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二駅分
二人の会話はまだぎこちないままです。
言葉よりも、間の方を書きたかった回になります。
またホームで会った。
待ち合わせているわけではないのに、同じ時間の電車に乗ることが多い。
「今日寒いね」
彼女が言う。
「……うん」
続かない。
言葉はそれで終わる。
電車が来るまで、二人とも黙ったまま立っていた。
「昨日の、書けた?」
昨日、少しだけ小説の話をしたことを思い出す。
「書いてない」
「そっか」
それ以上は何も言わない。
沈黙が嫌ではないけど、落ち着くわけでもない。
電車が来て、乗る。
今日は隣に座った。
ただ席がそこしか空いてなかっただけだ。
肘が少し触れそうな距離。
触れないように少しだけ姿勢をずらす。
「……どこまで書くの」
「最後まで」
「最後って決めてるの?」
聞き返される。
「いや、たぶん」
「ふーん」
窓の外を見たまま、彼女は言った。
「終わらせたいんだね」
その言葉の意味を考える前に、電車が揺れた。
二駅分だけ隣だった。
降りるとき、どちらからともなく少し離れた。
「じゃ」
「うん」
それだけで別れる。
振り返るほどでもない関係だった。
たぶん一番普通の日です。
だからこそ後で思い出すのは、こういう日の方なんだと思います。




