっそー、やられた。あのバッグ結構便利なのに。やっぱ平和ボケしてるのかなぁ。)


辺りを見渡すと、今までの街中とはうってかわって、荒廃した街のような場所だった。

いわゆるスラム街というやつだろうか。

辺りには壊れかけた建物や、物乞いだろうか、ボーっと座っているいる者達がいる。

普通の感覚を持つものであれば、すぐに回れ右して戻りたいと思う場所だ。


(・・・まいったなぁ、ここでさっきの男を捜すのは大変そうだな。まぁ、バッグの中身は軍服くらいしかないし、諦めるしかないのかなぁ。)


なかなか諦め切れずに、しばらく辺りを探していると騒音が聞こえてきた。

かなり大きな音で、建物が壊れるような音だった。



騒音がする方に向かってみると、逆に騒音がする方から逃げるように走ってくる人が何人かいた。

(あー、もしかして近寄っちゃいけない系か?)

と、思いつつも平和ボケした高志は近寄っていった。

近づくにつれて騒音とともに、悲鳴や罵声、獣の咆哮のようなものが聞こえてくる。


「クズども!掃除の時間だ!おとなしくでてこい!」


(・・・ん?どっかで聞いたことがあるような声だな)


なんとか現場がみえる場所まで行くと、どうやら魔物が暴れているようだった。

魔物は全身が黒く、大型の犬のような姿で、四肢をついた状態でも高さは3m以上あった。

大きな特徴は、頭が3つあるということと、たまに口から火を吹いているところだろうか。3つの首の真ん中には綺麗な首輪が嵌められていた。

(うはー、さっきの馬鹿貴族と、なんだありゃ、ケルベロスか? よーし、早速新装備でどこまでやれるか、試してやる!なんて相手じゃないよな、これは・・・。エネルギーフィールドがなかったら瞬殺されるな。仕方ない、変身してやるしかないか)


高志は、急いで物陰に隠れた。

そして新装備はフリー空間へしまい、『変身』する。

その後、ケルベロスの上空へテレポートする。


ちょうどその頃、ケルベロスはスラム街の建物を壊すのに飽きて、逃げ遅れた住人達を胃袋に収めるべく標的を逃げ遅れた人間達に移そうとしていた。

逃げ遅れた者の多くは子供達で、ケルベロスが暴れて建物を壊したせいで逃げるに逃げられない状態だった、中には倒壊した建物に挟まれて動けなくなった人達もいる。

そんな中、例の貴族は高笑いをしながら乗ってきたであろう馬車からその光景を眺めていた。

「はっはっはっ、貴様らのような不要な存在は、さっさと浄化されるがよい!」


しかし、そのとき貴族の目に、見たくないものが映ってしまった。

そう、ケルベロスの上空に黒く輝く鎧姿の人間が。


「なっ、さっきの生意気な奴か!エカテリーナ、そいつを殺せっ!」

恐らく、エカテリーナというのがケルベロスの名前なのだろう。


高志は、上空から勢いをつけて落下しながらケルベロスの背中に蹴りを入れた。

ドスっと鈍い音が当たりに響く、ケルベロスは怒りの咆哮を放つ。

地上に降りた高志はプラズマブレードを抜き放ち構えた。

ケルベロスの方もやられっぱなしではなく、3つの口から炎を吐いた。

かなりの熱量で辺りの崩れた建物に引火する。


「はっはっはっ、生意気な奴だったが、これではひとたまりもあるまい。貴族様に逆らうからこうなるのだ。」

貴族は既に勝利を確信し、上機嫌だった。

だが、次の瞬間にその笑顔が凍りついた。


バシュッという音がしたかと思うと、ケルベロスの首が2つ落ちた。

高志がケルベロスの首の真下に移動し、プラズマブレードでケルベロスの首の2つを焼ききったのだ。

ケルベロスは苦悶の声を上げつつ後ずさりする。


(・・・む、浅かった、一つ残ったか。)


「な、なんだと・・・ケルベロスの炎に耐えられる人間なんぞ、いるわけが・・・。おのれ!エカテリーナ!何をしている、さっさとそいつを食ってしまえ!」

逆上した貴族は馬車から降りてケルベロスの近くに向かった。

するとケルベロスの視線が貴族を捕らえた。


「な、なんだ、ワシではない、そっちの黒いやつをやるのだ!命令だ!」

貴族は高志を指差して叫ぶが、ケルベロスの視線は貴族に向いたままだった。


「なぜ言うことをきか・・・なっ、しまった、制御の首輪が」

貴族がそういった瞬間、ケルベロスが貴族に向かって走りだし、そのまま貴族に食いついた。

そして何度か咀嚼(そしゃく)した後、そのまま飲み込んだ。


(・・・あの真ん中の首についてたので制御してたのか。切り落としちゃったから制御できなくなって、飼い主に噛み付いたってことか。なんか気に入らないおっさんだったけど、死んだとなるとちょっと可哀想だな。)


ケルベロスは再び高志に視線を戻す。

2つの首を落とされバランスが悪くなっていたが、それでも機敏に動けるようで、今度は高志に向かって走りだす。


(・・・長引かせても可哀想だ、もう終わらせてやろう)


高志は飛び上がり、ケルベロスの首の上からプラズマブレードを振りかぶる。

そして最後の首が落ちた。

ケルベロスの体も全ての頭を失い、ゆっくりと倒れた。


逃げ遅れた人達も、とりあえずの危機からは解放され安堵していたが、あたりにはまだ炎が残っており、まだまだ安全とは言い切れない状態だった。

倒壊した建物の隙間からは助けを求める声が聞こえる。


高志は消火用のホースを召喚した。

ホースの元はフリー空間につながっており、そこに溜めてあるものが自動的に送られてくる為、貯水池などがなくても消火活動が可能だった。

早速、上空から水をばら撒き、消火を行う。

その後、下敷きになった人達を救うべく瓦礫の撤去を行う。

変身スーツのおかげで通常の数倍の力を出せる為、瓦礫の撤去は割とスムーズにできた。

もともと、大した建物がなく、小さい建物や、軽い素材が多かったのも幸いした。


作業が一通り終わると、人々から感謝された。

「ありがとうございます。なんとお礼を言っていいやら。」

「にーちゃん、ありがとー!」

「すっげー、かっけー!」

大半は子供達からだったが。


が、そんな中でもケルベロスの頭部から牙を抜き取っている者もいた。

おそらく、ケルベロスの牙は売れるのだろう。

(・・・なんとなく獲物を横取りされた感じだ。けどまぁ、ここの人達の暮らしぶりをみると、それは俺が倒した獲物なんだから返せ、とは言えないよな・・・。ここの人達にも何か仕事があればいいんだろうけど、流石に仕事をあげることはできないしなぁ。ヒーローって言っても無力なもんだなぁ。)


この時、高志の職業カードは英雄Lv3となっていた。



今回はちょっと後味悪かったですかね(´・ω・`)


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