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半分
隣にいることに慣れると、沈黙の意味が少しだけ変わります。
今日は、言葉より先に伝わったものの話です。
夕方、いつものベンチに座る。
彼女は小さな袋を持っていた。
しばらくして、それを開ける。
甘い匂いが少しだけ広がった。
「……食べる?」
差し出されたのは、個包装の菓子。
特別なものではない、どこにでもある味だった。
断る理由もなく受け取る。
礼を言うと、彼女は小さく頷いた。
それ以上の会話は続かない。
ただ、同じものを食べて、同じ時間を過ごす。
電車が通り過ぎる音の中で、袋の音だけが残る。
沈黙は相変わらず長いままなのに、昨日より遠く感じなかった。
食べ終わる頃、彼女は空になった袋を丁寧に畳む。
それを見て、なぜか同じことをしていた。
特に意味はないはずなのに、
少しだけ、同じ側にいる気がした。
読んでくれてありがとうございます。
分けたものは小さくても、残る感覚は大きい。
そんな時間を書いた章でした。




